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いざ乱世へ

「ん・・・ここは?」


目が覚めたオレは辺りを見回したがそこは一面の荒野だった。どこなんだここは?それにオレは稽古の後眠気に襲われてその場で寝てしまったはずだが

誰かに連れ去られたのか?しかしそんなことをした割には荒野に放置するなどと目的も動機もわからないし、まずここがどこなのかすら把握できない。とりあえず自分の状態や持ち物を確認するか。

ポケットには財布も携帯もなし、まあ当然だな。服装は袴だ、これは道場での稽古の時に着ていたものでその時のまま。従って主な持ち物はなし。


「あれ・・・なんでこれがここにあるんだ?」


なにかないかと見回した時唯一見つかったもの、それがこの刀だった。

伝説の名刀菊一文字。沖田総司が使用していたとされる名刀であり菊の紋を打った細身の刀。実は菊一文字という銘の刀は正式には存在しなくて鎌倉時代に、名工の一人が皇位の紋である菊紋を入れるのを許されたらしいのだが銘を「一」とだけ彫り、それに加えて菊の紋を彫ったので菊一文字と称するようになったらしい。だからあくまで菊一文字と称されている刀であって正式な銘はわからないってじじいが言ってた。


さてこれがなぜオレの手元にあるかというと、沖田家では代々免許皆伝がこの刀を所持する決まりになっているのだがオレの親父はこれを受け継ぐにふさわしい腕前とは認められなかった。それ故にじじいの次の所持者は俺になったわけだ。ちなみに免許皆伝になるためには試練としてその時の免許皆伝に木刀を使った試合で勝つ必要がある。相手が降参するか、戦闘不能になると勝利となる。免許皆伝は戦いに負けると剥奪という厳しい掟がある。なぜか家では免許皆伝は常に一人なのだ、普通はそんなことはないのだがな。

それだけこの刀を受け継ぐのは難しいし、受け継いでもほとんど使わない。大体受け継いだ奴は山篭りによる訓練で馴染ませるのだが自在に扱えてもそれを振る時代ではないからな。

しかしなんでこの刀がここに?オレの部屋に保管してあり誰も持ち出せないはずなのだが・・・

まあ護身としては最高の一品だ。こいつがあればとりあえずは生きてられるからな。

しかしこれからどうすればいいのか。広い荒野で一人ではどうしようもないな、情報を得る為に自分の足で歩いてみるか。


こうしてオレは立ち上がると広い荒野を一人歩き出すのであった。

菊一文字は国宝級の名刀であり、沖田総司が所持していたという正式な記録もなくまた実戦で使ったとも考えにくいため沖田の愛刀ではなかったという説が主流ですが本作では所持していたという設定にさせていただきます。

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