第五話 カタリナの誓約
クラウンワールズの寿命について
基本的にヒューマン以外の各種族は普通に千年くらい生きます
それゆえに結構な歳の差婚は当たり前で本編の10歳差はかわいいものです
しかし、例外としてSランク相当の評価にステータスがなると自分で死ぬか殺される以外に死ななくなります
ちなみにこの時に魂の格が上昇してどれだけ生きても常に新鮮な人生と不具合は外部からの干渉以外に起きないようになります
エリクサーを生成してからおよそ一年、あと二年でクソすぎる先生の運命の日がやってくる
まあこれは孤児院全体に言えることだが
もうすぐゲーム上で経験したとても大きなイベントが迫っている
今日から後一週間後に起こる魔物の大侵攻である
このイベントにより先生は辺境伯にも目を付けられるせいでその血を取り込もうとある程度の息子の無茶なアプローチを認めてしまいあの惨劇の日が訪れてしまう
現在、モンスターの活発化は既に街全体の問題として取り上げられていて日々緊張が高まっている
その日に向けて先生と模擬戦を行おうとしている
「ハル頑張って!!」
「ハル君、勝ったらお姉さんがご褒美あげるよ」
「ハル怪我しないようにね」
「わかった」
先生とおよそ50メートル程の距離を開けて向かい合っている
アリスとシルの二人の声援を受けながらしばし戦いの前の緊張を解きほぐす
レオルよ王女の警備緩すぎ
さてまずは現在の先生とオレのステータスを参照してみる
Name ハル=レッドフィールド
Age 6
Class 子供
Award 運命の子 (この称号を持つ者は幸福か不幸の両極端に偏る)
HP 46700/46700
MP 32000/32000
TP 73260/73260
STR 5860
DEF 3800
INT 5200
MID 3980
DEX 6900
SPD 8400
LUK 4
GEN UNKNOWN
Skill
無限直感 (自分の危険を感知したり、問題の答えを導いたり無限の可能性がある)
時空次元魔法Ⅳ
限りなき憧憬 (尊敬する人のための行動にプラス補正)
土魔法Ⅰ
水魔法Ⅰ
アサシンストライクⅡ
ディスターブⅢ
約一年の訓練でここまでの成果が出るのはやはり異常の裏ボス補正のおかげか
大体15歳までは普通ステータスが非常に伸びづらくほとんどの人族は多少得意な能力でも2000つまりH評価をこえないで平均値がだいたい1000~1400の間のH評価に収まる
それで戦闘を専門にする兵の最終的なステータスで一番多いのが6200~6500のC評価と言われていてその時の年齢はだいたい50歳となる
計算すれば年間平均約140程ステータスは伸びる分けである
まあ、ステータスは値が大きくなるにつれて伸び率が悪くなりこの平均値がどこまで正しいかは疑問と言えば疑問だが
それにしてもこの数値の、評価が既にDの異常さは理解していただけるだろう
運は相変わらずひっくいなぁ~
ちなみにSランクになる奴の15歳くらいの平均評価はFとGの間と言われているが意外とスキル次第でステータスの差は覆せる
それを踏まえて先生のステータスを見てみると
Name アリエス=シーワォード
Age 16
Class 太陽幻想魔道士
Award 大破壊の申し子 (この称号を持つ者は一回の攻撃で都市を落とせる手段を保持する)
皆のお母さん (この称号を持つ者は子供の為の行動にプラス補正)
シーワォード王国元第二王女
HP 81700/81700
MP 93000/93000
TP 4000/4000
STR 3860
DEF 4800
INT 9500
MID 8800
DEX 8900
SPD 7400
LUK 10
GEN 9999999
Skill
太陽魔法Ⅶ
幻想魔法Ⅶ
生活魔法Ⅷ
