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捨てられ聖女は万能チート【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる  作者: 茨木野


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79.肉の宴に連れられ、やばいもの釣れたっす!



 自らの過ち(食べ過ぎ)に気づいた、私。

 でも、うちの子らは、飯を食べさせないと五月蠅いので、ご飯を食べさせることにした。


 KAmizonで、美味しいお肉を購入。

 ポチッとな。


 い、いや……別に私が食べたいからじゃあないよ?

 ご褒美するって言ったから、高いA5の肉を買ったわけであって、決して私の食欲が暴走したわけじゃあないよ?

 ほんとだよ?


 私はテーブルの上にホットプレートを設置する。

 牛脂を塗り、温まったところで、分厚い霜降り肉を投入。


 ジュウウウウウウウウウウ……!


 鉄板の上で、霜降りのA5ランク和牛が踊っている。

 脂が溶け出し、焦げた醤油の香ばしい匂いが、暴力的なまでに鼻腔を蹂躙する。


 これはテロだ。

 飯テロだ。


『美味! 美味です! このとろける脂、最高に美味ー!』

「にく! にくおいちぃね!」


 テンコとそーちゃんが、ハフハフと言いながら肉を頬張っている。

 その幸せそうな顔を見ていると、私の決意が揺らぐ。


 いや、だめだ。

 私はさっき、自分の腹の肉という現実リアルを知ってしまった。

 ここで食えば、さらなる脂肪(贅肉)という名の鎧をまとうことになる。


 私は食べない。

 絶対にだ。

 これは神獣たちへの労いであり、私は焼く係に徹するのだ。


 ……。

 …………。


 ……あ、この焼けてるカルビ、ちょっと焦げ目がついて美味しそう。

 いやいや、ダメだって。


 でもさ、毒見は必要じゃない?

 ほら、A5ランクって脂っこいから、胃もたれしないかチェックしないと。

 一口だけ。

 味見だけだから。

 ノーカンノーカン。


「……あむ」


 パクッ。


 じゅわぁ……。

 口の中に広がる、甘美な脂の奔流。

 噛まなくても解けるような柔らかさ。

 そして濃厚な肉の旨味。


 ……。


「すいません、白米ください。大盛りで」


 無理だった。

 即落ちだった。

 ダイエットは明日から。

 それが私のジャスティス。


「……召喚者殿……」


 ラディアスさんが、呆れたような、それでいて羨ましそうな目で私を見ていた。


「ちゃ、ちゃうねん……」

「……何も言ってないが」

「いや、ちゃうんですって。違うんですって。ほんとこれは……ちょっと……違うんですってば」

「何が違うというのだ……。暴飲暴食は、体に悪いぞ」


 ぐぬぬぬぅ……。

 せ、正論ぅう……。

 私、この世で一番、正論パンチが嫌いなのよぉ!


 Q.このままじゃ、私だけが太ってしまいます。ならば、どうしますか?


「ほら、ラディアスさん。このロース、いい焼き加減ですよ」


 A.周りの人たちも太らせ、相対的に私が痩身ってことにします。


 私はタレをたっぷりとつけた肉を、ラディアスさんの口元に差し出す。


「い、いらん! 私は屈しないぞ! 軍務中だ!」

「いいからいいから。毒見だと思って」

「毒見……?」

「そう。これ、本当に美味しいか、第三者の客観的な意見が必要なんです」


 強引な理屈で、肉を押し付ける。

 鼻先をくすぐる、極上の香り。

 ラディアスさんの喉が、ゴクリと鳴った。


「……毒見ならば、仕方あるまい。任務の一環として、判定してやる」


 ラディアスさんが、意を決して肉を口に含む。

 モグモグ……。


 カッ!


 ラディアスさんの目が、限界まで見開かれた。


「う……美味いぃいいいいいいいいいいいいいいいい!」


 絶叫。

 車内に響き渡る、喜びの声。


「なんだこれは! 肉か!? 本当に肉なのか!? 私の知っている肉は、もっと筋張って、硬くて、獣臭いものだぞ!? これは……まるで雲のように柔らかいではないか!」


 感動のあまり、ラディアスさんの目から涙がこぼれ落ちている。

 まあ、異世界の保存食と比べたら、現代日本のブランド牛なんてオーパーツみたいなもんだろう。


「た、隊長……!」

「我々も……毒見を志願します!」


 部下たちが、血走った目で手を挙げた。

 陥落である。


「よし、みんな食え食えー! 今日は無礼講じゃー!」

「「「うおおおおおおおおおおおおおお!」」」


 くっくっく……我が策にまんまと嵌まりましたねー(エア眼鏡クイッ)。

 これで共犯者だ。太る時は一緒だぞ、お前ら。


 こうして、車内は焼肉パーティー会場と化した。

 地獄の腐海のど真ん中で、焼肉の煙を充満させるキャンピングカー。

 シュールすぎる。


 だが、私たちは一つ、忘れていた。

 肉を焼けば煙が出る。

 煙が出れば、換気扇を回す。


 ブォーーー……。


 天井の換気扇が、車内の空気を外へと排出している。

 つまり。

 「極上ステーキの香り」と「神獣の濃密な魔力」を含んだ美味しそうな煙が、換気扇を通じて、外の世界へと盛大にばら撒かれているということに。


 ……。


 ラディアスさんが、ふと箸を止めた。


「……待て」

「どしたんですか? まだ肉ありますよ?」

「違う。……何か、聞こえないか?」


 ラディアスさんの表情が、軍人のそれに変わる。

 耳を澄ます。


 ドォンッ!


 突如、車体が大きく揺れた。


「きゃっ!?」

「敵襲!?」


 みんなが慌てて窓の外を見る。

 そこには……。


「……ニク……」


 窓ガラスに張り付く、人型の影があった。


 それは、ただの魔蟲ではなかった。

 人間と同じくらいのサイズ。

 しかし、全身を漆黒の外骨格インセクト・アーマーで覆い、背中には半透明の羽根、腕には鋭利な鎌を備えている。

 巨大な複眼が、ギョロリと車内を覗き込んでいた。


 まるで、日曜朝の特撮ヒーロー番組に出てくる、悪の幹部怪人だ。


「……ニク……ヨコセ……」


 喋った!?


「うわっ、なんか変なの来た! 仮面●イダーの敵役!?」

「総員戦闘配置! あれは魔蟲ではない……!」


 ラディアスさんが、顔色を変えて叫ぶ。


「進化した上位種、魔蟲族(インセクト・ロード)だ! 知能を持ち、連携して狩りを行う、この森の真の支配者だぞ!」


 どうやら、A5ランクの香りに釣られて、とんでもないのが来ちゃったみたいです。


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― 新着の感想 ―
主人公、動かないから余計太るのでは?まあ食べても太らない体質なのかもしれないが
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