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捨てられ聖女は万能チート【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる  作者: 茨木野


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72.キャンピングカーに、新たなるチカラ! 反重力機構!



 神樹を治すため、軍人たちを連れて、妖精郷の森へとやってきた。


 見上げるほどの大樹が奥まで広がっている。

 空気が澱んでいる、と目で見てわかるくらい、紫色の瘴気が充満していた。

 普通の人間が立ち入れば、即座に死亡するのは、さっきラディアスさんたちが身をもって証明した通りだ。


 また……。


『魔物の声がうるさいですね』


 狐耳をピクピク動かしながら、テンコが私に危険を教えてくれる。

 ラディアスさんが神妙な顔で頷く。


「ここには、魔蟲と呼ばれる魔物がいる」

「まちゅー?」

「森に適応し、巨大進化を遂げた、恐るべき虫たちのことだ」

「ほぉん……」

「……恐れないのだな」

「うん、ぜーんぜん。うちには可愛くて頼りになる子がいるからさ」


 無論、キャンピーのことである。


【(*^O^*)】


 カーナビにキャンピーの満面の笑みが映し出される。


『ふふーん、まあ、妾は頼りになりますからねっ』


 ……あー、テンコさん、自分のことだと思ってる様子。

 なんか……ごめん。


『む! なんですかその顔はっ』

「なんかすんません」

『なぜ謝るのですかっ。……もしかして可愛くて頼りになる子というのは、キャンピーのことなのか?』

「あー……まあいいじゃん、どうでも」


 ここでYesって答えることは、私にはできんよ。

 なんだかんだ言って、この子とはそこそこ長い付き合いなのだ。

 この子に残酷な真実を告げることは、できねーぜ。


『くぅ~……ん。確かにキャンピーは、可愛くて頼りになるけども。妾だって、妾だって、頼りになるでしょ? ねえ、そう言ってください。言わないと……』

「言わないと?」

『馳走を腹一杯食べてあげないんですからね!』


 ……ぶっちゃけそうして欲しい気持ちがあった。

 食費浮くし。


『ふん! もう人の子なんて知りませんっ。もう助けてあげないんだからね!』

「あーあー、ごめんってば」

『ふん!』


 あーあー、拗ねちゃった……ったく……。

 テンコはそっぽを向き、ふさふさの尻尾で自分の体を隠して丸まってしまった。完全なる拒絶のポーズだ。


『まぁま、てんこちゃ、なんでおこなの?』

「まあ、色々あんのよ、女の子には」

『おんにゃのこの、ひ?』

「そーちゃん、変な言葉覚えないの」


 このドラゴンにテレビを見せるのは良くないね……。

 教育テレビだけ見せよう。

 払ってないけど、受信料(脱法聖女)。


「話戻すけど、まあ魔蟲がいるのはわかったよ。でもキャンピーの結界があるし、大丈夫でしょ」

「確かに……。だが、更に問題がある」


 と、ラディアスさんが、フロントガラス越しに、外を指さす。


 そこには、絶望的な悪路が広がっていた。

 地面は強酸性の瘴気によって溶かされ、ドロドロの沼のようになっている。

 紫色の泡がポコポコと湧き上がり、落ちていた太い枝が、ジュワリと音を立てて沈んでいくのが見えた。

 底なし沼か、あるいは溶解液のプールか。

 どちらにせよ、車が走れる環境ではない。


「べちょべちょだ……こんなんじゃ車走るのむずそう」


 あんな泥濘ぬかるみに突っ込めば、タイヤが足を取られてスタックするのは目に見えている。

 最悪、タイヤごと溶けて沈むかもしれない。

 いやぁー、どーすっかなー。


 タイヤチェーンでも巻くか……?

 ネットで購入して……いや、待てよ。


「こういうときこそ、CPの出番っしょ」


 最近あんま使ってない、設定を持ち出してみる。

 別に忘れた訳じゃあないよ、ほんとだよ。

 いろんな作品を同時並行で走らせてると、設定を忘れることが多いんだよねなんて、思ってないよ?

 ほんとだよ?


「CP……とは?」

「キャンピングポイント」

「????????」


 ラディアスさんの頭上に大量のハテナが浮かぶ。


「ポイントを使うことで、我がキャンピーは新たなる力を手に入れるの」

「何を言ってるのかさっぱりだぞ! 完成したカーに、後付けで新たなる力を付与できるというのか? 召喚者殿は付与術士なのか?」

「いや、違うけど」

「じゃあどういう理屈で……」

「あーあー、理屈とかどーでもいいじゃん。ここ、ファンタジー世界っすよ? ファンタジーパワーで、なんかこー、ぐわーって強くなる。それでいいじゃん」

「なんだそれは! 適当すぎるぞ! そんなので納得できるのか!?」

「無論」


 少なくとも、私は。

 読者はどうかしらんけども。


「それにCPとはなんだっ?」

「それについては私にもわからん」


 なんだキャンピングポイントって?

 キャンプしたら貯まる謎のポイントだよ。


「そんなわけわからないポイントで、わけわからん強化ができることに、何の疑問も湧かないのかっ?」

「そーゆー作風なんで」

「なんだ作風って!?」

「生き様?」


 さくっと強化しちゃいましょうか。

 私はステータス画面を開く。

 たくさんのスキルが並んでいる中から……。


「お、これ良さそうかも。【反重力機構】」


 てか、ポイントけっこー貯まっていた。

 普通に三桁万ポイントあった。

 どうやら、ここまでの旅路でガッツリ貯まっていたらしい。

 わー、おっとくー。


「はんじゅーりょく、きこー? なんだそれは?」

「まあ、反重力を発生させるんじゃあないの?」

「重力に逆らうだと!? 飛行魔法の最上位術式だぞ!?」

「今説明したじゃん……購入!」


 ポチー!


 ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!

 車体が小刻みに震える。

 グンッ!

 少しの浮遊感、しかしすぐに収まる。


「どうなったんこれ……?」


 私は窓から外の様子を見る。

 ううん!?


 車体の横から、タイヤがにょきっと生えてる。

 いや、違う。

 タイヤが、九十度回転して、横向きになってる!?

 ホイールの内側から、青白い光が噴射され、地面を焼き焦がしているではないか。


~~~~~

反重力機構

→タイヤを変形させ、反重力場を発生させることで、あらゆる地形を無視して浮遊移動が可能となる。水上、沼地、雪道、なんでもござれ。

~~~~~


「まじか……そんなことできるなんて……」

「宙に浮く……だと……!? 馬鹿な、こんな質量の鉄の塊が、浮くわけがない!」


 ラディアスさんが窓にへばりついて絶叫する。


「いやでも、浮いてますし」

「だからおかしいと言っているのだっ! どうなっているのだ、このカーはぁ……!」

「私にも……わからん! が、便利! よし! れっつらごー! キャンピー!」


 スゥウー……。

 滑るように、キャンピーが走り出す。

 あのドロドロの沼の上を、車輪の跡一つつけることなく。


 まるでそう、かの有名な、未来へ帰るSFタイムマシーン映画のごとく!

【作者からお願いがあります】


少しでも、

「面白い!」

「続きが気になる!」

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