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別れと出会い

朝、オレは裏庭で剣を振っていた。


「お待たせ致しました」

「いや、そんなに待ってないよ。それより、もう準備はいいのか?」

「はい、私は大丈夫です」


関羽の支度が終わるのを待っていたのだが案外早く終わったみたいだ。一晩明けた今、吹っ切れたいい顔をしている。


「じゃあ行こうか」

「そうですね。沖田殿は何処へ向かうのでしょうか?」

「オレは路銀を稼ぎながら洛陽を目指してみようと思う。都の様子を見つつ暫くは資金稼ぎだな」

「そうですか。私は常山を目指してみようと思っています」

「常山、趙雲か」

「ええ、ご存知でしたか」


趙雲も居るのだろう。槍の名手、神槍とも讃えられたと聞くがどうだったかな


「じゃあ、ここでお別れだな。色々と世話になった。感謝している」

「とんでもない。感謝しなければならないのは此方です。」

「お互い様ってことにするか。次会った時、楽しみにしているぜ」

「はい。次こそは負けないですからね!」


関羽は更に強くなるだろう。オレも負けていられないな・・・。まだ見ぬ英傑との打ち合いにオレも思いを馳せるのであった


「じゃあな関羽殿」

「あ、お待ち下さい!」

「ん?どうした?」

「貴方に、私の真名を預かって欲しいのです」

「真名?済まない、真名ってなんだ?」

「真名を知らないとは・・・。本当に異国から来た様ですね。真名とは本人が心を許した証として呼ぶことを許した神聖な名前であり、例えどんなに親しい間柄でも本人の許可無く呼ぶことは、斬られても文句は言えないとされています」

「おい・・・そんな大変な物預かっても良いのか?」

「はい!沖田殿だからこそ預かって頂きたいのです。私の真名は愛紗と申します。今後は愛紗とお呼び下さい」

「そりゃまたエライ物を預かっちまったな・・・。改めて自己紹介させてくれ。

オレは、性は沖田、名を宗一と言う。字も真名もない。今後は宗一と呼んでくれ」

「字も真名も無いと?それでは名は真名に値する物ではないのでしょうか?」

「いやあ、オレの国にそんな習慣は無かったからそこまで考えていなかった。まあでも真名の代わりに預けられる物なんてないからさ、名で呼んで貰うのが一番それに近いと踏んだだけさ」

「では、私も今後は宗一殿と呼ばせて頂きます」

「ああ、宜しくな愛紗」

「はい!」

「じゃあ、今度こそお別れだな」

「次に会う時は必ず心身共に成長した姿をお見せ致します」

「ああ、また一緒に打ち合って、一緒に酒でも飲もう」

「はい!是非とも」

「次に会う時を楽しみにしているよ。じゃあな愛紗。また会う日まで、壮健でな」

「宗一殿もお元気で!では、また会う日まで」


別れの挨拶をした後、愛紗は振り向くことなく歩いて行った。愛紗を見送った後オレも洛陽を目指して歩き出した。次会うとき、アイツはどこまで大きくなっているのだろうか・・・。まあオレも負けないように鍛錬するだけさ。

とりあえずアレだ、金だ金。金がなきゃ何も出来ん。早いとこ次の村に行って用心棒でもして稼がないとな。え?この街でやれ?バカ言うな!旅立つって言った後、その場所で用心棒なんてしてたらカッコ悪いからだよチクショー

こうして、オレも洛陽に向けて旅立ったのである






第三者視点



愛紗と宗一が別れてから一月ほど。宗一は洛陽に向けて真っ直ぐ進むのではなく、所々寄り道をしながらゆっくり進んでいた。路銀も行く先々の街で様々な依頼を受けつつ旅をしていた為、少しずつだが貯まってきた。殆どが賊の討伐や、危険地帯を通る商人の護衛だったので宗一としても都合が良かったのだが、宗一は依頼を受ける条件として必ずあることを頼み込んでいた。

それは、賊を倒した物は黒髪の槍使いであると証言させたのであった。理由は幾つかあったが一番は、注目を浴びない為である。

この時代は各領主が優秀な人材を集めている事が多く、路銀を稼ぐため依頼を受けていると腕の立つものがいると噂が広まってしまう。自由に動きたいと思っている宗一としては、それだけは回避したいと思っているので事前に予防策は張り巡らせたのである。宗一自身無いとは思っていたのだが可能性は捨てきれず、やらないで後悔するよりは・・・という事で今はこの様な形を取っている。村や町を移動した際に実績がない事になり仕事が見つからなくなる事も考えて、護衛した商人などに紹介状を書いて貰い仕事を繋いでいる。