風魔法Ⅳ
魔力掌握Ⅴ (ランク×5%の確率で魔法を支配し操作できる)
気配察知Ⅲ
インパクトⅤ
デュアルマジックⅣ (ランク÷2分の魔法を同時使用可能)
・・・勝てる気せんなこれ
可愛がられるのかな相撲部屋的な意味で
このステータスで運にはドン引きしたのは記憶に新しい
近接系の能力でも負けてるのがある時点で完全に胸を借りる感じですね
散々ステータスの値は一種の目安ですだのスタッフがあとで美味しくいただきましただの言ってたけどここまでの差になるとゴリ押しでも負けるしスキルレベルにⅦがある時点でこっちも一個くらいそれがないとオワタなことになるからな
というわけで先生の評価は問題なくA評価と言えます
先生の言葉に寄ればやっぱり15歳になってから急激に上昇を開始したそう
スキルの補足としてⅠ、Ⅱが初級、Ⅲ、Ⅳが中級、Ⅴが上級、Ⅵが聖級、Ⅶが王級、Ⅷが古代級、Ⅸが伝説級、Ⅹが神話級となっていて上級まではいけんこともないけど後は断絶した差があるなので世界の共通認識としてⅥ以上のスキルを持つものとは基本的には敵対しないことが当たり前
ステータスについてはこれくらいにして模擬戦を開始する
「先生行きますよ」
「ええ、いつでもいいわ」
先生はそれだけ言うと深く腰を落として両手に持った木製の杖を構える
見た感じの先生のスタイルは近接は幻想魔法と太陽魔法の小技を合わせたカウンター狙いのそれまでに太陽魔法で遠距離で焼き尽くす性格に似合わずかなり過激な火力厨的なものを感じる
オレのスタイルはまだ体ができたいないので間合いが狭く速度に秀でることもあり零距離での近接戦闘がメインになってくるその為に取り回しに非常に優れた短剣を主武器に据えている
今回の戦闘において大きな勝負所は自分の間合いに入るまでと入った後の二種類に分かれる
循環させている気をバーストさせて一気に肥大化させて両足に込める
先生はあまり気の扱い、タオポイントから推測するに上手くないので何をしたのか少し考えるような空気をだすがそれを待つはずもなく地面を全力で蹴飛ばす
直線的に先生に向かっていく中冷静に先生は棒を前に突き出すように半身の体勢になる
速いな
ステータス的に値はこちらが上だがやはり動きなれているのか動作に淀みがない
二歩目を踏み出そうとした時に魔法が向かってくる
━━━━太陽魔法 ソルフィラメント
直線的な太陽の光線が進路上に立ちはだかる
事前の勘に従い地面を這うように地を舐める
それに対応するように光線が数を増やすがどうやら曲げることはできないようで避けるのは勘に従えば問題はない
体のぎりぎりを光線が通り過ぎた後、その光線にタイミングをずらすように光線が来る
避けるのは既に不可能
オレは迷わずにスキルを発動させる
━━━━短剣スキル アサシンストライクⅡ
このスキルの効果は当たり所によって即死判定を与えるという暗殺者の技で他にも魔法に当てるとその魔法を霧散させる効果がある
魔法を真正面から見据えて一気に振り切る
先生は魔法を消せるのを知っていたのかあまり驚いてはいない
これ一応とっておきなのに・・・・
プレイヤーなら常識だけど先生が知っているのは多分狙われたんですね
オレのわずかな驚きを無視するように流れは続く
あまり被害の出したくない先生は範囲魔法を使うことができないのでひたすら直線的な方法で攻撃を仕掛けてくる
やはり器用の補正の差は大きく移動先を完全に予測した偏差射撃じみた行いは体のスレスレを通るたびに嫌な汗が自然と流れ落ちる
冷静に丁寧に
手元が狂わないように避けれないものだけをスキルで消去していく
中々のスリルの中既に距離は半分をきった
この時点でだいぶ精神的に来ているオレと対照的に先生は笑みを加えて魔力をバーストさせる
