沖田宗一
「そこまで!今日はここまでにしようか」
今日の稽古の終わりを告げる声が道場に響き、皆が挨拶を済ませると1人ずつ道場から出て行く。
「ふぅ…今日のは疲れたな」
オレは木刀を下ろし床に座り込んだ。
「宗一、お前はもう弟子ではないんだ自覚を持て!」
「へいへい、頑張りますよ」
オレの師匠である祖父から厳しいお言葉を頂いたので仕方なく立ち上がる。やれやれ、免許皆伝ってのはなかなか難儀な立場みたいだね。
ああ、自己紹介がまだだったな。オレは沖田宗一、特に特長もない社会人の一人、まあ強いて言うならこの道場の門下生で天然理心流の使い手ってことかな。
オレの家は幕末期に活躍した沖田総司の家系なんだ。天才剣士沖田総司、知ってる人も多いだろう。新撰組一番隊隊長で剣の天才。さらには病弱とくればいろんな奴が飛び付きたくなるような設定だ。
しかし剣術に関しては化け物みたいな強さだったみたいで、その形だけでも残せないかって子孫が残していったのがこの道場らしい。糞じじ…祖父の二代前が設立者で本家の天然理心流とは別物という事になっているがな。
そんな一族に生まれてしまったオレは幼少期から剣の修業に明け暮れた。学校に行く前に稽古、帰宅してから稽古、遊ぶ時間なんて無い。身体の傷は増える一方、自分の境遇を嘆いたりもしたが大きくなるにつれて慣れてしまったよ。そんなおかげか北辰一刀流や小野派一刀流など様々な流派の剣術も習得できた。
今ではいろいろと出来ることも増えたが知り合いが化け物だらけだっただからな、毎日が戦場にいるような気分だよ。
まあ、長くなったがこれがオレさ。しかし眠くなってきたな。意識が…




