第二話 アリエス先生はズルい
人々が寝静まる深夜オレは未だ眠れずにいる
叫んだあと結局先生は疲れているのか現在もベットに突っ伏している
そんな中で一人鬱すぎるフラグを折るために思考を巡らす
対策のためにまずは先生の火炙りかまされるまでの過程を思い出す
オレをこのシーワォード王国の辺境であり、辺境伯の城がある城塞都市アルーシャの貧民街の孤児院ガーデンに連れて来た三年後、オレが8歳の時、先生が18歳の時に事件は起こる
まず初めに辺境伯は割と真面なクズでその2人息子は両方酷いクズだ
辺境伯はただ女癖が悪いだけで今回王都に居て二男はこの事件に関係ないが息子どもは気に入れば平民なら無理やり手籠めにする
もうお分かりいただけただろうがやらかすのは辺境伯の長男
飢饉が起こり食べる物がない孤児院のために魔物を狩って売りに出て行った大通りで目を付けられて断ったら孤児院の子供を全員浚われて実際にはすでに殺されているのだが解放を条件に奴隷にされて唯一の生き残りのチート裏ボスの前であれこれされて最後に生きてと言いながら平民の分際で逆らったというわけのわからん罪で火炙りにされると
ちなみにこの後先生が王族だと遺品から気づいた時には既に遅く辺境伯一家が殲滅されそのどさくさに紛れてかろうじてハルは逃げ延びた
なんというか流石Ⅰのテーマは悪に対する勝利中々クズい悪役である
まあ対策は簡単で大通りに行かなきゃいいという簡単なもの
では不可能なのだなぜなら長男のデブは辺境伯が飢饉なので税金を下げて女が買えなくなったのでアルーシャの街で奴隷狩りまがいのことをし始めるので確実に先生は遅かれ早かれ見つかって確実に捕まる
いい案が出ずに悶々としているとふと先生のプロフィールを思い出す
アリエス=シーワォード現在15歳のシーワォード王国第三王女で種族は先祖がえりのエンジェルでハル程ではないが中々なイカレスペックを誇っている
元々妾の子でありながら先祖がえりによって手に入れた凄まじ過ぎる才能が第一王子や上の第一、第二王女に疎まれ何度も暗殺されそうになった中王はその才能を惜しいと思いどこかの貴族に降家さしてこの国で買い殺しにでもしようと思っていた
補足としてぶっちゃけ先生のことを愛していたのは綺麗だからと好きな人を殺されて王の嫁になった側室の名誉貴族での母親と一人の近衛騎士の男のみ
この近衛騎士も微妙にクズい
確かに愛してはいるがそれは先生の才能的なものと容姿のみで実質味方は母のみというハードモードな子供時代を送っていた
そんな中ひねくれることもなく非常に優しく思いやりのある子供に育ったのはやはり母親の偉大さのおかげである少しばかりやんちゃであるが
魔法の強さは既に王国最強で得意属性の太陽魔法のコロナは見渡す限りを焦土に変える
身長は160センチで小柄ながらも非常に女性らしい体系をしていて男どもが群がりまくっている
さてでは何故王族が貧民街で孤児院をやっているかと言えば速い話死んだことになっているのだ
母も死んで王宮に居る意味がなくなったので暗殺者が来た時にもう一つの得意属性の幻想魔法で死体を偽造して逃げだしたのだ
これは未確定な情報であるが先生には好きな人が居たかも知れない
これはゲーム内で微妙にそれっぽい痕跡を確認しているだけで確証はないが何かだいぶ腹が立つ
まあとりあえず当面の目標としては最悪の場合力ずくで問題解決できるぐらいの力をつけること今はそのために毛布を先生にかけてゆっくりと眠りに落ちた
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「んーーーーうん!!」
ふむ流石将来裏ボスになる才能を持つだけはある治療されたとはいえあの怪我を既に8割方完治とは努力という言葉が馬鹿らしくなる
とりあえずお腹が空いたのでゲームで散々やったように食堂に向かう