その瞬間に嫌な予感がしたので何もない目の前の空間に集中する
━━━━短剣スキル アサシンストライクⅡ
━━━━水魔法 ワォーターショット
うぇ~、気持ち悪い
慣れないスキルと魔法の同時発動に吐き気を催す
幻想魔法を使ったのか振りぬいた先で魔法が確かに四散するのを感じる
ついでに自分の放った魔法の行方を確認すると
・・・・・・・握りつぶすて
圧倒的なINTとMIDの差で水魔法と土魔法は目くらまし以上の意味をなさないようだ
幻想魔法を加えた厄介な攻撃もぎりぎり処理能力内で対処している光景に先生はまあまあ合格と言うように余裕で頷いている
相手の行動より早く行動しないとその時点で負けというゲーム時代の経験がなかったら何回やられているのかわからない事実に苦笑いが漏れる
しかもわざわざ魔法の開始時に大きめのバーストをしてくれてるし
一回目の勝負どころはオレの勝ちのようだ
先生は魔法の行使を中断して近接戦闘の構えを取る
さてここからが本当に自分の実力が試される局面である
ここに来るまでに設置に少し時間のかかるマーカーは先生の近くに設置済みである
見逃されたんだろうね
先生のスキルなら多分消せたんだろうけどハンデなんだろう
できるだけ身を低くしながら先生の間合いに侵入する
垂直上向きに振るわれる棒に対してそこに向かって足を向ける
軽い跳躍と共に棒の上に乗りその体勢のまま左拳を振るう
━━━━太陽魔法 ミニソル
左フックの向かう先に球体を配置されてこのままだと手が無くなるので大げさに左拳を回して体の重心を真後ろに向ける
━━━━次元時空魔法 ショートワープ
設置したマーカーに慣性を殺すのを意識しながら転移する
先生の真後ろに来た瞬間短剣を振るう
「ぐぇ!?」
「甘い」
振り向くことすらされずに頭上にいたオレの鳩尾に容赦なく左手を叩きこむ
てかこれオレが遊びでやってた発頸!?
見ただけで盗むとはやっぱり才能のせいか
呑気に宙を浮いていると袋たたき確定なのでその腕を根性で掴んで引っ張り自分の体を前に宙返りして先生の肩に向かって修正する
この動きは予想外でワープすると思っていたのか体が硬直した隙を逃さずに方に足を叩きつけると同時に気をバーストさせる
一応発頸もどきを仕込んでおいたのでダメージが貫通したのか先生が少し痛そうな顔をした
まじでごめんなさい
叩かれたことより先生の表情に莫大なダメージをうけつつ戦闘は続行する
幻想魔法を追加されたせいでなかなか攻撃と防御の継ぎ目がわからず攻めあぐねる展開になる
オレがスピードと勘の未来予測で攻撃をするのにたいして先生は練度の非常に高い魔法と近接戦闘の技術がオレのように一切のラグが無いので誘導されているんじゃないかと疑心暗鬼に駆られる
そんな中でも非常に楽しい
気を抜いただけですぐに負けてしまうような極限の戦い
必殺の一撃が魂をもぎ取る
せめて一太刀はくらわす!!
気を神経が切れる寸前まで循環させて最高速をだしスキルにより切られたマーカーを設置しながらさらにスキルを発動させてもう一つ魔法を行使する
━━━━次元時空魔法 タイムコンダクター
オレの動きは20拍早く先生の動きは20拍遅く
頭が破裂しそうだぜ!!
おそらくオレの適正な力の出力は16拍くらいが妥当で限界を超えているしそれに加えての同時発動まさに全身全霊の闘争
あまり長くは続かない
決死の覚悟と必勝の願いを込めて吠えたける
「アァァァァァァァ!!!!!」
「言い覚悟です!」
オレのこの戦いにおいて最速の踏込に対して一切躊躇することなく先生もさらに加速する
狙うは手元に足元の末端部分
「フン!!」
先生の左肩が前に動くのを察知し得意の出だしを潰すように体ごと先生の左半身に当てる
単純なスピードの差と魔法のアシストによって先生の行動を破壊
ここだ!!
