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結界都市 エトピリカのエコーズ アナザーエンド  作者: 因幡雄介
第1章 王のいない城

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イケメン枕

 二人はその後も、一緒に旅を続けた。



 街道を外れ、森の道を歩いていく。


 深い森ではないため、太陽の光が入ってきていたが、それが薄くなり始めた。

 

 夜になる兆候だ。



 カンタロウはすぐに、今日寝る場所を探し始めた。


 木が生い茂っていない、平地を選び、そこから周りを見回した。


「ここにするか」


「もう夜になるしね」


 アゲハは賛成という意味なのか、岩の上にすぐに座る。



 カンタロウは枯れ木を使い、火を起こし、生木を入れて火を燃やす。


 次にパンに、山菜、ウサギを取りだし、料理する。


 出来上がった食事を、アゲハと雑談しながら食べた。


「すまない。だいぶ調子がよくなった」


 ホームシックが完治していないため、まだ少し調子は悪そうだが、母の幻覚は見えなくなったようだ。


「どういたしまして」


「だけど、どうして赤の他人である、俺を助ける?」


「うん? 別にいいじゃん。ただ、ほっとけなかっただけ」


 アゲハは眠そうにあくびする。


 本心で、何か利益を求めているわけではなさそうだ。見知らぬ男に懐きすぎる。


「……そうか」


 答えが不満なのか、カンタロウは視線を落とした。



 夜行性の鳥が鳴いている。


「さて、寝るか」


「一応聞くけど、ちゃんと月の玉、持ってるよね?」


 月の玉とは、魔帝国製の魔道具だ。


 神脈を少量吸収し、小結界をつくりだす。


 人間数人程度ならば、結界の中に入れる。



 玉の形は丸く、真珠のように大人の指ぐらいの大きさで、色は金色。


 ハンターはこれを、ネックレスにして身につけている。


 結界の防御能力はレベル3ぐらい。


 使用すれば、神脈によって削られていくので、一年ぐらいで交換が必要。


 使用頻度が高ければ、色は金から黒くなっていく。値段は普通の庶民が手軽に買えないぐらい、高価だ。



 そのためか、まがい物が多く作られているという問題がある。



「安心しろ。このとおり持っている」


 若い男と一緒に寝たくないのだろうと、カンタロウは察して、ネックレスにしている月の玉をアゲハに見せた。


 色は金が見えないほど、黒く変色している。


「だいぶ、すり減ってるね?」


「そうだな。また買わなきゃならないな。まったく、魔帝国はぼろ儲けだ」


「こういう細かい魔道具、得意だもんね、あの国は」


「じゃ、俺はあっちで寝る」


「わかった」


 カンタロウは立ち上がると、少し離れた所で、月の玉を地面に埋めた。


 月の光のように、玉が輝いたときに、魔法の詠唱を唱える。


 半径五メートルほどに、小結界が張られた。


「ふう……」


 軟らかい木の根を枕にし、カンタロウが横になる。



「よいしょっと」



 アゲハがいつの間にか、カンタロウの小結界の中に入ってきて、胸に自分の頭をおいた。


 月のような金髪と、闇でも輝く碧眼が、カンタロウのそばで美しく光る。


 アゲハの体温が、すぐ近くで感じる。髪からほのかに、草木の香りがした。



「ふふん。じゃ、お休み」



 アゲハは少し笑うと、碧い瞳を閉じた。自分のマントを、かけ布団がわりにしている。




「……って、ちょっと待て。どうして俺の体を枕にする?」




 カンタロウが我に返った。あまりの自然さに、呆然としてしまったのだ。


「いいじゃん。今日膝枕してあげたでしょ? そのおかえし」


 アゲハは目を閉じたまま言い、カンタロウから離れようとしない。



「お前に言っておくが――俺は母しか気を許していない」



「くぅーくぅー」


「……寝たのか?」


 アゲハからの返事はない。


 小さな寝息だけが、夜の音として、カンタロウの耳に入っていく。


 カンタロウは緊張感からか、その日は眠ることができなかった。




 アゲハがカンタロウを枕にする日は、次の夜も続き、寝苦しい夜中が始まった。

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