服は先生が着替えさせてくれたのか昨日の血まみれのぼろ布ではなくなっている
ゆっくり一歩一歩調子を確かめるようにドアに近づきドアをゆっくり開けて廊下に出る
よっこいせっと
ここは先生の私室で院長としてなのか孤児たちが生活している建物の奥の方に位置している
右に行けば庭に出て左に行けば食堂に付くので今回は素直に左に向かう
もうすぐ食堂かなっと思ったその時
「あっ・・・・・」
「・・・・・・・」
先生がたまたまこちらに歩いてきていて驚いてしまいかすれた声がでて怯えていると勘違いしたのか悲しそうに微笑まれてしまった
しまった!!困らしたいわけではないのにこんな顔させてしまった
残念ながらこんな時にどうすればいいのかわからずに服の袖を無意識に掴み下を向いてしまいますます怯えているのに信憑性を持たせてしまった
急に足音が近づいてきてビクッと肩が跳ねる
すると先生は優しく抱き上げて左胸に持ち上げてしばらくよしよしと優しく髪を撫でた後こういった
「おはよう、私の名前はアリエスこの孤児院の院長をしているはよかたらお名前教えてもらってもいい?」
「え、えっとハル」
「そういい名前ね」
すごくいい香りがして非常に心地よくこのまま寝てしまいそうになるがゆっくりと胸から離されて酷い喪失感に襲われながら先生が顔をのぞきこんでくる
「お腹空いたでしょ?ご飯にしましょう」
「うん!!」
抱き上げられたまま食堂のドアを開けると40人程の視線が降り注ぎ若干居心地が悪いので体をゆすると大丈夫というように頭を撫でられたので落ち着くしかない
そのまま流れるように水が汲まれた桶で手を洗わされ二人分の食器を魔法で浮かしながら他の子供や大人とは離れた席に先生と二人で付いた
ばれないように微妙に周りを観察してみれば先生以外の大人が大きな男性一人と双子なのかよく似た女性が二人でちょうど半分づつの男女が40人の子供たちが席についている
年齢層とすれば一番多そうなのが12、3歳ぐらいの中学生くらいの子供で同年代らしき子はいなくて一番近くて小学校三年生くらいである
観察がひと段落すると特に合図はないのか先生が席に着くと各自で朝食を取り始めた
メニューは中々豪勢でスクランブルエッグにサラダ後パンという世界観中世のはずなのに現代的である
この辺はゲーム時代とあんまり大差がない
膝の上に乗せられてご飯を食べさせられるのは中々恥ずかしいがそれよりものっそい敵意を含んだ40人分の視線が突き刺さってくるのがつらい
つつがなく朝食を終えると口元を優しく拭かれてゆっくりとまた抱き上げられて大人の人たちの方に向かう
男性の名前はガルクさんでゲーム中では中々強く孤児院襲撃の際もかなりの兵を無力化したが結局数の暴力に負けた大きな体の優しい無口なおっさんで昔先生と冒険者をしていた
次に双子の女性はユーリとユーカでガルクさんと同じように冒険者仲間でユーリは弓が得意な斥候職のお調子者でユーカが剣士の姉御という感じ
とりあえず気まずいので先生に抱き着いて顔を隠しておく
事務的な会話を手早く終えて先生に目が覚めたときに居た私室に連れて行かれた
「さて、じゃあハルには色々と説明しなきゃいけないから聞いてね」
「うん」
最近うんしか行ってなくて声帯が退化しないか心配になる
とりあえず先生を護って恩返しをするという目標のために頑張りますか!!
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あれから1週間先生は片時も傍を離れることはなかった
ご飯を食べさしてもらい色んな話をしてもらったり一緒にお昼寝したり
多分トラウマになっていると思って一所懸命にお世話してくれたんだろうな
そんなことになれば他の先生大好きっ子というか子供全員からのヘイトはマッハになってしまう
なんであいつだけ構うんだよ!!