万感の思いを込めて攻撃を開始する
右足で地面を蹴りそのエネルギーを余すことなく腰に伝えてさらに回転を加えて腕に到達
右の短剣を神速で振りぬき先生の太腿に向かう
手元を掬い上げるように棒が焦って接近するが左手を壊れるのも構わずに叩きつけて時間を稼ぐ
短剣が当たる瞬間先生の声が聞こえた
「うん、よく頑張りました」
その声を最後にオレの意識は闇に飲み込まれた
流石にあの短時間で膝蹴りは反則っす・・・・・・
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なかなかカッコを付けて結局一撃しか入れられないという恥ずかしい結果になったあの日から2週間程
さてやってまいりました現代知識チートのお時間ですね
自身はそんなに知識が無くともゲームの時のようにネット検索が可能なのでそれを利用しよう
イェエーーーイ!!
というわけで先生は今回も期待通りモンスターをちぎっては投げちぎっては投げの大活躍により先生の人気はカンスト
見た目は可愛いし物腰もやわらかく一緒にいると癒される
もっと早くきづけよボンクラ共
まあその話は今回はいいとしてチートの方向性を考えましょうか
目標としては少なくとも孤児院を立て替えてかつ個人的に建物を買えるくらいのお金を手に入れること
孤児院は二年後の襲撃の際に全壊してしまうので立て直すのにお金が必要でありまたお金で傭兵や冒険者に救援を頼むことができるかも知れないので先生やアリスちゃんなどの孤児院の人の為にもいっちょ稼ぎますか
今回の協力者としてはシルが住んでいるアルル・ルリーナ商会本店さんです
相変わらずルが多いなぁ~何か安心する
修行の狩りで手に入れたお金を使って試行錯誤していきたいと思っている
タダでいいって言われたけど何かシルの目が怖かったのでやめといた
さて、まずは何を売りに出そうか?
この街には海産物を本格的に扱っている店はここだけでその珍しい海産物の料理は精々焼くぐらいとあまり進歩していないので中々良い着眼点だと思っている
今回は三種類を作ろう
最初にお好み焼き
これはソースが既に存在していたんで踏み切った
個人的にはソースのないお好み焼きとかもはや焼きだは!!
オレの偏見はこの際どうでもいいのでつづいてはかまぼこですね
まあ保存食って考えた時に聞けばかまぼこ無いらしいんで売れるんじゃないかなっと思っている
最後の一品は直接パスタは使わないけど海鮮食品にあいそうなパスタとかどうでしょう
何かパンとかは白かったと食品分野は発達しているのにかまぼこの理由と同様売れそうなのでこれも作成してみる
とりま麺類が食いたい
そんな打算と理想がかみ合って今回の企画ができた
「どうハル君、私のお店はすごいでしょ」
「うん、この前来た時より材料の種類が増えてるね」
病気が治ってからのシルは今までの鬱憤を晴らすように精力的に商人として活動している
王女なのにね・・・
その類いまれなる商才によってさらに売り上げを伸ばして今ではアルーシャの街で一番の売り上げを誇っている
「何が必要なの?」
「えっと、お好み焼きには小麦粉に卵、キャベツ後個人的に豚肉に海老に山芋かな」
「うん、最近卵も扱い始めたから大丈夫、他は?」
「かまぼこは白身魚に塩、みりん、片栗粉んで卵白かな」
「大丈夫用意出来るよ」
「最後にプリン用に牛乳に砂糖に卵、バニラエッセンスに隠し味っていう感じでメープルシロップにホイップクリームってとこかな」
「プリン!!でもうーん、メープルシロップは扱っていないかな」
「別になくてもいいよ」
シルはすぐにレオルや他の近衛騎士と共に材料を集めてくる
「坊主、お前また何か面白いもん造るのか?」
「うるせぇ不良騎士、誰が坊主や」
「ハハッ、まあそういうなよプリン並のを期待しているぞ」
「ああ」
最近、仲良くなった商人出身の騎士でシグル=アキハという先生についた悪い虫だ
