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捨てられ聖女は万能チート【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる  作者: 茨木野


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71.妖精郷の毒は、キャンピングカーには通用しないようですねえ!



 妖精郷アルフヘイムに到着した。

 私のミッションは、この森にあるという、神樹の再生をお手伝いすること。


 ま、大丈夫でしょ。

 うちのキャンピーさん、まじぱねえからよぉ……(三下感)。


「さて、入りますか……って、なにそれ?」


 後ろを振り返ると、ラディアスさんたちが、なんか物々しい格好になっていた。

 フルフェイスのヘルメットに、全身を覆う黒いラバースーツ。

 どこぞで銀行強盗でもするのかなって思った。


「召喚者殿も、このスーツとヘルメットを身につけるがいい」


 ラディアスさんが、予備の黒ヘルメットと黒ラバースーツを渡してくる。

 うわ……。


「えー……だっさ」

「ださくとも、着るのです」

「なにゆえ?」

「妖精郷の中には、瘴気が充満しておるのです」

「それって腐った神樹から漏れてるやつなんでしょ? なんでスーツとか、用意できてるの?」


 つい最近、きらりんがやらかした割には、用意周到すぎひん?


「元より、妖精郷には高濃度の魔素で満ちており、人間が入れない場所でした。その対策用に作られた装備なんです」

「はーん、なるほど……」


 魔素ってのは、知らんけど。


「テンコ、魔素って?」

『魔力の元となる気体です。魔物や魔族は、魔素を吸い込み、体内で魔力へ変換、能力などを使います。人間の中にも魔素への耐性がある連中がいます。これを魔法使いと言います』


 山の神から教えてもらったであろう知識を、ペラペラと披露するテンコさん。


『魔法使いでない人間が、高濃度魔素のある場所へ入ると、中毒を起こしてしまいます』

「ふぅん……なるほど。その対策装備がそのクソダサスーツ一式なのね」


 グッ……とラディアスさんが唇を噛む。

 ダサい連呼されてるから?


「完全に外の悪い空気を遮断する作りとなっているのだ。デザイン性は捨てている」

「ふぅん……」

「着替えたら出てきてほしい。では……」


 言って、ラディアスさんが外に出ようとする。

 ガチャッ!

 ……開かない。


「む? 開かない、扉が開かないぞ!」

「え? まじ……?」


 私はキャンピーの出入り口に立ち、ドアノブを回そうとする。

 ロックされている。


 ブーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!


 警告音が鳴り響いた。


「キャンピー? どったの?」


 私は運転席へと移動し、カーナビを確認する。


【(>_<)】


「何その顔……」

『【危険】だそうですよ』


 心を読めるテンコが、キャンピーの言葉を代弁する。

 危険……?


「どゆこった? 魔素で満ちてるってのは聞いたよ。でもこのスーツがあれば大丈夫って言ってるけど」

『【だめ】だそうですよ』


 ……ふぅむ。

 どういうことだろう。

 対策はちゃんとできてるのに、出たら危険って……。


「そーいや、きらりんのせいで、神樹が溶けてるんでしょ? その影響が外にも及ぼされてて、そのクソダサスーツじゃ対応できないってことじゃあない?」

「我ら帝国の魔科学力をなめないでもらいたい」

「うーん……いやでも」

「大丈夫だ。帝国の魔科学は世界一なのだから」


 すっごい帝国の科学力に自信があるようだ。


「だってさ、キャンピー。出してあげて」


 ぷー……。


 悲しそうにクラクションを鳴らすと、キャンピーが扉のロックを解除した。

 ラディアスさんが、意を決して扉の外に出る。


 一歩、足を踏み出した……その時だ。


 ジュウウウウウウウウウウウウウウウ!


