82.魔核げっと、美味しく食べるキャンピー
極太レーザーによって消滅した、直線の焼け跡。
そこには、魔蟲族の姿は影も形もない。
ただ一つ、キラキラと緑色に輝く石が落ちていた。
「ん……なんじゃありゃ……?」
ただの石ころにしては、異様な存在感が目を引く。
私の脳内CP、IQ53万のそれが弾き出した結論によると……。
「お宝かも!」
そこ、結論からIQを感じさせないとか言わない。
私はキャンピーから降りる。
本来なら即死級の瘴気が満ちる場所だが、【野外活動】持ちの私には、へっちゃらなのだ。
キャンピーから離れ、落ちている緑色の石を手に取る。
それは、拳大の大きさで、脈打つように光っていた。
「こ、これは……!」
うぉ! いつの間にかラディアスさんが隣にいた。
「あ、あんた大丈夫なん……? キャンピーの外だけど」
「ああ。なぜか知らないが……この辺り一帯、毒ガスがないのだ。計器で測ってみたのだが」
「ま?」
「ま……? ああ、マジだ」
うぇー……どういうことだろう。
また私、やっちゃいました?
推測するに、さっきの極太レーザーの高密度エネルギーが、空間に充満していた瘴気ごと焼き尽くし、一時的な「浄化」を引き起こしたのだろう。
空気清浄機機能付きレーザー兵器。
便利すぎる。
それはさておき。
ラディアスさんが、私の手元の石を見て、目を見開いて震えている。
「これは魔核……!」
「まかく……?」
「そうだ。魔物の中でも、特に強力な個体の体内で生成される、魔力の結晶体だ。魔道具の心臓部や、都市結界の動力源として使われる、超レア素材だぞ!」
「へー、すごいんだ」
「すごいなんてものではない! これほど純度が高く、巨大なものは見たことがない! これは国宝級だぞ……!」
ラディアスさんが捲し立てる。
「これ一つあれば、城が買える! 遊んで暮らせるぞ!」
し、城が買える……。
その言葉に、私の心がグラつく。
マジか。
これを換金すれば、もう危険な冒険をしなくても、一生遊んで暮らせるのでは……?
その時だった。
ポンッ。
可愛らしい音がして、私の隣に光が集まる。
光が収まると、そこには一人の少女が座っていた。
銀色の髪に、黄色い瞳。
人間姿の我らがキャンピーである。
「どしたの、急に人の姿になって」
キャンピーは私の問いには答えず、ただ一点を凝視していた。
その視線の先にあるのは、私が手に持っている「魔核」だ。
じゅるり……。
キャンピーの口元から、よだれが垂れた。
瞳が、飢えた獣のように輝いている。
「……キャンピー?」
じーっ。
キャンピーは魔核から目を離さない。
「どうしたの? ……もしかして……食べたいの?」
私が恐る恐る聞くと。
コク!
キャンピーが、首がもげるんじゃないかという勢いで頷いた。
食べたいらしい。
これを。
城が買える、この国宝を。
う、うぐうぅううううううううううううう。
ふぐぅうううううううううううううううう。
「きゃ、キャンピーさん……その、他のじゃだめ?」
「…………」
こくん! と首を振る。否定だ。
「A5のステーキじゃ、だめ?」
「…………」
のん! と首を横に振る。
「えーっと……他にもたくさんさ、美味しい物あるんだけどさ。そっちを食べるんじゃ……だめ? どうしても、この魔核ってやつ……食べたいの?」
「…………」
いえーす! とばかりに、キラキラした目で頷く。
そ、っかぁ~……。
う~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん。
……正直言って、これを売って金にした方がいい。
ただでさえ、食べまくり、食費掛かりまくりなメンツが揃っているから。
でも、キャンピーさんはこの魔核をご所望という。
……これが、まあテンコとかだったら、有無を言わさず売り払うけどさ。
でも……キャンピーには、すっごく、すっごく、普段からお世話になってる。
キャンピーがいなかったら、私詰んでたってシーンが多々ある。
命の恩人であり、最高の相棒だ。
そんな可愛く、頼もしい、我らがキャンピーさんが、この魔核を食べたがってる。
「わ、かったよ……OK」
「ちょ、ちょっと待ちたまえ召喚者殿! まさかそれを……その娘に与える気か!?」
「いやでも、欲しがってるし……」
「それは国宝だぞ!? 城だぞ!? それを……おやつ代わりに!?」
ラディアスさんが悲鳴を上げる。
ごもっともだ。
普通の感覚ならありえない。
でもなぁ。
うちの愛車が、こんなに欲しがってるんだ。
「はい、あーん」
「あーーーん」
キャンピーが小さな桜色の口を大きく開ける。
私はそこに、拳大の魔核を放り込んだ。
「ああっ! 私の城がぁぁぁぁぁぁぁ!」
ラディアスさんの絶叫をBGMに、キャンピーは「ガリゴリバキボリ」と、豪快な咀嚼音を立てて魔核を噛み砕いた。
いい食いっぷりだ。
ゴクン。
キャンピーが喉を鳴らして飲み込む。
その瞬間。
カッ……!
キャンピーの体が光り、またキャンピングカーの姿に戻る!
ブルルンッ!
車体が震え、エンジン音が力強く響いた。
しかも、なんだかエンジン音が以前より大きく、パワーが漲っている気がする。
なんかレベルアップしたっぽい。
「……城が……おやつに……」
「……ま、まあほら……うん。敵倒したのそもそもキャンピーさんだから……」
「「はぁ……」」
私とラディアスさんは、同時にため息をついたのだった。
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