何だよ、たまたま今日は暇なんでじゃねえよ何で先生に毎日会いに来てんだよ
中々面白い奴でチャラけた雰囲気を出しているがこの中でも戦闘力はDと上の方である
とりあえずパスタは既に作れたので近々売り出すそうだ
うっれるかっな♪
夕食には時間があるのでプリンの材料を作って後はかまぼこ作って個人でお好み焼きでも振る舞うかみたいな計画をしている
厨房に入るとシルがエプロンをして待ち構えていた
エプロン似合いすぎだろ
「じゃあ、プリン作るか」
「はい、今から楽しみです」
「まあ、やることは少ないんだけど」
牛乳と砂糖を適当に混ぜて後卵をシルに割ってもらい投入してかき混ぜるついでにバニラエッセンスを少量とホイップクリームを入れてかき混ぜる
「後は蒸すだけだな」
「へぇ~、意外と簡単なんですね、これならお店の商品になるかも」
「ああ、売ってもいいぞ」
「やったーこれでまた業績があがります!!」
無邪気に喜んでるけど理由が金ってどうなんだろう
「んじゃ、次はかまぼこかな」
「待ってました」
「結構大変だけどやるか」
「はい!!」
まずは魚の骨をちまちま除去するこの工程が不完全だと後が辛いからな
んで水魔法で水分を飛ばして風魔法をシルに出してもらい密閉した容器の中でペースト状にする
すごい精密操作だね
そこに塩、みりん、片栗粉、卵白を投入して弾力が出るまもう一回風魔法を使う
「これを一時間くらい寝かせるんだ」
「へぇーじゃあ時間もあるのでお話でもしましょうか」
底にくっつかないようにクッキンシートもどきのモンスターの素材を敷いて蒸せば完成ですという後の工程はレオル達に任せてシルに手を引かれるまま厨房を後にする
「この雑貨屋さんにしましょう」
「お~」
手を引かれて向かった先は貴族とか富裕層向けの大きめの店だった
店内に入って見ると特にドレスコード等はないようでラフな服装の客が多い
「とりあえず右側から見ていく感じでいいですか?」
「うん」
ここに来たことは無いのでとりあえず言うとおりにしよう
「マフラーですか」
「最近寒いからちょうどいいかもね」
「じゃあ、ハル君は何色が好きですか?」
「クロとか赤とか濃い色の方が好きかな」
「そうんなんですか、私は薄い青色とかがいいですね」
「確かに薄い色もきれいだよね」
「ふふっ、そう言ってくれるとうれしいですね」
「そっか」
手に取ったマフラーを棚に戻して他の商品を見る
「陶器のコップとかどうです?」
「う~ん、こういうの見ると最初に割れそうって思っちゃう当たり中々ハングリー精神にあふれてるね」
「あ~、確かにふとした拍子に割れることを考えると」
「買っても自分じゃなくて来客用かな」
「そうですね、人様の家に行ったときに綺麗な物が出てくると嬉しいですからね」
「確かに、じゃあ次に行こう」
「はい」
ゆっくり店内全体を見渡すとコップにフォークにナイフの食器類やマフラーやコートといった衣服類など特に扱っている商品に規則性が無い
・・・あのお面とかかっこいいな
オレが一人頭の中でお面をかぶってかっこいい自己紹介をしているとシルがある商品をじっと見ていた
視線の先を探ってみると宝石が付いていない魔術的な加工を施されたシンプルな銀の指輪があった
ふ~ん指輪か・・・
「シル、そう言えば今日街に面白い見世物屋さんがあるんだって言ってみない?」
「え!?は、はいいいですね行きましょう」
シルはそうとう指輪に集中していたのか少し驚いた声と若干残念そうな顔をしている
それに気づかないふりをしてシルの手を引いて店内を後にする
店の近くの空き地に目的の見世物屋さんはあった
「魔法で劇ですか?」
「帝国にはこういうのなかった?」
「そうですね、帝国は魔法はほとんど戦いの為にしか使われていなかったはずですね」
「らしいね」
確かに帝国はゲーム時代からバリバリの軍国主義で武器の生産とかが盛んで闘技場とかが有名だったな