こうして宗一は、今日も紹介状を持ってある小さな村の領主の元を訪れていた。


「止まれ!何者だ?」

「広場に出ていた掲示を見てな。オレも今回の討伐に参加したいと思って来たんだ。ついでにこれは紹介状だ、領主様に取り次いでくれないか?」

「解った。待っていろ」

「宜しく頼む」


門番が確認を取り、領主からの許可が出たので宗一は屋敷の中に案内される。

中には何人かの男が待たされていた。


「これより、今回の討伐の説明がある。中に入るが良い。領主様の前だ、くれぐれも失礼の無いように」


宗一達を待っていたのは小太りの中年の男性だった。椅子に座りふんぞり返って酒を飲んでいる。


「よく来たな。お前達は皆、腕に自信の有る奴ばかりみたいじゃないか、期待しているぞ」

「お任せ下さい。必ずやご期待に応えてみましょう」


調子の良さそな若者が一人、跪いて答えた。他の者は反応は様々だが皆領主の言葉

を待っている


「頼むぞ。今回の討伐だが賊の討伐とは別に一緒に討伐して欲しい者がおる」

「そやつも賊の一味なのでしょうか?」

「いや、そうではないが賊より質が悪い。厄災を招く者じゃ」

「・・・」


厄災を招く?この時宗一は不思議に思っていた。古来より災害は神の怒りとされていた。災害が起きる度にそれを沈める為の生贄を捧げるなどといった対策が取られてきたがそれもその一環なのだろうか?


「その者が生まれてから、その村では不吉な事が頻繁に起きるようになった。疫病や不作、賊も頻繁に来るようになった。最近ではこの村まで襲われるようになってのう・・・。もうワシは我慢ならんのじゃ。賊と共にその疫病神も一緒に討伐して参れ!それが今回の依頼じゃ。」

「その疫病神の特徴とやらをお教え下さいますか?」

「思い出すのも悍ましいがのう、左右の目の色が違うのじゃ。あの村には奴しかそんな者はおらん。行けば解るから探し出して討伐して来るのじゃ」

「畏まりました。賊の根城の場所も教えて頂けると助かるのですが」

「それは明日、詳しい流れと一緒に部下に説明させる。今日はもう帰っていいぞ。明日の朝、夜明けと共に此処に来い」

「承知致しました。では失礼します」


宗一も他の者と一緒に屋敷を出た。一言も発さないまま夜食を済ませ宿に戻っていった。

明日の朝に向けて早めに休もうとしていたのだがなかなか寝付けなかった。どうもこういった人物は好きになれない。それに疫病神と決めつけて討伐する事も気が乗らない理由の一つだった。賊でもない人間を勝手な理由で斬り捨てる。仕事と割り切ろうと思っても自分自身がそれを拒否したがっている。心の整理が付かないまま、宗一は朝を迎えようとしていた。




宗一視点




そろそろ時間だな、指定された集合場所に向かわないと。しかし気が乗らねえな・・・。賊とは言え人を斬る事ですらオレはいい気はしない、しかし今を生きる為と割り切ってやっているがただ目の色が違うというだけで人を殺すなんてな。この時代は衛生面や農業などはまだ十分に発達していないのだ、頻発してもそれは別に原因があると思うし飢饉などは気候の問題だ。そんなん目の色だけで変わるなら苦労はしねえよ・・・

屋敷の前には昨日と同じメンバーが揃っていた。しかし賊退治と言ったものの規模などは聞かされていない、大規模な討伐は勘弁して貰いたいのだがな


「よく来てくれた。今回皆に討伐してもらいたい輩は、ここから少し離れた所を根城にしておってな。先ずは近くの村を訪ねてから行くと良い。案内用にワシの私兵を数人出すから詳しくはそいつらに案内して貰え。では行ってくるのじゃ、頼んだぞ」


約10人程の集団で今回は動くようだ、オレは集団の一番後ろについて移動を始めた。オレも黙って付いて行く、ザッと見渡した感じでは本当に腕の立ちそうな奴は一人か二人ぐらいか?それも普通の人基準、でだがな。下手したら全滅もあるなあ・・・。それだけは困る、報酬を受け取る時に一人私兵が生きてないと言い掛りを付けられそうだ。きっとオレ達は使い捨てだろうな、全員が生きて帰っても大した戦闘では無かったなどと言い報酬を減らし。私兵が死ねばオレ達は疑惑を掛けられ処刑。大体そんなトコだろう。オレは私兵に気を付けながら戦って、護りきれたら報酬を貰いに行く、ダメなら帰る事なく次の村を目指せばいい。

三日間歩き続けて目当ての村のすぐ傍まで来た時、皆が異変に気付いた。


「おい!村が燃えているぞ!」

「奴ら!また来たのか!?」

「いいじゃねえか。敵が自ら来てくれたんだ。さっさと殺って帰ろうぜ!」

「うむ。我々も応戦するぞ!全員突撃!」


オレも皆に続いて走る。規模も配置も解らないのに突撃なんて下策だがそうも言ってられないか。


「あ~あ~、早速始めてるなあ・・・オレはどうすっかな」


先ずは適当に賊を捌きつつ地形と状況を把握するか。そこまで大きな村ではないので外を一周する余裕はあるだろう。


「おい!敵だ!敵が来たぞ~」

「よし!お前ら、殺っちまえ!」

「黙れ賊共!成敗してくれる!」

「オラオラ!黙って斬られてろ雑魚が!次はどいつだ?」

「ぐああ!くそう・・・」

「テメエ良くも!」


やれやれ・・・中はもう乱戦状態で手が付けられんな。

一周して解った事は、この村は大体長方形の様な形をしており敵は南から侵入したという事。南で略奪した者を運び出そうとしていた奴らはオレが斬った。外に罠らしき物はなく待機している賊も残っていない。今は混乱が静まるまで中には入りたくはないので生存者を探す事にする。村には火が放たれ、女子供構わず殺されている。目も当てられない様な酷い有様だが万が一の可能性も有る。

