都へ
真理を連れて帰った後は質問攻めにあった。横でクスクス笑っていたがお前も関係あるんだからな?
月はニコニコしていたが霞なんてニヤニヤしながらずっとおちょくってくるし、詠と玲は機嫌が宜しくないのか言葉に刺があるし、なんかオレだけ損している気分になった
とりあえず真理もここに居る間はオレ達と同じ扱いをしてもらえるらしい。司馬家の人間との会話は詠も楽しみにしている様で政務の合間などによく玲や音々を交えて会話しているのが見受けられた。
オレは華雄や霞に練兵の仕方や軍略の基礎、実際の指揮方法などを教わりつつ、皆との模擬戦を楽しんでいた。華雄や霞には勝ち越しているのだが恋が相手になると決着が付かない事も多い。何度か勝ったこともあるが殆ど力負けを感じさせられている、流石は飛将軍といったところか
恋曰く、オレは本当に強いと思える数少ない人物で模擬戦が楽しいとの事。オレは必死だよ・・・まったくどうなってんだ
ここに来てから一ヶ月が経った。月にはゆっくりして行って下さいと言われているがそろそろ潮時ではないかと思う、十分すぎるほどの恩賞も貰ったし
ここは居心地が良いので忘れそうになるが元々オレ達は旅の途中にこの場所に寄った訳だし、まだ洛陽にすら行ってないからな
「月、そろそろオレ達は此処を出ようかと思う」
「そんな、もう少しゆっくりして行って下さい」
「急になんや宗ちゃん?なんか不満でもあるんか?」
「そんな訳あるか。本当に良くして貰ったと思ってるよ。だからこそそろそろ潮時だと思ってね」
「確かに数週間と言ったけれど・・・」
「本来の目的もこの大陸を回ることだしな。でもこの恩は必ずいつか返す」
「恩を受けたのはこちらですよ。皆さんには本当に感謝しています」
「こちらこそ本当に助かった。ありがとうな」
「なら今日は出発祝いやな!!景気よくやろうや」
「そうですね。では皆さん宴会の用意をお願いします」
最後に宴会まで開いて貰って感謝してもしきれないな。必ずこの恩は返しに来よう、この時代で生きていくのに足りなかったものを沢山貰ったからね。
「じゃあそろそろ行くよ」
出発前に皆が見送りに来てくれた。それぞれと別れの挨拶を済ませオレ達三人はいつでも出れる体制になっている
「皆さん気をつけてくださいね」
「宗ちゃんまた一緒に飲もうな~」
「アンタ達には助けられたわ。また会いましょう」
「宗一・・・またね」
「次会うときは負けんぞ!」
「音々も次は立派な軍師になっているのですぞ」
「世話になったね、また会おう」
「皆さん、本当にありがとうございました」
「じゃあ行くか。本当にありがとう、また会おうな」
名残惜しいがいつまでも此処にいるわけにはいかない。彼女達にもオレ達にもやるべき事があるのだから
西涼を出て再び東へ、オレ達は洛陽を目指すことになった。今の政治は腐敗しており都もひどい有様と聞いているが実際はどうなのだろう、それに幾つかしっかりとした治世者のいる都市の話も聞いているのでそこも回ってみようかと思う。真理はともかく玲も都を見ておきたいとのことだった。
この時代は鐙が無いので、霞に協力してもらって三人分作ったがやっぱり乗り心地が違う。これで長期移動も馬の疲労にさえ気をつけていれば楽になったのだが、元々いい馬を貰っているのでこっちが心配になるぐらいのスタミナを見せつけている。きちんと休みを取っているがとても元気そうでまだまだ余裕です、ってオーラを感じる。・・・西涼の名馬は化物か!
おかげで行きの倍以上の早さで洛陽に到着。一先ず馬は近隣の森の中で待機させることに。・・・こいつら放し飼いにしてもちゃんと戻ってくるのがすごいよ・・・
「ここが洛陽・・・か」
「中心地は賑わっていますが少し外れると貧困層の地区がありますね」
「まあこれが現状だね。仕方ないとは言え嘆かわしいよ」
やはりここでも生活は良くないようだ。賊の数は他に比べて少ないが生活水準も都としては低い。一通り回ってみたものの大差はなかった。
「とりあえず今日は休もう。宿屋を探すか」
「そうですね、今後の事はそこで決めましょう」
「それが良さそうだね」
宿屋を探し、比較的安全そうで表通りに近いところを選んだ。少々割高だが致し方ない
この時三人部屋か二人部屋か軽い論争が起きたのだが結局二部屋借りてオレが一人部屋に泊まる事にした。
「さて、明日の事を考えるか」
「先ずは情報収集ですね」
「私は書店なども回ってみたいけどね。ただ単独行動は避けたいな」
「ああ、動くときは三人で。オレ一人ならともかく知らない土地で一人で動き回るのは極力避けよう」
「では明日は一日散策に使いましょう」
「それがいいだろう」
「しかし今まで治安がいい場所にいたから余計に目立つな」
月の所にいた時は何もなかったが、それが何れ程凄い事か今になってわかった。今日一日で何回スリに狙われた事か・・・
子供だけでなく大人も平気で狙ってくる。何回か店でも定価の倍以上の値段で物を売りつけられそうになったこともある。あまり長居はしたくないな・・・
翌日に街を回った時も同じ印象だった。この場所には余り魅力を感じない、長居はしたくないというのが共通の意見だった。
「政治家の事もいい話は聞きませんでした。それに帝も今は体調が良くないとの事です」
「なるほど、取り巻きが好き勝手にやっている訳か。まあそんなところだろう」
「この後は後継争いがあるんだろ・・・無いとは思うが巻き込まれたらたまったもんじゃないな」
「流石に無いとは思いますが・・・」
「その様子ではここには長居はしたくないようだね」
「ああ、まだ二日目とは言えオレはもういいかな」
「私もある程度現状を把握出来ましたし此処に残ってやることはないです」
「ふむ、皆同じ答えのようだね」
「よし、明日の朝此処を出よう」
「行き先は決まっている様だけど・・・次は陳留かな?」
「ああ、どんな場所か興味あってな」
「確か今は曹操殿が収めているはずです、優秀な方であると聞いていますが」
曹操。乱世の奸雄と言われた三国志の英雄の一人。この時代だと劉備と孫堅、そして曹操は既にいるはずなのだ。
それに興味を抱いたオレは曹操という人物を見てみたいと思ったのだ。史実とこの時代の董卓はまるで別人であった様に曹操も見てみないと分からない
「明日の朝、陳留に向かうとしよう」
どんな人物なのか楽しみだな