軍人は全員ごりマッチョだったなぁ~
お金を払って見世物小屋に入ると奥の方の席に腰かけて開園を待つ
10分くらいすると演劇が始まった
「すごい綺麗!!」
「どれくらい練習したんだろうね」
炎で小さなビッグホーンラビットに始まり氷でスノーウルフまた土魔法で大きなドラゴンなどすごく手の込んだ劇である
ストーリーは適当だけど
多分ドラゴンはウサギを見たら仲良くならず食べると思うけど
「ごめん、少しトイレ」
「わかりました」
シルは劇に夢中なのか生返事が返ってきた
トイレから返って来た後最後に何故か突然怒ったドラゴンにウサギが食べられて客は唖然としていた
だと思ったよ・・・・
「え~と、あれに誘ってごめんね」
「いえ、一緒に見れて楽しかったです」
ちょうど時間も夕方になって店の前に戻ってきて完成した食べ物を受け取りついでにお好みの材料ももらった
できた商品の販売は後日相談ということになった
「そっかそれならよかった」
「はい、今日は楽しかったです」
「オレも楽しかった、じゃあまた明日」
「はい、またキャ!?」
「アッハッハじゃあまたね!!」
急に抱き着いてびっくりしたのかシルが驚いている
「もう、ハル君は」
ひとりハル君の居なくなった方を見ると胸がギュッと締め付けられる
「はぁ~寂しいです」
一人そう呟いて寒くなったので店内に入ろうとする
「えっ?」
ポケットの中に紙と何か固いものがある
掌に載せてみると小さな紙と木でできな小さな箱があった
手紙には短くこう書いてあった
いつもありがとうシルのおかげですごく助かってるよ
この指輪はそのお礼です
大事にしてくれると嬉しいな
ハルより
ゆっくりと小さな箱を開けるとあの銀の指輪は入っていた
「ふふっ、もちろん大事にするに決まってるじゃないですか」
ゆっくり指輪をはめるとさっきまでの寒さが嘘のように心が温かく満たされていくものがある
その日からシルの指には銀が輝き続けた
***********************************************
「ハル、もう焼けたんじゃないかしら?」
「う~ん、もうちょっとかな」
シルと別れてから夕食の後、先生に料理をしたいと言ったらじゃあ一緒に作ろうということになって厨房は掃除した後なのでということで二人で裏庭に来ている
先生と二人っきりですね!!
「ハルはよくこの料理を知ってはね」
「本で読んだんだ」
「なるほど、最近よく本読んでるからねぇ~」
珍しい料理に興味心身の先生の普段は見せない幼い姿に思わず笑みがこぼれてしまう
これ見たら悪い虫が増えそうだなぁ~
「もう大丈夫だと思います」
「えっと、ヘラだっけこれで食べるのよね」
「そうです」
鉄板は鍛冶屋に注文してそのついでにヘラ等も作ってもらった
「うん、しっかり味が付いていておいしいはね」
「そうですか、ソースの味が濃すぎるかもと思ってましたがちょうどよかったみたいですね」
「うん、それに久しぶりに海老なんて食べたは」
「あ~ここらへん海がないですしね」
夕食後なので小さめのお好み焼きを二人で半分こする
結構うまかったな
手早く鉄板を片付けて歯を生活魔法で綺麗にししばし二人で火を眺める
「先生聞いてもいいですか」
「どうしたの?」
「最近何かありました」
「あ~・・・・」
最近先生は暗い顔をすることが多い
原因は完全に豚野郎に結婚云々で嫌がらせやこのままでは孤児院に被害が出るのではと考えている
この後辺境伯がこのまま機嫌を損ねて街に攻撃でもされたらたまらんと諌めるはずだがそれももう少し先の話である
「ん~、大丈夫確かに問題はあるけどその内解決すると思うし」
「嘘です、正直に話してください」
「う~ん、でもねぇ~」
「ムッ、先生はあの時護ってくれるのは嬉しいって言ったのは嘘だったんですか」
「そういうわけじゃないけど・・・・・」
