語らい
お待たせいたしました。少し落ち着いてきたのでぼちぼち再開していきたいと思います
「とりあえず座ってくれないか?」
「ああ、そうさせてもらうよ」
オレもコイツに聞きたいことは有るんだがコイツから俺に聞きたいことはそれより圧倒的に多いんだろうな。一種の感ではあるがきっと間違いないだろう
「まずは自己紹介からにしないか?お互いの事を知らないと話も進まない」
「そうだね。私は司馬懿、性は司馬、名は懿、字は仲達だ。よろしく頼むよ」
「オレは沖田宗一という。性が沖田で名は宗一だ、字は無い」
司馬懿?黄巾の乱が起きる前に出てくる人物なのか?
確かこいつは三国時代後期の人物だったはずだ、このタイミングでこの場所にいるはずはないのでが
「ん?そんなに私の名が珍しかったか?」
「いや、少し考え事をしてしまってな。まあ司馬家となればオレでもわかるよ」
「そうか、まあ両親や兄弟のお陰だね」
「で、何から聞きたいんだ?」
「そうだったね。最初は君があの場所に現れた理由を聞かせて貰いたい」
「理由?」
「命令されて来たのならそれでいい、ただ自分なりの考えを持って来たのならそれに付いて聞かせてほしいな」
何から話したもんか・・・。軍の事って確か極力外に漏らさないのが基本なんだよな。作戦についてはうまく要点だけ説明して後はオレの行動と簡単な理由を説明すればいいか
「順を追って説明するよ。まず賊の出現の話を聞いて配置を確認した、でそれを見た董卓軍の軍師が配置に疑問を覚えながらも討伐軍を編成、配置した。で、オレは賊の拠点に一番近い場所だったんだ。ここまで大丈夫か?」
「ああ、そのへんは大方予想通りだ」
「で、賊を討伐した後は本来なら隣の軍に合流するように指示が出ていた。でもオレだけは軍を副将みたいな奴に預けて単独で賊の本拠地を目指した、だからあそこにはオレ一人しかいなかったってわけ」
「それは軍師の指示ではないよね?」
「ああ、オレの独断さ」
「その理由を聞かせてくれないかな?」
まあ突っ込まれるよなあ・・・。めんどくさいし、直感だったとかで誤魔化せるような奴でもない。仕方ないか
「まあ直感的な部分もあったんだけど、賊の展開の仕方にどうも違和感を覚えた。どうやっても被害が大きすぎる布陣を何故選んだのか、それを考えていたら賊の規模に対して今回の襲撃に参加している人数が多すぎる事に気付いてさ。守備に使う人数が殆どいない、もしかすると拠点はガラ空きなのではないか?ってね。後はオレ一人なら逃げることぐらい簡単だから何があってもいい様に単独で行動したって訳さ」
「大分簡単に纏めたね・・・。でも大体それであってるよ」
「ところでオレからも聞きたいことがあってさ。あれはお前が仕組んだのか?」
「最初に言っておくと私はただの捕虜だよ。でも助言したのは私だね」
話が読めない。捕虜が賊に助言することなどあるのだろうか?
「私は家を出て一人旅をしていたのだが賊に捕まってしまってね。何人か一緒に囚われていて同じ場所に幽閉されていたんだ。それである時、賊の長から聞かれたんだ、この中に軍略を学んだ者はいるか?ってね」
「軍師として使ってやろうって事か?」
「ああ、何でも上手く事が運べば逃がしてやるが、失敗したらその場で処刑する、と言われてしまってね。誰も名乗り出なかったんだ、でも私は名乗り出た」
「逃げるために?」
「まあそれもあるがどうせ上手くいっても私を開放してなどくれないのは目に見えていたからね」
「お前はその後どうしたんだ?」
「まずは簡単な質問に答えたよ。長を勤めているだけあって軍略を多少は知っていたみたいだね。私の回答を聞いて満足したのか今回の襲撃について聞かれたんだ。お前ならどうやって襲撃すると?」
なるほど、話が見えてきた
「そこであの配置を答えたのか。ほぼ全員出したのは確実に相手を殲滅する為に、とか適当な事を言って、逆に賊が全滅するのを狙ったわけか」
「その通りだよ。最初に話した時に相手がどれくらいの人物かわかったからね。皆納得して出て行ったよ」
「賊が全滅した後はどうするつもりだったんだ?」
「董卓軍の軍師が優秀なのは聞いていたからね。待っていれば必ず討伐隊が派遣されると思っていたよ。直ぐに来てくれて助かったけどね」
