69.温かいシャワーに驚愕する異世界人
んで、失禁したラディアスさんを、裸ディアスさんにして、お風呂に入れることにした。
「ふ、風呂だ……本当に、カーの中に、風呂がついている……だと……」
裸ディアスさん、もとい、ラディアスさんが、キャンピーのバスルームを見て驚愕している。
「どうなっているのだ……カーの中なのだぞ? 風呂ということは、お湯を出すということ。お湯はいったいどこから、どうやって」
「キャンピーが作ってるんでしょ。さ、ここを捻ればシャワー出るから。あとはご自由に」
「ま、待ってくれっ。本当にこのお湯大丈夫なのかっ」
「衛生的には問題ナッシング」
「心理的に抵抗があるのだがっ?」
そういうもん?
なんで引っかかるんだろう。
「ほんとまじ大丈夫ですって。ささ、きゅーっと」
ビールを勧めるかのように、私はシャワーの栓を捻るジェスチャーをする。
まだラディアスさんは疑いの眼差しを向けている。
だが……失禁状態を、このままにしたくはないのだろう。
彼女は意を決して、蛇口を捻る。
シャァアアアアアアアアアアアアア……!
勢いよく、お湯が噴き出す。
キャンピー自慢の給湯システムが唸り、適温のお湯が彼女の冷えた体を打ち、伝っていく。
湯気が、バスルームを一瞬で満たした。
「な!? あ、温かい! こんなに温かいシャワーだと!? しかも、水の威力がとんでもない!」
あれ、そんな驚くことだろうか……。
「こんなシャワー初めてだ」
「そうなん? 帝国も魔道具技術が発達してるから、シャワーくらいあるんじゃあなかった?」
「あるが、ここまでではない。水の威力もまだまだだし、安定して温度を出すことはできないのだ」
はぁん、そうなんだ。
まあ、魔道具で何でもかんでもできるわけでもないのだろう。
なんだかんだいって、機械による精密な自動制御って、こっちじゃできないみたいだしね。
そういう意味じゃ、キャンピー、帝国に完全勝利す!
脳裏に、キャンピーが両腕を挙げて、勝利者のポーズをしながら「コロンビア」って言ってるイメージが横切った。
なんだこのイメージは……。
「ほいじゃ、あとはごゆっくり~」
「あ、ああ……」
呆然としているラディアスさんを放置して、私は戻る。
すると。
リビングスペースでは、屈強な軍人さん達が、くたぁ……とリラックスしていた。
鎧を脱いだ彼らは、床暖房の魔力に完全に屈していた。
まるで日向ぼっこをする猫のように、フローリングの上に大の字になり、とろけきっている。
いかついおっさん達が、幸せそうな顔で床に転がっている図。……うん、シュールだ。
「素晴らしい……」
「外が寒いからこそ、この暖かさは病みつきになりそうだ……」
「カーがこんなに快適なの、知らなかった……」
カーがっていうか、うちのキャンピーの乗り心地がグンバツ(死語)なんすけどね。
ふふん。
『スミコよっ』『ごはーん!』
「ああ、そういや途中だったね。はいはい」
私は皿の上に、作ったばかりの焼きそばを乗っける。
ほわ……とソースの焦げた良い香りが辺りを包み込み……。
ぐぅううう……。
「あー……」
テンコの腹の音……ではない。
軍人さんたちのものだ。
彼らが、床から顔を上げ、ゾンビのようにこちらを見ている。その目は「肉……」ではなく「ソース……」と言っていた。
まあ、彼らを食わせる義理はないんだけど、さすがに腹減ってる人の隣で、自分たちだけ食事するのは気が引ける。
「よろしければ、食べます?」
『スミコよ! 妾たちの分が減るのは、許容できませんよ!』
せっませまいね、君の心……。
テンコが私の前に立ちふさがり、しっぽをパタパタさせて抗議する。
『そーちゃは……みんなでご飯が良いと思うます!』
「あら~♡ 良い子だよ~♡ そーちゃんはいいこだよぉ~♡」
どっかのでっかい狐ベイビーと違って、そーちゃんは心が海のように広いようだ。
「たくさん作ってんだから、少しぐらい分けてあげてもいいでしょ」
『しかし妾の分が減るのはっ』
あーあーもー。譲らない気だなーもー。
このまま押し問答繰り広げても、進展しないだろうから。
「そんときゃ、新しいの作ってあげるから」
『なら……よし!』
やれやれまったく我が儘なんだからもう……。
私は大量に作った焼きそばを、使い捨て容器に小分けする。
それを、床でとろけている軍人さん達に配って歩く。
「はい、どうぞ。焼きそばです」
「か、かたじけない……!」
彼らは震える手で割り箸を受け取り、未知の料理「ヤキソバ」を口へと運んだ。
ずぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞ!
豪快な音が響く。
そして。
「う、うめえええええええええええええええ!?」
「なんだこのっ、コクのあるっ、濃厚な麺類は!」
「汁なしでこんな美味い麺、初めて食べたぞ!」
「うますぎるぅうう! この黒いタレはなんだっ! 麻薬か!?」
軍人さんたちが、目を見開いて絶叫した。
がつがつ、ずぞぞぞ、むしゃむしゃ!
一心不乱に麺をすすり、キャベツを噛みしめ、豚肉の旨味に打ち震えている。
濃厚なソース味は、素朴な味付けが多い異世界人には、衝撃的だったらしい。
……さて。
うちのでかい狐さんはというと。
ずずう……と上品に麺をすすり、満足げに目を細めて言う。
『美味』
はい、いつも通りっすねー。
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