じっと先生の言葉を待っていると先生はぽつぽつと話始めた
辺境伯に目を付けられて未婚なら結婚しろと迫られていること
その息子に嫌がらせを受けていること
このままでは孤児院にも迷惑がかかること
「なるほどそういうことですか」
「うん」
「わかりましたじゃあその悩みを解決しましょう!!」
「え?そんなに簡単に解決できるの」
「はい、完璧です」
先生は半信半疑ながら嬉しそうな顔をしてこちらに早く早くとせかしてくる
まあ多分先生もオレの事は嫌ってないよね
嫌われてたらアウトだけど
「じゃあ、少し目を瞑ってください」
「ん?わっかたわ」
「いいというまで目を開けちゃだめですよ」
「うん」
そう言って先生は目を閉じた
それを確認して収納魔法から指輪とマフラーを取り出す
先生の左手を取るとビクッと身を震わせるが目は閉じたままである
「え!?ちょっと待ってこれって!?」
先生にマフラーを巻いたまでは特に反応はなかったが左手を取ったあたりであれって顔をして指輪を人差し指にハメると驚いて目をあける
これはどっちの反応なんだろう
「先生まだいいって言ってない」
「あ、ごめんねってそうじゃなくて!!」
「何ですか?」
「・・・・・えっと、ハル、これって意味が分かってやってるのよね?」
真剣な表情を作って先生の問いに肯定の意味を示す
この国の建国者現在のシーワォード王国のその前のカタリナ諸部族連合での伝統で戦争に行く意中の男女がマフラーを編みそれをもらった相手はもしその女性の思いにこたえるなら戦争で生き残り指輪を贈るというものがあり現在では婚約より緩いが親密な人どうしで婚約の前段階として男性から女性に、これは貴族が子供の頃によくやるらしくマフラーを巻いてその左手の人差し指に指輪を贈り女性がその気持ちに答えるのなら右の頬に口づけをするというものがあり、これをやった者同士以外で他の物が声をかけるのは恥知らずとされてこのことをカタリナの誓約と言う
ちなみに通常この慣習は夜会などで結構頻繁に行われていて私は30人とこれをしましたとか以外にざらで一対一はかなり珍しい部類に入るそうで一番お気にいりの指輪や日替わりにとかにするそうです
「え~と」
「先生はオレじゃ嫌ですか」
「あのその・・・・・」
恥ずかしそうに俯く先生に胸が苦しくなる
「先生はオレの命を助けてくれました」
「・・・・」
「先生が傍にいてくれだけで楽しいんです」
先生は静かにオレの言葉を聞いてくれる
「先生はいつも優しさとか喜びとかいろんなものをオレにくれたんですだからそんな先生が好きなんです!!だから先生オレとカタリナの儀式をしてください!!」
先生は思いもよらなかったのかう~とよくわからないうめき声が聞こえる
「ハル、えっと」
「はい」
「ハルはいつも頑張ってて私のために一生懸命してくれてるけど助けたのに恩なんて感じなくてもいいのよ」
「確かに最初は恩を感じていましたが今はそんなことより先生と一緒にいたい理由は笑顔がかわいいとか一緒に居ると楽しいとか優しいとか色々あるんです!!」
「そ、そう」
また、恥ずかしそうに先生は顔を伏せて数秒考えた後真っ直ぐこちらを見た
「私はハルの事が好きだけど多分それは子供として好きっていうのと変わらないと思うの」
「はい」
「だから今ハルの言ってる好きなのかどうかはわからないは」
「はい」
「だからハルが15歳になった時にもう一度気持ちを聞かせてもらえる?」
「はい、じゃあ!!」
「うん」
先生の唇が右の頬に触れる
その時のオレは本当に人生で一番幸せだったと思う
2年後の惨劇はもうすぐそこまでやってきているのを感じながらオレはただ先生と二人寄り添い合って笑い合っていた
何かハル君は幸せそうですが
次回ついに鬱イベントが始動します
辛すぎる運命にどう立ち向かうのか
その時ハルは何を思う
次回 第六話 絶対に離さない 前編
こうご期待!!
かなりハルが悲惨なことに・・・