明けない
私は聞かなかった。
彼が私に何センチなのと聞いても。
154センチ、そう私が答えるだけ。
私は何も聞かなかった。
彼が私に彼氏いないのと聞いても。
いないよ、そう私が答えるだけ。
身長も恋人の有無も誕生日も血液型も何も知りたくなかった。
何も聞かず何も言わず、もちろん何も言われず彼に抱かれた。
二人とも何も言わず自然とホテルへ行った。
お酒を飲み、話しをし、シャワーを浴びた。
どちらから誘うわけでもなく、ただただ無言で2人の間に見えない合意があるかのように。
終わってから初めて彼に告げた。セフレでは嫌なのだと。
彼は何も言わなかった。
けれど、その答えを私は知っていた。
確かに私は恋をしていた。
何も知りたくないほどに。
いや、きっと知っていたから。
私は臆病者です。