88.大勝利と報酬
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
神樹の頂上に、静寂が戻った。
私のロードローラー……じゃなくて、キャンピングカーアタックによって、女魔王蜂は完全に沈黙した。
私はキャンピーを少し移動させ、圧殺した現場を確認する。
そこには、かつて女王と呼ばれた存在の、哀れな末路があった。
私はラディアスさんたちを車内に残し、一人外に出る。
ペチャンコにひしゃげている女王の死体をしっかり確認する。
うん……倒せてるね。
さすがにこれで生きてたらホラーだ。
「……南無」
一応拝んでおく。
『まぁま、なぁにそれ?』
パタパタ……と跳びながら、ソーちゃんがやってきた。
って、ソーちゃんっ?
「ちょ、ソーちゃん、大丈夫なの?」
『あたまてきな? むきー!』
「違うって、頭がおかしいか聞いてるんじゃないよ!」
どこで覚えてくんのよその返し……じゃなくて。
「今、外は瘴気が満ちてるじゃん。大丈夫なのって聞いてるの!」
私はスキル【野外活動】があるから平気だけど、ここは本来、即死級の猛毒瘴気に満ちていたはずだ。
ソーちゃんは神獣だけど、子供だし……って、ヤバ!
「テンコ! あんた大丈夫なのっ?」
ヤベェ……今更だけど、テンコってさっきから瘴気の中で活動してたじゃん?
大丈夫なのっ?
『今更ですか……』
呆れた調子のテンコ。
近づいてきた彼女を改めて見る。
金色の毛並みは一切汚れていないし、顔色も良い。
……あれ?
「平気なの?」
『ええ、妾は風の防壁で、瘴気による被害を防いでいましたので』
なるほど……自身の風で気流操作をして、瘴気を寄せ付けなかったわけね……って!
「あんた風纏ってないじゃん、今」
『ええ。もう安心です。瘴気の発生源を、貴女が倒した……いえ、治療したので』
「発生源……ああ、さっきの神樹?」
『ええ。そして、女魔王蜂の巣ですね』
なるほど……。
私は神樹を見上げる。
最初に見た時は、ドス黒く汚れていて、さらに無数のコブでボコボコの、とんでもなくグロテスクなビジュアルをしていた。
でも……今は違う。
汚れは完全に洗い流され、樹皮は白銀に輝いている。
枝葉は瑞々しい翠を取り戻し、サラサラと風に揺れるたびに、キラキラとした光の粒子が舞い散っている。
まさに「神樹」の名にふさわしい、神々しい姿だ。
「神樹が戻ったことで、瘴気の発生源がなくなったってわけね」
『その通りです。いずれ、森を包む瘴気も消えていくことでしょう』
じゃあ問題解決ってこったな。
いやぁ、よかったよかった。
『まぁま、なんか、ぺちゃんこ、きらきらー』
その時、ソーちゃんが、キャンピーの下敷きになってる女魔王蜂の死体を指差して叫んだ。
残骸の中で、何かがキラリと光った。
「お、ドロップアイテム発見。キャンピー、どいて」
キャンピーがバックする。死体の中で輝くそれを拾い上げる。
拳二つ分はある、巨大な紫色の結晶石だ。
「魔蟲女王の魔核……! さっきの個体よりも遥かに巨大で、高純度です……!」
背後から声がした。
ラディアスさんと軍人さんたちが、恐る恐るキャンピングカーから降りてきたのだ。
『そなたら……最後まで役立たずでしたね。何しにやってきたのですか?』
「す、すみません……」
テンコが一番(多分読者も)言いたかったことを、痛快にぶっ込んでくれた。
ありがとう。
私もちょこっと思ってたよ。
何しに来たのあんたらって。
軍人さんたちが申し訳なさそうに、ペコペコ頭を下げる。
なんか可哀想だ。
それに……まあ、しょうがないよ。
「気にしないで。相手が悪かったって」
こんな高濃度の瘴気の中で活動できる人間なんて、そうそういないだろうし。
女魔王蜂も、なかなか強かったしね。
キャンピーの防御結界を突破する毒針とか持ってたし。
「ありがとうございます……」
「なんのなんの。で、何か言いたかったんじゃないの?」
ラディアスさんが、私の手元の石を見て震えている。
「こ、この魔核一つで、小国なら買えるかもしれません……!」
「マジ? じゃあ、これで当分ガソリン代には困らないね」
ポンッ。
カーナビの画面が光る。
【(º﹃º )(じゅるり)】
キャンピーがよだれを垂らしていた。
あ、アカーン!