「待ってる間に餓死する可能性もあったんじゃないの?残った奴に殺される可能性も捨てきれないし」
「まあそうなったら諦めるつもりだったよ。どの道賊に捕まった時点で最悪な状況だったしあの場面で何もしなかったら待っていたのは最悪な未来だっただろうね」
「まあそうかもしれんが・・・」
コイツ勢いで行動する癖でもあるのか適当なのか分かんないな。司馬懿ってだけあって頭は相当に良いみたいだけど。少し会話しただけでそこまでわかるもんなのかねえ?賊だからってものあるんだろうけど
「ふふふ、君は頭もキレるみたいだね。武勇に関してはこの目で見たし話を聞く限りでも自信があるみたいだね」
「ん?ああ、剣は相当な修行を積んだからな。頭は正直自信はないけど」
「それ程の器が何故客将を?」
「まあ器に関しては置いておくが、今もう一人の連れと旅をしていてな。馬を調達しにこっちまで来たのだがそこで色々あって今は客将として世話になっているんだ。まあ長居はしないから直ぐに旅に出るけどな」
「なるほどね。今は勉強中って事か」
「まあな。いい経験になってるよ」
なんだかコイツさっきから熱っぽい眼差しでオレを見てるけどなんなんだ?ヤバイ奴に目を付けられた気しかしないぞ
「じゃあ君は近いうちに此処を出るんだね?」
「まあそうだな」
「決めたよ。私も一緒に行こう」
「はあああ?何でまた?」
「罪作りな男だ。私みたいな引きこもりの女があんな所を見せられた後に知的な一面まで見せられたんだ。目に毒だよ」
「お前が?」
「意外かな?ずっと室内で書物を読んでいたからね。最近旅に出るまでは殆ど外の世界を見たことは無かったし男と関わることも家族くらいしかなかったな。たまに村の人と話すくらいか」
「お前、まさか・・・」
「女にそれを言わせるのか?君は中々に意地悪だ、でも惚れた弱みとはうまく言ったものだね。・・・私は君に一目惚れをしてしまったんだ。どうか一緒に連れて行って欲しい」
なん・・・だと・・・!?
こんな事が、こんな事が有るのか?日本では殆どモテなかったオレに一目惚れだと!?いかん冷静になるんだ。一緒に連れて行くのは構わんが玲とは違ってこいつはオレが何をしようと付いてくるのではないか?それに移動手段の馬も二人分しかないし
「本気か?」
「冗談でこんな事は言わないよ。自分が囚われている所を助けられて、その相手が智勇を兼ね備えた男なら惚れない女なんていないと思うけどね」
「そんなもんなのか?」
「ああ。それに私も武勇は自信がないが知識に関しては多少自信はある、これから君の為に出来る事だって有ると思うよ」
「まあそっちに関しては助かるんだが・・・」
「君が農民になろうが将軍になろうがどこに行こうが私は君を支えてみせる。君の為になる事はしても邪魔はしないって誓うよ。だから・・・ダメだろうか?」
こいつ!?そのちょっと不安そうな目で照れながな上目で見てくるのをやめろ!!
なんであんな自信有り気な態度からこんな一転して可愛い女の子の顔してんだよ!?
実際かなり美人だからこれはちょっと効くわ・・・
「ずっと助けてやる訳にはいかないぞ?」
「構わない。君の手を煩わすような事はしない」
「別の道を行く事になるかもしれないんだぜ?」
「私はただ君に付いて行くだけさ」
「目的だって決まってない。ただ歩いて終わるかも知れないし危険も沢山あるぞ?」
「私は君の隣にいるだけだ。構わないよ」
「手持ちに余裕があるわけでもないぞ?」
「私も賊に取られたが隠していた分もある。それに自分の経費は自分で稼ぐよ、君に迷惑は掛けたくないからね」
この短時間でここまで決めてしまうものなのか?女ってやっぱすげえな
「そこまで言われたらな、断るのも男としてどうかと思うし」
「それなら」
「ああ、これからよろしく頼むよ」
「嬉しいよ。拒否されたらどうしようかと気が気でなかったから」
「まあ、すごい表情だったからな・・・可愛かったけど」
「な!?・・・それは言わないでほしいな。恥ずかしいし照れてしまうよ。
そうだ、私の真名を受け取って欲しい。私の真名は真理だ、今度から真理と呼んで欲しい」
「わかったよ。オレは真名が無くてな。だから宗一で構わない」
「ああ、よろしく頼むよ。必ず君の支えになってみせるから」
なんか軽い気持ちで許可したが間違ってたかな?大丈夫だと信じたい




