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捨てられ聖女は万能チート【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる  作者: 茨木野


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74.ウォッシャー液で、魔物の血を浄化!


 魔物ぶっ殺し光線(ハイ・ビーム)の光が収束する。

 そこには、えぐれた地面と、焦げ臭い空気だけが残されていた。

 巨大なダンゴムシの残骸どころか、塵一つ残っていない。

 完全なる、消滅だ。


「なんてことだ……あれだけの威力の砲撃を受けたのに、周囲にまるで影響がないなんて……」


 ラディアス大佐が、窓ガラスにへばりついて、信じられないものを見るような目をしている。

 普通、これほどの火力があれば、余波で周囲の森ごと吹き飛びそうなものだ。

 しかし、被害は「光の通り道」だけ。

 ピンポイントすぎる破壊力に、戦慄しているようだ。


「砲撃っつーか、スキル攻撃なんだけどね」

「一体……一体さっきのはなんだったんだ?」

「だから言ったじゃん。魔物ぶっ殺し光線だよ」

「だからなんなのだっ、魔物ぶっ殺し光線って!?」

「魔物ぶっ殺し光線は、魔物ぶっ殺し光線としか……」


 それ以上のなんだって言うんだろうか……?

 魔物をぶっ殺す光線だよ。名前の通りじゃん。


「いいか、召喚者殿。魔蟲の外殻は、みな神威鉄オリハルコン並、それ以上の硬度を持つのだ」

「ほーん……」

「そんな硬度で、凄まじい質量で、体当たりしてくる。それがどれだけの威力かはわかるだろう?」

「まあそれはね」


 なにせさっきのあれ、ガソリンをかなり消費しないと防げないほどの威力だったもんね。

 一撃で1メモリ持ってかれたし。


「かつてあのダンゴムシ魔蟲が、帝都を攻めてきたことがある。その時は、我が帝都が誇る城壁を、紙のように貫いた。それほどの威力だったのだ」

「へーん……」


 そうだったんだ。

 それは怖いね。


「さすキャン、めっちゃ凄いじゃんそれを防ぐなんてさ~」


 ぷっぷのぷ~♪


【(///_///)】


 テレテルゥ。カワイイィ~。


「そんな強敵を……あなたは一瞬で葬り去ったのだ。これが……どれだけ異常なことか……ご理解いただけたか?」

「まあ、魔蟲がやばい強くて固くて、でもそれを葬り去ったキャンピーのぶっ殺し光線、やばすぎってことだよね?」

「語彙力……」

「え?」

「あ、いえ」


 い、今なんか……聞き捨てならないことを、言われたような……!?


「今、語彙力が貧相っていった?」


 思わず、前のめりになる私!

 いやだって、そこはさ、聞き逃せないよ!?


「ま、まあその……お年の割に語彙力が貧相だなと……」


 ガーン!

 頭上からタライが落ちてきたような衝撃。


 お、お年の割に……。

 貧相……。

 ……。


 私は膝を抱えて、運転席で丸くなる。

 さんざん、テンコの食レポを「語彙力がない」と馬鹿にしていたブーメランが、音速で突き刺さった。

 しかも、赤の他人である軍人さんに指摘されるなんて……。

 羞恥心で死にそう。


「テンコのこと言えないじゃん……」


 はずぅ~い……。穴があったら入りたい。


「しかしとんでもない兵器ですね、キャンピーは」


 兵器って言ったぞこの人。


「兵器ちゃいますよ。キャンピーです。可愛いカーですよ」


【(ノ∀`*)】


 カーナビには、いやん、と頬を押さえるような可愛い顔文字。


「いや、もう兵器だろう……。あんなヤバい敵を一撃で葬り去れるくらいの、攻撃が放てるのだから」

「いやいや……可愛い移動式要塞さんっすよ」

「可愛いと要塞って同居するのか……」


 まあ、なんにせよ外敵は葬り去れた。

 それに、魔蟲も倒せるってことが証明できて、一安心だ。

 これで、キャンピーでは手も足も出ないってことだったら、逃げしかできないってことが判明したところだったからね。

 逃げだけでなく、立ち向かうって選択ができる。

 これなら、探索が楽にできそう。


『くさいです……』


 と、テンコが唐突に鼻をつまんで言う。


「どったの?」

『キャンピーの車体に、あの魔蟲の血がこびりついています。それが匂ってます』


 窓閉めてるからか、私には分からないが……。

 しかし、キャンピーが汚れてるのは、いかんともしがたいな。


 ……ん?

 なんで車体汚れてるんだろう。

 いや、魔蟲倒したから、その返り血ってことだろうけど。

 でもキャンピーには結界が張ってあるはず……。


 あれ? もしかして、ビームと結界って、同時発動できない?

 いやそっか、そうだよね。

 結界張ったままで、内側から攻撃なんてできないだろうし……。

 攻撃の一瞬だけ、結界を解除してたってことか。


 あれ、これって結構な隙じゃない?

 気を付けよ……。攻撃する時は、被弾覚悟ってことだ。


 まあ、なんにせよ、汚れちまった悲しみ、もといキャンピーを洗わないとね。

 いつまでも、ばっちいまんまは良くないし。

 それに匂いが中に入ってきたら、まずいもんね。


「てことで、浄化よろしゃす、キャンピー」

「待ってくれ召喚者殿。浄化は、不可能だ」


 ラディアスさんが血相を変えて止める。


「どゆこと?」

「魔蟲の血は猛毒だ。鉄すら溶かす強酸性の液体なのだぞ。それを浄化するには、天導教会の聖女が、数日かけて祝福した聖水を使って、少しずつ拭わないと……」

「いやいや、大丈夫っすよ。ね、キャンピー? ウォッシャー液で、浄化!」

「は?」


 私は、ハンドルのレバーを手前に引く。

 

 ウィイイイイイン……!

 ワイパーが、自動で開いていく。


 そして、ボンネットの噴射口から……。


 ブシャアアアアアアアアアアアアアアアアア!


 久しぶりに登場、浄化ウォッシャー液。

 それが、勢いよくフロントガラスに吹き付けられる。


 ジュワワワワワワワッ!


 液体がかかった瞬間、こびりついていたドス黒い汚れが、白煙を上げて消滅していく。

 ワイパーが左右に動き、残った汚れを拭い去る。

 一往復、二往復。

 それだけで、フロントガラスは新車のようにピッカピカになった。


 さらに、ワイパーによって弾き飛ばされたしぶきが、周囲の地面に降り注ぐ。

 すると、ヘドロのように腐っていた地面が、見る見るうちに浄化され、一瞬にして緑の草花が芽吹き始めたではないか。


『ふむ、匂いが取れましたね』

「なん……だとぉお……!!!!!!!」


 まーたラディアスさんがブリーチってる(?)。


「そんな馬鹿な!? 貴重な聖水でないと、落ちない血なのだぞ!? 一体どうやって!?」

「ウォッシャー液で。ほら、ガラスの汚れ拭うときに使うあれで」

「それで血が拭えるわけないだろうがぁ……!」


 拭えちゃうんだよなぁ、これが。

 しかも、周囲の環境まで浄化しちゃってるし。

 これがキャンピー印のウォッシャー液の威力よ。


「ああ……アタマが、アタマが……おかしくなりそうだ……」

「ドンマイ」


 ラディアスさんは、こめかみを押さえてフラフラしている。

 度重なる常識崩壊に、脳の処理が追いついていないようだ。

 目は虚ろで、口元からは乾いた笑いが漏れている。

 完全にキャパオーバーである。


「誰のせいだとっ!」

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