何件か回っていると、一件だけ離れた場所にある家を見つけた。村の敷地から少し離れた場所にあるので先程は気付かなかったが彼処なら賊も気付いていないかもしれない。オレが急いで中に入ると、一人の女性が座っていた。


「おい!大丈夫か!?」

「何方でしょうか?」


女性はボロボロの服を着ており、体もやせ細っていた。


「今、この村で賊の襲撃があった。今すぐ此処を離れろ!」

「また、私が呼び寄せてしまったのでしょうか・・・」

「何を言ってるんだ・・・」


女性の目を見てオレは大体の事を察した。紅い左目と黒い右目、彼女が領主の言うもう一人の討伐対象だ。


「そんな訳無いだろ。お前あいつらに何かしたのか?」

「この村の方ではないのですね。ここでは、私のこの目が様々な厄災を招くと言われ続けておりました。ですから今回も私が原因でしょう・・・。もう賊に囚われてしまった方が良いのかもしれません」

「目が違うだけでそんな事が起きたら誰も苦労しねえよ・・・。とりあえず今は待っていろ!外の賊を始末してくる。必ずこの中に隠れていろよ」

「あの・・・貴方は?」

「話は後だ!大人しくしてろよ」


とりあえずこいつを何とかする前に外を何とかしないと。

村の中心はもう屍の山と化していた。一緒に来た面々は殆どが殺られた様で今最後の一人が倒れた。敵が全滅して気を抜いた賊をオレは一瞬で始末する。接敵に気が付いた頃には時すでに遅し、賊どもの間を最高速度で駆け抜け一刀で首を落とす。残っていた賊は30人程いたが数分で壊滅した。

周りを警戒しつつ、生きている賊がいないのを確認してオレは女の元へ向かった。


「待たせたな。とりあえず賊は殲滅したよ」

「そうですか、村の方々は無事でしょうか?」

「いや、残念だが生存者はいないだろう」

「そんな・・・」


彼女もショックを隠しきれないようで暫く無言で俯いていた。こんな扱いをされたとは言え、やはり来るものがあるのだろう。


「ほう、こんな処に隠れていましたか・・・」

「・・・?」

「やはりお前か・・・」


外に気配を感じて警戒していたがオレ達討伐側の人間だったか。無言でオレは刀を抜いた。


「では貴方は私に気付いていたと?」

「ああ、これでも武人の端くれだ。多少は気配も読めるし、貴様の腕前もある程度は判る」

「ほう・・・。貴方は屋敷にいた時から周りの人をよく観察していたので生き残るのではと思っていましたが、まさか戦闘に参加しないとは思いませんでしたよ」

「貴様もな。屋敷でアレだけ目立っていたのに戦場では姿が見当たらなかったもんでな。警戒はしていたよ。大方、戦闘で弱ったオレ達を背後から斬って報酬を独り占めしようと思っていたんだろう?」

「ほう・・・なかなか鋭い。それとも同じことを考えていたのか・・・」


こいつは屋敷で主に領主と受け答えしていた奴だ。最初は大げさな奴だと思っていたが、立ち振る舞いが他の奴に比べて隙が無かった。突撃合図後も真っ先に突っ込んで行った割にはすぐに姿が消えた。警戒はしていたが予感的中とはな


「さて、それが以来の疫病神ですか・・・。どうでしょう、報酬は私と貴方で半々という事で?」

「殺す気か?」

「それはもちろん。貴方もその依頼を受けてきたのでしょう?」

「・・・」


後ろを見ると女は怯えた表情をしていたが、その中に様々な感情が詰まっているのが見て取れた


「断る、と言ったら?」

「正気ですか?困りましたね、それでは報酬が頂けない・・・」

「賊を討伐しなくても村人の首一つで報酬を貰うって訳か」

「ええ、しかしこうなっては仕方ない。貴方には悪いですが死んで貰い・・・ぶほっ!!」


目の前の雑魚が言い終わる前に家の外に蹴り出した。これ以上付き合っていられない


「酷いですね・・・。しかし貴方の技はもう見切りました。先ほどの戦闘を拝見させて頂きましたがその武器の弱点は・・・」

「黙れ」

「なっ・・・はや・・・」

ドサッ


「最初の蹴りを見切れないのに居合を見切れるわけねえだろ」


愛紗とやった後じゃ肩慣らしにもならない奴が多すぎて叶わん

とりあえず中に戻るか、アイツとも色々話した方が良さそうだ

自分で書いてみると本当に難しいなと改めて思いました。

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