93.神去る、再び
美味しいスイーツでエネルギー充填完了。
お肌もツヤツヤ(物理的に発光中)になった私たちは、意気揚々とサラディアスの街を目指していた。
……のだけど。
「……なんか、街の方が騒がしくない?」
フロントガラス越しに見える街の城壁付近で、黒い煙……いや、黒い「塊」が蠢いているのが見えた。
嫌な予感がする。
私はドラレコのカメラをズームさせる。
モニターに映し出されたのは、必死の形相で槍を振り、魔導銃を撃つ衛兵たちと、彼らに襲いかかる魔蟲の大群だった。
「げっ。魔蟲じゃん!」
なんで魔蟲がここに……?
……待てよ。
妖精郷の森にいた魔蟲たちは、私の設置した蚊取り線香により、どこかへ行った。
そう、消滅したわけではないのだ。
ただ「逃げた」だけ。
では……いったいどこに?
……どうやら、私の「蚊取り線香」作戦で森を追われた魔蟲の一部が、行き場を失って街の方へ流れてきてしまったらしい。
いわゆるスタンピード状態だ。
『人の子よ、スミコよ。街が襲われていますね』
後部座席でテンコが呟く。
その口調は実にドライだ。
まあ、この子にとって大切なのは自分の周りに居る仲間だけだものね。
サラディアスの人たちなんて、どうでも良いって思ってるんだろう。
私だって自分に関係ないものの命まで、全て拾わなければいけないとは思わない。
でもなー。
「これは私の責任もあるね……。私が森から追い出したせいで、こっちに来ちゃったんだ」
自分の蒔いた種(虫)は、自分で刈り取らなきゃいけない。
私はハンドルを握り直す。
「よし、掃除するよ! いくぞキャンピー!」
私はアクセルを踏み込み、戦場へと急行する。
衛兵たちが悲鳴を上げているのが見える。
「だ、だめだ! 数が多すぎる! 押し切られるぞ!」
「ひるむな! 民を守れぇぇ!」
絶体絶命のピンチ。
そこに、煌々と輝く私のキャンピングカーが突っ込んだ。
「お楽しみのところ失礼! 助太刀するよ!」
私が叫ぶと同時、魔蟲たちがこちらに気づいた。
ギチチチチ……!
無数の複眼が、キャンピーを捉える。
そして。
ブワァァァァァァッ!
魔蟲の大群が、衛兵たちを無視して、一斉にこちらへ向きを変えた。
え、なに?
すごい勢いでこっちに来るんだけど!?
それはまるで、決壊したダムから溢れ出る濁流のようだった。
空を埋め尽くす黒い虫の奔流が、一転してキャンピー目掛けて殺到してくる。
「うわあああ!? なんで!? なんで一斉に集まってくんの!?」
フロントガラスが、黒い虫で埋め尽くされそうになる。
キャンピーは頑丈だから平気だけど、絵面が最悪だ!
集合体恐怖症の人が見たら卒倒するレベルだぞ!
なんでこんなにモテモテなの!?
『スミコ! 虫は「光」に集まる習性があります!』
テンコが叫ぶ。
あ。
私はルームミラーを見る。
そこには、ロイヤルゼリーパワーで、LED照明のごとく全身を発光させているテンコとソーちゃんがいた。
車内から漏れ出る、神々しいほどの光。
闇夜に輝く誘蛾灯。
「あんたらかー!!」
そうだった。虫は光に集まるんだった!
テンコたちが眩しすぎて、最高のターゲットになっちゃってる!
「ギギギギギ!」
魔蟲たちがキャンピーを取り囲み、黒い球体のように密集してくる。
衛兵たちは助かったようだが、今度はこっちがピンチ……いや、待てよ?
「これ、逆にチャンスじゃない?」
散らばっていた虫たちが、光に惹かれて一箇所に固まった。
つまり、「まとめて吹き飛ばせる」ってことだ。
「キャンピー、バック!」
私はギアをRに入れ、アクセルをベタ踏みする。
急後退。
虫たちが「待てー!」とばかりに追いかけてくる。
いいぞ、もっと集まれ。一列になれ。
十分に距離を取ったところで、私は急ブレーキを踏み、車体を反転させる。
正面に、魔蟲の黒い塊。
ターゲット、ロックオン。
「今だ! キャンピー、聖なる……魔物ぶっ殺し光線、発射!!」
カッッッッッッ!!
キャンピーのヘッドライトから、収束された光の帯が放たれた。
ただの光ではない。
神樹の加護を受けた、対魔物用の浄化光線だ!
ジュワアアアアアアア!!
光の奔流が、魔蟲の群れを貫く。
断末魔を上げる暇もなく、虫たちが次々と消滅していく。
不浄な魔蟲にとっては致死性の猛毒レーザーだ!
ズガガガガガガ!
一瞬だった。
数千匹はいたであろう魔蟲の群れが、光の彼方に消え去った。
空には、きれいな星空だけが残っている。
「ふぅ。殲滅完了」
私はライトを通常モードに戻す。
城壁の上では、衛兵たちがポカーンと口を開けて、光の消えた空を見上げていた。
そして。
「う、うおおおおおおおお!」
「神だ! 光の神が降臨されたぞぉぉぉ!」
「あの輝き……神輿の中に、太陽の御使い様がいらっしゃるに違いない!」
「ありがたやぁぁぁぁ!!」
衛兵たちが、私に気づいて歓声を上げている。
あー……またか。
またここでもか。
『どうするのですか、スミコよ?』
うーん……ラディアスさんを待って、報酬金を受け取りたい……のはヤマヤマなんだけども。
これ……街に行けば、「聖女様~!」とみんな集まってきて、大騒ぎになってしまう。
私は目立ちたくない。
よって……。
「去る……! れっつごーキャンピー!」
プップ~!
私はハンドルを切り、キャンピーをサラディアスの街から遠ざける。
すると前方から、一台の魔導装甲車が走ってきた。
ラディアスさんが乗っている車だ!
すれ違いざま、窓からラディアスさんが顔を出す。
「召喚者殿!? 一体どこへ!?」
「一身上の都合で、私は去ります! お金はまた来るから、そんときにー!」
「は!? いや、お待ちくだされ! 貴女こそ英雄……!」
ラディアスさんが手を伸ばして引き留めようとするが、私は止まらない。
キャンピーはフルスロットルで加速し、呆気にとられるラディアスさんを置き去りにして逃げていく。
『妾、なんだかこの展開、前にも見たことがあります』
それは、私も……読者も分かってるって……。
【お知らせ】
※1/22(木)
新連載、スタートしました!
ぜひ応援していただけますとうれしいです!
URLを貼っておきます!
よろしくお願いいたします!
『「君を愛することはない」と白い結婚を突きつけられたので、【付与魔法】で便利グッズを作って快適な引きこもり生活を送ります~不眠症の冷徹公爵様が私の魔道具に依存して、執着がヤバいことになってる~』
https://ncode.syosetu.com/n3659lr/
広告下↓のリンクから飛べます。




