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剣を交えて解るもの

愛紗視点


山賊との戦いの後私は気を失ってしまったらしい、気がつくと朝になっていた。傍で沖田殿がずっと見張りをしてくれていたようで、腕を見ると応急処置の後もある。私はまたこの人の世話になってしまった。朝食まで用意して頂いたのだがさすがに遠慮しようとした最中、私の腹が空腹を訴えた。あれは恥ずかしかった・・・

沖田殿は一流の武人のようだ。一緒に戦った時にも感じたし、話している中でもその考えに確証が持てた。あれは武芸を極めた人の立ち振る舞いだ、同時に私の中で一つの想いが生まれた。この人と戦ってみたい、自分の今の実力を試してみたい。だが恩人にお礼もしてない中で勝負を挑むなんて許されることではない、助けていただいたお礼をするのが先だ。


私は沖田殿を自分の家に招待した。家に着くまでに色々なことを聞かれたがこの方はやはり異国の出らしい、皆が知っているようなことも私に訪ねてくる。本当にどこから来たのだろうか?

やり取りを重ねているうちに家に着いた。少し休んだ後に私のお気に入りの店に招待した。これには沖田殿も気に入って頂けたようだ。しかし私の頭の中には別のことしか浮かんでこない。

この人と戦ってみたい、打ち合ってみたい。食事も終え一段落したところで私は意を決して訪ねてみた。


「沖田殿は今後、急ぎの用はありますか?」

「いや、今まさにこれからどうしようか考えていたところだった」

「それなら折り入ってお願いがあります。私と勝負していただけませんか?」

「勝負?模擬戦ってことか?」

「はい。沖田殿ほどの実力者はそうはいません。恩人に対して失礼だとは思いますが自分の力を試したいのです」


言ってしまった。無礼だと罵られるだろうか?それでも私はこの人と戦ってみたい


「わかった、お受けしよう。オレも関羽殿のような実力者とやりあえるのは楽しみだからな」


引き受けて貰えた!この方はこんなお願いにも文句一つ言わず了承してくれた。でも、もしかしたら心根は私と同じなのかもしれない。私はこの方に強者として認識してもらえたのだろうか?だとしたら嬉しい。

私は自分を抑えつつも彼を裏庭に案内するのであった。




第三者視点


関羽の家の裏庭で二人は向かい合っている。その手には菊一文字と青龍偃月刀。


「お互いこれの方が真の力が出せるだろうな」

「はい。よろしくお願いします」

「ああ、こちらこそよろしく頼む」

「では・・・参ります」


合図とともに関羽が斬りかかる。素早く力強い斬撃、宗一はそれを難なく捌いていく。偃月刀と日本刀ではリーチが違うために宗一はまず自分の間合いに飛び込むタイミングを計る、関羽もそれを承知しているので簡単には近寄らせない。関羽が攻め、それを宗一が捌きつつ反撃に転じるといったやり取りが続く


「流石だな。関雲長の名は伊達ではないな」

「貴方こそ。やはり私の目に狂いはなかったようだ」

「ふふ、・・・それ!」


幾度となく打ち、お互いの刃が何度もぶつかり火花を散らす。しばらく続いた打ち合い。均衡を破ったのは宗一だった。


「よし、久しぶりにやるか」

「なにかまだ隠しているのですか?」

「なあに、本気でやらせてもらうだけさ」

「!?貴方は手を抜いていたと?」

「勘違いしないでくれ。真面目にやっていたよ。ただ関羽殿の強さならこれを受け止められると確信したからな。行くぜ!」

「な・・・!?」


宗一の速さが一段階上がった。元々速さと手数で押す剣がさらに速くなったのだ。

しかし流石関羽と言うべきか、それにギリギリとは言えしっかり付いてきてる。時折反撃も交えながら宗一の斬撃を凌いでいる。


「なら、こいつはどうかな。沖田総司の代名詞。三段突き!」

「なに!?」


三段突き。一回の足音で三回突かれたと感じるほどの速度で突く高速の剣技。沖田総司の使ったとされる技だ。


「終わり、だな」

「ええ。参りました」


関羽の体勢が崩れた隙に宗一の剣が首に当てられていた。




宗一視点


「終わり、だな」

「ええ。参りました」


関羽の首に当てた剣をしまう。しかし関羽か・・・やはり凄まじい強さだった、史実通りの使い手だったな。オレも久しぶりに本気を出した、断らないでよかったと心の底から思ったよ。


「しかし強いですね。私も自分の武には自信が有りましたがまだまだのようです」

「いやあ、関羽殿も強かったよ。久しぶりに楽しいと思えたよ」

「はい、私もです。助けていただいた上にお手合わせまでしていただいてしまって」

「いやあお互い様だよ、こちらこそお礼言わなきゃいけないと思ってたし。これで貸し借りなしってことにしないかな?」

「しかしよろしいのでしょうか?」

「ああ、世話になったし楽しませてもらったし感謝してるよ」

「そうですか、そう言っていただけるとありがたいです。ありがとうございました」


お互い納得できたようだしこれで良かった。しかし少し気になることがある、立合いの中でずっと思っていたことだ。


「ところでこの後時間あるか?」

「・・・?はい。特に予定はありませんが?」

「少し気になったことがあってな。ちょっと話さないか?」

「ええ、構いませんが・・・」


これははっきり聞いておいたほうが彼女の為だろう。余計なお世話かもしれないがオレも同じような事があったからな・・・

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