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捨てられ聖女は万能チート【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる  作者: 茨木野


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68.焼きそばを作るぞ!


『人の子よ』

「飯ね」

『ふふん、わかってるじゃあないですか』


 そらね。

 どんくらい長く付き合ってるって思ってるのよ。


 ……どれくらいかな?

 わっかんね。

 体感的には、二ヶ月くらい経ってる気がするな。


 おや、投稿(※メタ発言:連載開始)は先月なのに、なんで二ヶ月なのかな?

 わからねえ!

 おら、なにもわからねえ!


『そーちゃね、そーちゃねっ、めぇんがいいっ。めぇん!』


 めん、めんね。

 我が家のちびっ子たちは麺類がお好きのようだ。


「あのー、軍人さんたち。私らご飯にしていい?」

「「「ご、ご飯……?」」」


 私が尋ねると、屈強な男たちが一斉に鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。

 あらら、みんななんでそんな顔してるんだろ。


「召喚者殿」


 ラディアスさんが、こめかみをピクピクさせながら声をかけてくる。

 やっぱ困惑してる?


「今……かなり切羽詰まった状況だ。できれば馬車は止めないでほしいのだが……」


 ああ、なるほど。

 この人ら、飯にするから、いったん鉄馬車キャンピングカーを路肩に停めて、キャンプファイヤーでも始めると思ってるわけね。


「大丈夫、運転しながら食事作るから」

「は????????????????????????」


 ラディアスさんの頭の上には、視界を埋め尽くすほどの「?」が見えた気がした。


「な、何を言ってるのだ……?」

「いや、だからほら、運転はキャンピーに任せるって言ったじゃんさっき」

「……まあ、突っ込みどころ満載で、飲み込むのが大変だが……百歩譲って飲み込んだとしよう」


 そんな大変かなぁ。

 大変かも。

 どうだろう。

 キャンピーとキャンピングカー、それをただ分けて考えればいいと思う。


 正直、私この作品、タイトル詐欺だと思ってる。


 一人旅してないところも、苦しいし。

 それ以上に、キャンピングカーが、キャンピングカー(普通)じゃあないのだ。


 正確に言えば、「キャンピングカーの形をしたチート美少女(概念)」と一緒に旅してる、だし。


 でもキャンピングカーの形をしてるから、キャンピングカーで一人旅してるよねって言いたい私もいる!

 矛盾!


「百歩譲って自動運転はいい。だが、魔動カーの中で、料理? そんなことできるわけないだろ」

「できますが?」

「火も水もないんだが?」

「ありますが?」


 私は、きょとんとするラディアスさんを手招きして、キッチンスペースへ案内する。


「ほいコンロ」


 カチッ、ボッ。

 青い炎が揺らめく。


「ぎゃああ!!」

「ほい蛇口くいー」


 レバーを上げると、透明な水が、ジャー。


「ぎゃあああ!!」


 ぎゃあって。

 そんな悲鳴をあげなくてもええやん。

 キャンピー悲しんじゃうよ。


【(´_ゝ`)】


 あ、カーナビ見たらドヤ顔してる。

 悲しんでない。

 異世界人相手に、文明の差を見せつけて、ドヤってるっ!


 意外と肝の太い女(車)。

 フッ……おもしれー女。


『ちょっと人の子よ。いつまで待たせるのです』


 第二おもしれー女(狐)が、空腹を訴えてきた。

 放置すると五月蠅いので、さくっと料理を作りたいところ。

 寝起きのアラーム並みに、このあと料理を作らないと、ちそーちそーって言ってくるよ?

 しかも、可愛い赤ちゃんそーちゃんとの、二重奏で。


「そんな馬鹿な……カーの中で火が、水が使えるだと? いったいどうやって!?」

「魔素? 的な物を吸って、火を付けたり、水作ったりしてるみたいっすよ」


 私は冷蔵庫の中から、袋麺と、キャベツ、ニンジンを取り出す。

 今日使う物は事前に出しておいたのであーる。今日は焼きそばだ。


「それはつまり魔動カー……魔道具が自分の意思で、魔法を使ってるのと同義だぞ……? 意味がわかってるのか?」

「いんやさっぱり。どうでもいいし」

「どうでもって……オカシイとは思わなかったのか? 魔法を使っているんだぞ? 道具がだぞ?」


 キャベツとんとんっと。

 ニンジン皮むきー。

 中華鍋に投入、じゅわー!


「ちょっと!?」

「あーはいはい。たしかに最初はね、思ったけど。ほら、魔道具って、魔法使うじゃん? 別におかしくないでしょ? 同じでしょ」

「似て非なるものだ! 魔道具は、職人が術式を刻むことで、魔法を発動している! 一方、このキャンピングカーは、自らの意思で魔法を使っている!」

「おなじやん」

「全然違うっ! 魔道具は、結局『職人』……『使い手』が必要となる。こっちのキャンピングカーは、道具が自分の手で魔法を使っているっ! それは生物だ!」


 ……なんか、ちょろっとムカッとしてきてる。

 道具ぅ~? 使い手ぇ~?


 私は包丁を持つ手を止め、ゆっくりと振り返った。


「悪いけど、ラディアスさん。うちのキャンピー、道具じゃあないんで。仲間なんで。相棒なんで。物扱いしないでくれないですかね」


「あ、そ、そうか……すまない……っ!?」


 私の言葉を聞いた瞬間、ラディアスさんの顔色がサァーッと真っ青になった。

 ガタガタと膝を震わせ、今にも倒れそうだ。


『気圧されてますよ』


 とテンコが呆れたように言う。

 はぁん? 気圧される?


「なんでよ」

『人の子はレベル五桁でしょうが』


 そーいやそーだったね……。

 え、なに?

 神獣(腹ぺこ)に、威嚇されてるのと、同じ現象が起きてるってこと?

 ちょっと不機嫌になっただけで、一般人には致死量のプレッシャーがかかっちゃったのか。


 ガクガク……とラディアスさん、体を震わせている……。

 そして、その場にペタンっ、と女の子座りでへたり込んでしまった。


 ジョォオ……。


「まじぃ~?」

『コノ女、失禁してますよ。なんてことか。妾やそーちゃんは、ちゃんとトイレで用を足すというのに。まったく獣以下ですね』


 あー……まあしょうがない。

 怖かったんだもんね。漏らすのはしょうがない。不可抗力だ。

 ……いや、軍人のプライド的に、これは致命傷なのでは?


 ラディアスさんは真っ赤な顔をして、涙目で震えている。


「風呂あるんで、入ってきてください」

「カーに風呂が……ある……だと!?」

「うん。あります。キャンピングカーなんで」

「オカシイ……ぐすっ……この車、オカシイよぉ……」


 帝国の女傑、ここに陥落せり。

 ……ごめんて。

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