この感情に従った結果が今の状況
先生が街に人から予測ではあるが狩りかなんかの手助けの依頼を受けていなくなってオレが一人になった時を狙ってのこの呼び出し
俗にいう焼きそばパン買ってこいもちろんお前のおごりで嫌なら放課後体育館裏にこいやみたいな感じ
10歳くらいの子供8人に囲まれて人目につかない孤児院の裏にいます
「おい新入りアリエス先生が優しいからって調子にのるなよ!!」
「そうだいちいち先生頼るんじゃねえよ!!」
「そうよあんたにばっかりアリエス先生は構ってられないのよ!!」
「なんとか言えよ!!」
なんつぅ理不尽・・・
確かに構てもらってるけども自分でできると言ってもまだ子供だからと取り合ってくれないしどないせいちゅうねん
とりあえず刺激しないように下を向いて困ってますみたいな雰囲気を出しとけばそのうち・・・
「おいこっち見ろよ!!」
「男のくせになに下向いてんのよ」
なんとかなりませんか、なりませんね
ああ、まずい
後ろの方の無口そうな男の子が拳を握っている
これ完全にターゲットオレだよね?
もういっそのこと先生に構ってもらってフヒヒサーセンみたいなこと言って怒らすか
流石に大声出せば勉強を教えている大人も何事かと見に来るだろうし
んじゃっま一発
「先生にかま「何しているの?」
後ろを振り返れば先生が鬼の形相で立っていた
こぇーーよ!!
ゲーム設定で魔力で威嚇すると精神的に負担が大きいって書いてたのマジだったんだな超苦しいは
周りはガクブル顔面蒼白なのにオレだけ割と平然としているのに先生がわずかに眉をひそめる
とりあえず威圧をといたのか雰囲気が和らぎ事情を聞き始める
「なんでこんな事したの?」
「だって・・・」
「えっと・・・」
皆が口ごもっている中一人の少女が口を開いた
「この子ばっかり構ってずるい!!」
この一言でアリエス先生は目を見開きそうねと言って優しく一人一人誤りながら抱きしめていった
ごめんなさいマダー?
んな子供みたいなこと言わずにとりあえずこの場を離脱して先生の部屋に向かった
まあまあな距離ではあるが徒で詣でけり現代風に言うとテクでレッツゴーみたいな感じ
部屋のドアを開けるとそこには既にアリエス先生が待機していた
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・待ちなさい」
とりあえず無言で目をそらさずにドアを閉めようとすると手を握られた
そのまま定位置の膝の上に乗せられた
先生体温高いなぁ~
そのまま質問される
「ハル、正直に答えてあなたまさか目が赤くなったりしないよね?」
「・・・・・・・・・・・・」
なんでこの推論に至ったのか
まあこの世界の常識と言えば常識
魔力が高い子供、それもアリエス先生クラスの魔力の威嚇に耐えられるような莫大な魔力を持っている人はどんな人ですか?
忌み子に決まっている
1000年前に一度現れてこの世界に破壊の限りを尽くした暴虐の支配者
実際はそれより性質の悪すぎるイレギュラーな力の持ち主ではあるが
才能があるんじゃないかって?
そもそも8歳くらいまでは魔力を人族は持たないのが常識で確認されている例外は忌み子のみ
演技すりゃぁ~よかったかもね
ゲームでは先生がハルを忌み子に近い性質を持っていることを知ることはない
とりあえず首を横にフルフルすると
「こっちを見て」
優しいが断固として逆らうことを許さない意志が見えた
「もう一度聞くは本当はどうなの?」
命を救ってもらった先生に目を真っ直ぐ見られるといたたまれない気持ちになるので目を瞑った
どうだこれで問題ないだろ!!
少しにやけた顔をしてしまったのか先生に優しく頬をつままれる
ひたすら無言に徹し続けていると先生に急に抱きしめられた
「大丈夫、大丈夫」
そう繰り返しながらゆっくり背中を撫でてくれる
ずるいなぁ~もう
まあこの人なら大丈夫かとゆっくりと頷いた