「ぎゃああああああああああああああああああああ!」

「「「大佐……!」」」


 ラディアスさんが、悲鳴を上げながら後ろに転げ落ちる。

 キャンピーは間髪入れずに扉を閉めた。


「一体何が……って、まじか!」


 ……大佐の右足が、完全に溶けていた。

 最強の防御性能を誇るはずのラバースーツとブーツはもとより、右足もくるぶしから下が……ない。

 断面から煙が上がり、酸鼻を極める光景だ。


「キャンピー、治癒を!」


 キャンピーには、内部の酸素濃度を上げ、治癒魔法的なアレを充満させることで、中にいる人を治癒できる機能がついているのだ。


 シュォン!

 淡い光がラディアスさんを包む。


「!? あ、足が……さ、再生……した……だと……」

「良かったね、キャンピーがいて。いなかったら、一生義足生活だったよ」


 しっかし……まじか……。


「外……やばいことになってるんだね」


 帝国が誇る、魔科学の粋を集めて作られた、外気遮断のスーツ。

 それをもってしても、高濃度に汚染された外気を防げなかったみたいだ。

 きらりんぇ……あんたとんでもないことしちゃってるよ……ったく、もー。


「助かった……礼を言う……キャンピー殿」

「まあ許しましょう。で、どうしようっか、これ」

「お手上げだ……」


 ラディアスさんがガックリと項垂れる。

 それを見た部下たちも、絶望に染まっていた。


「なんてことだ……最新鋭の対魔素防護服が、一瞬で溶かされるなんて……」

「我々は無力だ……これでは、調査どころか、一歩踏み出した瞬間に全滅する……!」

「終わりだ……帝国はもう……」


 屈強な軍人たちが、膝から崩れ落ち、頭を抱えている。

 世界の終わりみたいな顔してるけど、まあ気持ちは分かる。

 さっきの足が溶ける映像は、トラウマものだ。


「この装備では、中には入れない。車では、森に入れないし」

「入れるでしょ」

「は……? いや、外気遮断スーツを溶かすほどの瘴気なのだぞ? しかも、まだ森に入ってなくて、この濃度だ。中はより濃度が高い。カーなど、鉄屑どころかドロドロの液体になって消滅してしまう……」


「いける、キャンピー?」


【(^_^)b】


 カーナビに映る、キャンピーの自信満々の表情サムズアップ


「いけるね。ごー!」


 ぷっぷー!

 ブロォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


 エンジンが唸りを上げ、キャンピーが加速する。


「ちょ、やめろ! 自殺行為だぞ!?」


 大佐が必死に止めようとする。だが自動運転なので、止まりはしない。

 そのまま、紫色の霧が立ちこめる巨大樹の森へと、車体が突っ込んでいく。


「ああ……終わった……」


 ギュッと目を瞑る大佐。

 死を覚悟した顔だ。


 しかし……。

 数秒経っても、車体が溶ける音も、悲鳴も聞こえない。


「どう?」

「なん……だと……!」


 出た出た。

 ほんとジャ●プに出れるよあんた……。


「馬鹿な! カーが溶けていない! 窓ガラス一枚隔てた向こうは死の世界だぞ!? どうなっているのだ!」

「うちのキャンピーさんの、結界をなめんじゃあないわよ」

「結界……だと……!」

「うん。うちの子、結界も張れるから」


 キャンピーの周囲には、うっすらと透明な膜が張られている。

 その膜に触れた紫色の霧は、ジュッ!と音を立てて弾かれていた。


「……魔科学の粋を集めた遮断スーツすら、一瞬で溶解させる濃度の魔素を受けても、平然としている……なんという……とんでもない硬度の結界だ」


 ラディアスさんは、窓の外で弾かれる霧と、無傷のボディを交互に見て、呆然と呟く。

 彼女の常識は、今日だけで何度破壊されたことだろう。


「ふふん、すごかろう、我がキャンピーを」

「ああ……すごい……見くびっていた。すまない」


【( ^o^)ノ】


 ドンマイ、と肩を叩いているポーズの絵文字を出すキャンピー。

 うーん、器のでかい女(車)。

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