アカンよキャンピー、これで国一個だよ!?
我慢してガソリンで!
その時だった。
頭上の神樹が、ザワザワと枝葉を揺らした。
まるで、礼を言っているかのように、優しい光が降り注ぐ。
そして、巨大な葉の先から、黄金色に輝く水滴がこぼれ落ちた。
ポタリ。
キラキラ……と光りながら落ちてくる。
私の第六感が囁いている。
あれは……とんでもないものだ!
私は反射的に【アイテムボックス】を開き、地面に落ちる前にそれを回収した。
「【鑑定】」
~~~~~
【世界樹の雫】
解説:神樹が百年に一度だけ生み出す、生命の結晶。あらゆる病を治癒し、死者すら蘇生させると言われる「エリクサー」の原料。
~~~~~
「うわ、激レアアイテムじゃん。百年に一度って」
エリクサーの原液か。
これがあれば、万が一怪我しても安心だな。
とりあえずキープで。
「ちょ、召喚者殿!? 今、何を収納された!?」
「ん? 世界樹の雫」
「せ、せせせ、世界樹の雫だとぉぉぉ!? 伝説上の霊薬ではないか! それを、スーパーの特売品みたいに、ポイッと……!?」
ラディアスさんが頭を抱えている。
だって、瓶とかないし。
アイテムボックスに入れるのが一番鮮度保てるでしょ。
さらに、神樹からの贈り物はそれだけではなかった。
ズズズ……。
頭上で、何か重たいものが動く音がした。
見上げると、枝の間に引っかかっていた「巨大な塊」が、落下してくるのが見えた。
ボトッ!!
凄まじい重量感と共に、目の前に落ちてきたのは、軽自動車くらいのサイズがある「蜂の巣」の一部だった。
ただの巣ではない。
黄金色の蜜が、ドロリと溢れ出している。
「こ、これは……」
「【鑑定】……うおっ、【女魔王蜂の極上ロイヤルゼリー】だって!」
あの女王蜂が、自分専用に貯め込んでいた最高級のロイヤルゼリーだ。
美容と健康に良さそうだし、何よりめちゃくちゃ美味そうだ。
「でっか。これ一生分あるんじゃない?」
「国宝級の魔核に、伝説の霊薬に、幻の食材……。数分で得ていい財産ではないぞ……」
ラディアスさんが遠い目をしている。
まあ、リスク(垂直カーチェイス)に見合った報酬ってことで。
『スミコ! やりましたね!』
「テンコ」
『むぐっ!?』
私はテンコに抱きつき、そのモフモフの毛並みに顔を埋めた。
「ありがとね、テンコ。今回はテンコがいなかったらヤバかったよ」
あの毒針の雨も、最後の特攻も、テンコの狐火と念動力がなければ防げなかった。
彼女こそMVPだ。
「えらーい、えらい! さすが我が家の守護神!」
『む、むふー! も、もっと褒めてもよいのですよ!』
私はテンコの頭をワシャワシャと撫で回し、耳の裏をコチョコチョする。
テンコは気持ちよさそうに目を細め、喉をグルグルと鳴らした。
「よし、今日はテンコの好きなもの、何でも作ってあげるからね。あそこに落ちてるロイヤルゼリーで、特製プリンとかどう?」
『プリン! 妾、プリン所望します!』
テンコが目を輝かせる。
ふふ、可愛いなあ。
こうして、神樹の治療ミッションは、大量の報酬とモフモフと共に、無事に完了したのだった。
【おしらせ】
※1/19(月)
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