表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てられ聖女は万能チート【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる  作者: 茨木野


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/95

91.バカを成敗!



「待って! 待ってよ! スミコ!」


 兵士たちに両脇を抱えられ、拘束されているきらりんが、必死の形相で私を呼んだ。

 ラディアスさんが聞く耳を持たないと悟り、ターゲットを変えたらしい。


「助けてよぉ! 私たち、同じ日本人でしょ!? 同郷のよしみってやつがあるじゃない!」

「…………」


 同郷のよしみ、ねえ。

 まあ、ね。これがきらりんじゃなく、例えば別の召喚者だったら、考えただろう。

 右も左も分からない異世界で、同郷の人間が困っていたら手を差し伸べるのが人情だ。


 だが、私はこの娘に対して、あまり好感を抱いていない。

 というか、嫌いだ。


「助けないよ」

「なんでよ! 薄情者! 友達でしょ!?」

「友達だった覚えはないけど」


 私はため息をつく。


「それにさ。私が『役立たず』って言われて、お城を追い出された時。あんた、助けてくれなかったじゃん」

「そ、それは……!」


 ゲータ・ニィガの王子様に、聖女候補として召喚された私ときらりん。

 王子は「きらりんが聖女、スミコは偽物」と断定し、私を捨てた。

 その時、こいつは何もしてくれなかったのである。


「それこそ、同郷のよしみで助けるとかさ、できたわけじゃん。でもしなかった」


 きらりんが言葉に詰まる。


 私が追放を宣告され、途方に暮れていた時。

 彼女は王子の隣で、クスクスと笑っていた。

 『あーあ、残念な子』とでも言うように、嘲笑って見過ごしていた。

 助ける力を持っていたのに、面白い見世物として楽しんでいたのだ。


「あの時、あんたは笑って見てたよね。だから私も、今のあんたを笑って見過ごすことにするよ」

「あ、あんたぁ……!」

「悪いこともしたんだから、ちゃんと罪は償いなよ」


 私はそれ以上会話する気もなく、キャンピーに戻ろうとする。


「さて、ラディアスさん」

「はっ。では召喚者殿、こやつを護送するため、キャンピーに……」


 ラディアスさんが言いかけた、その時だった。


『なりません!』


 ピシャリと、厳しい声が響いた。

 テンコだ。

 彼女は窓から顔を出し、きらりんを冷徹な目で見下ろしている。


『スミコ、その女を乗せることは、妾が許しません』

「え、テンコ?」

『そいつは妾のスミコに酷いことをした、汚らしい存在です。そのような不潔なものを、我らの城に入れるなど言語道断!』


 テンコぉ……。

 友達(私)をいじめたやつを、許さないってことね……。

 良い子……。


『それに、本当に汚いですしね』


 テンコが尻尾で鼻を覆う。

 まあ、確かにすごい匂いだもんね。


 ……ん?

 もしかしてそっちがメインの理由?

 いや、ないな。テンコって割と友達大事にするし。スミコファーストだし。

 多分。


『それに、魂も薄汚れておる。そのような者をソーちゃんの近くに置くことなど、教育上よろしくありません!』

「だ、そうです」


 私は肩をすくめてラディアスさんを見た。


「うちの神獣様がこう仰ってるんで、乗車拒否で」

「む、神獣殿がそう仰るなら仕方がない……」


 ラディアスさんも納得したようだ。

 助かった。

 正直、新車の匂いがするキャンピーに、その異臭を放つ物体を乗せるのは嫌だったんだよね。

 テンコ、ナイスフォロー。


「安心してくれ。手配は済んでいる」


 ラディアスさんが懐から、通信用の魔導具を取り出した。


「先ほど、森の入り口に待機させていた我が軍の別動隊と連絡がついた。彼らに身柄を引き渡す」

「お、ナイス」


 さすがラディアスさん、仕事が早い。


「ここから入り口までは、徒歩で連行する。総員、行くぞ!」

「はっ!」


 兵士たちがきらりんを立たせ、強引に歩かせ始める。


「いやぁぁぁ! 歩くの!? こんな泥だらけの道をごめんだわぁぁぁ!」


 きらりんが喚くが、無視だ。

 私はキャンピーを発進させる。

 快適な空調、ふかふかのシート、そしてテンコとソーちゃんの癒やし空間。

 泥道をドナドナされていくきらりんの横を、悠々と追い抜いていく。


 その圧倒的な「格差」に、きらりんのプライドが崩壊したらしい。


「あああああ! なんで! なんであんたなんかが!」


 彼女は涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔で、絶叫した。


「なんで『モブ』のあんたが、こんな良い思いしてるのよぉぉ!? なんで私は泥まみれなのに! あんたはそんな良い車に乗ってんのよぉぉ! 私はヒロインなのに! 主役なのにぃぃ! ちくしょおぉぉぉ!」


 魂の叫びだなぁ。

 まあ、主役だモブだなんてこだわってる時点で、あんたは自分の人生を生きてなかったってことだよ。


『まぁま、うるさいねー』

『哀れな女ですね。自分の行いが返ってきただけだというのに』


 後部座席の二人は冷ややかだ。

 ソーちゃんが、窓の外のきらりんに向かって、無邪気に手を振った。


『ばいばーい』


 その純粋な一言が、一番のトドメになったかもしれない。

 きらりんはガクリと膝をつき、そのままズルズルと兵士に引きずられていった。


 バックミラーの中で、ピンク色の影が小さくなっていく。

 さようなら、きらりん。

 少しは頭を冷やすといいよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
この後のきらりんのざまぁ見たい
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