85.神樹のオペ、開始!
『燃え尽きよ、狐火!』
テンコの叫びと共に、彼女の九つの尻尾から紅蓮の炎が噴き上がった。
それはただの火ではない。
魔を祓い、不浄を焼き尽くす、神聖なる狐の火だ。
ボウッ!
放たれた炎は生き物のように空を駆け巡り、押し寄せる蜂の軍勢を次々と飲み込んでいく。
『ギャアアアア!』
『熱イ、熱イィィィ!』
働き蜂たちが、断末魔を上げて炭化し、ボロボロと地面に落ちていく。
圧倒的な火力だ。
女魔王蜂が、驚愕に目を見開く。
「馬鹿な……テンコ。あんたは風の神獣ではないの!? 風を司る者が、なぜこれほどの火を操れる!?」
『そこの女は、何故我の疑問を代弁しておるのだ!?』
女魔王蜂が私にツッコんでくる。
いや、私も純粋に疑問に思ったから。
風属性じゃなかったっけ?
女魔王蜂の(と私の)問いに、テンコはふふんと鼻を鳴らす。
空中にふわりと浮き、勝ち誇った顔で言い放った。
『一体いつから、天狐が風しか使えぬと錯覚していた?』
言ったー!
それ言ってみたかっただけだろぉおおおおおおお!
意外、それは狐火!
確かにファンタジー狐だと、使うよね!
『スミコ! 雑魚と親玉の相手は妾がします! その間に神樹を!』
「了解! オペを開始する!」
テンコが稼いでくれた時間、無駄にはしない。
私はハンドルを握り直し、モニターを睨みつける。
『オペだと? 我と戦わずして何ができる!』
女魔王蜂が吠えるが、無視だ。
私の相手は、あんたじゃない。
あんたが汚した、この神樹だ。
「まずは、そのキモい『いぼ(虫こぶ)』を取る!」
神樹の表面には、無数の虫こぶがびっしりと張り付いている。
あれが神樹の養分を吸い上げ、女魔王蜂に供給しているパイプラインだ。
まずはあれを断つ。
「キャンピー、魔物ぶっ殺し光線展開! モード・拡散精密照射!」
ガシャン!
ヘッドライトの形状が変化する。
一つの大きなレンズから、ハチの巣のような無数の小さなレンズへと分割される。
カッ!
放たれたのは、前回のような極太の破壊光線ではない。
雨のように降り注ぐ、無数の細いレーザーだ。
その全てが、独立した照準で制御されている。
ジュッ! ジュッ! ジュワワワワ!
まるで美容皮膚科のホクロ除去レーザーのように、光の雨が虫こぶだけを正確に貫き、焼き切っていく。
『ギャッ!? 我の可愛い苗床たちが!?』
女魔王蜂が悲鳴を上げる。
魔物のみをぶっ殺すレーザーの高熱は、神樹を傷つけることなく、虫こぶだけを焼き払う。
数秒後。
神樹の表面を覆っていた無数の「いぼ」は、全て黒焦げになって剥がれ落ちた。
「よし、表面のイボは取った。次は全身洗浄だ!」
「せ、全身洗浄だと……?」
後ろでラディアスさんが呆然と呟く。
そう、まだ汚れが残っている。
膿や樹液、長年蓄積されたヘドロを洗い流さなきゃ、完全復活とは言えない。
そのためには、上から水をぶっかける必要がある。
「行くよ、ラディアスさん。舌噛まないでね」
「ど、どこへ行くというのだ……」
「上!」
私はギアを入れ、アクセルを踏み込む。
キャンピーが唸りを上げ、神樹の根元へと突っ込む。
激突する!
ラディアスさんが悲鳴を上げようとした、その瞬間。
ギュルルッ!
キャンピーの前輪が、神樹の幹を捉えた。
そのまま、車体が垂直に持ち上がる。
「は……?」
ラディアスさんの目が点になる。
キャンピーは、90度の垂直な幹に張り付き、そのまま重力を無視して加速した。
「反重力機構、起動! かっとべマグナーーーーーム!」
ブオオオオオオオオン!
私たちは、神樹の幹を道路代わりにして、空へ向かって爆走し始めた。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? 車が! 車が木を登っているぅぅぅぅぅぅ!?」
ラディアスさんの絶叫が木霊する。
窓の外を流れる景色が、横ではなく下へと流れていく。
グングンと高度が上がり、雲が近づいてくる。
「物理法則はどうなっているのだぁぁぁぁぁ!?」
そんなもの、キャンピーの前では無力だ。
私たちは雲を突き抜け、神樹の頂上を目指す!
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※1/12(月)
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