66.キャンピングカーに驚きを隠せない軍人たち
軍人を連れて妖精郷へ行くことになった。
おそらくは、あの「きらりん」とかいう偽聖女の尻拭いなんだよなー。
めんどーい。
めんどくさすぎて、麺になるわね(?) なんじゃそら。
「ここはなんだ……?」「どこなんだ……?」「本当に鉄馬車の中なのか……?」
拡張されたリビングスペースでは、屈強な帝国軍人たちが、まるで迷子の子犬のようにきょろきょろと周囲を見渡している。
無理もない。彼らは現地のおっさん達だ。
そんな彼らが、ダウンライトの柔らかな光に照らされた、モダンで清潔なフローリングの上に立っているのだ。
一人が恐る恐る、高級レザーのソファに指先で触れる。
「や、柔らかい……! なんだこの革は……!」
別の一人は、壁に設置された液晶テレビ(電源オフで黒い板に見える)を、魔道具か何かだと思って警戒して凝視している。
床暖房の温かさに、「床が……発熱している!? 敵襲か!?」と剣に手をかける者までいる始末だ。
そらそーだ。
彼らは異世界人。現実世界の、しかも最新設備の整ったこの空間に放り込まれたら、びっくりしちゃうでしょうよ。
「とりあえず、妖精郷まではまったりしててください」
「そうはいかない」
私の適当な提案を、ラディアスさんが真面目な顔で却下する。
「ここ、サラディアスから妖精郷までは、帝国式魔動カーでも丸一日はかかる」
「まどーかー?」
なんだそら? 魔法少女的なサムシング?
「魔法で動く馬車だ。風魔法で車輪を回すので、馬を必要としない」
まじか。
車じゃんそれ。
へー、帝国ってすごいな。魔法の車を独自開発してるなんて、ネログーマよりだいぶ進んでる。
「妖精郷はここから北西に向かったところにある。魔動カーで一日。だが、道中には当然ながら魔物が出る。その戦闘があるから、さらに時間が掛かる」
にゃるほどー。
「大丈夫、もうちょっち早く到着するから」
「無茶は……」
「しないしない。大丈夫、またーりしててくださいや」
「は、はあ……」
困惑する大佐を尻目に、私は運転席に座る。
『人の子よ』
「うぉびっくりした!」
足下を見れば、運転席のペダル付近に、テンコがででーんと寝そべっていた!
あれか、金持ちの家にあるトラの絨毯的なそれか?
びびるわ!
「どいてよ、アクセル踏めないじゃん」
『自動運転できるでしょうが』
適応してるな、テンコ。
いやたしかにそうだけど、できるけども。
「じゃま」
『いやです』
「なんだよまじで……。邪魔だからせめて助手席にね」
私が指さすと、テンコは渋々といった様子で身を起こし、助手席に、もすっと座る。
あれ? 普通に座れてる。
言うまでもないけど、神獣モードのテンコって私よりかなりでかい。
そんなデカ狐が、人間サイズの助手席にすっぽり収まるわけがない。
見やると、助手席の椅子が消えて、フラットなクッションスペースに変化していた。
「もしかして、キャンピー?」
空間をいじって、テンコが座りやすくしてるとか?
【b^ー°)】
OH~。キャンピー。
「君はなんて有能なんだ。私の欲しいものを、言わなくても事前に用意してくれるなんて。優秀なキャンピングカーだよぅ」
【(/ω\*)】
いやぁ、相棒が優秀でよかった。
『人の子よ、何をしてるのです。さっさと出発しなさい』
「わかってるって。って、そーちゃんは?」
『ここよー!』
ぴょこっ。
おお、テンコの頭の上の毛並みに埋もれていた。
ほんと頭の上好きねー。
「君ら、後ろの広いところに居ていいんだけど?」
『妾がここにいては不都合だと?』
「いやそうじゃあないけどさ……」
なんであんな広いリビングじゃなくて、こっちにいるんだろう。
『そーちゃ、しらないひと、こわーい、きらーい』
ああ、人見知りしてるわけね。
って、まさかテンコも??
『なんですか?』
そういえばこの子もまだまだ幼い子どもだったっけ。
知らないおじさんがいっぱいいて怖いから、私のそばにいたかったのか。
ふふ、かわいい。
『ニヤニヤしてないで前を見て運転しなさい』
「はいはい。キャンピー、目標……妖精郷! れっつごー!」
ぷっぷ~♪
軽快なクラクションと共に、キャンピーが滑るように走り出す。
ブロロロロロオォ。
静かな、しかし力強いエンジン音が響き、景色が後方へと流れ去っていく。
最初はゆっくり、そして徐々に加速。
あっという間に、異世界の舗装されていない街道を、滑るように疾走し始めた。
「な!? なんだと!?」
「す、すげえ……!」
「なんてスピードで動いてるんだっ!?」
後部座席の方から、軍人達のどよめきが聞こえてくる。
「速い……速すぎる! これほどの速度を出しているのに、馬車の揺れが一切ないだと!?」
彼らは窓の外を流れる景色と、手元の微動だにしないテーブルを交互に見て、口をあんぐりと開けている。
「し、信じられない……! 最新鋭の魔動カーよりも速い……だと……!」
ラディアスさんが愕然とつぶやく。
やっぱりあなた、バン! カイ! とか言いそうなリアクションだよね。
てか速いってさ。
キャンピー、いま時速50kmくらいでしか走ってないけども?
いやでも、そうか。
こっちでこれくらいは、ちょー速いのか。
移動の基本は馬とか馬車だもんね。
しかも、こんな家みたいな巨体が、こんなスピードで、しかも無振動で走ってるんだから、そりゃみんな驚いて腰抜かすわけか。
「! 召喚者殿! 魔物です!」
窓から、ラディアスさんが外を見て叫ぶ。
「岩鳥だ! こちらに突っ込んでくる!」
前方から飛来したのは、巨大な鳥の魔物だった。
その名の通り、全身がゴツゴツとした灰色の岩のような皮膚と羽に覆われている。
鋭いくちばしは槍のよう。あれにぶつかれば、普通の馬車なら木っ端微塵だろう。
岩鳥が、獲物を見つけた猛禽類のごとく、凄い速さで突っ込んでくる。
だが!
私は、別に何もしない。
キャンピーも、ブレーキすら踏まない。
ドゴォオオオオオオオオン!
激しい衝突音が響く。
しかし、キャンピーは揺れもしない。
「なん……だとぉ……!」
ラディアスさんが、カッと目を見開き、額に冷や汗を垂らして絶叫する。
その視線の先では――。
あわれ、岩鳥が、粉々に砕け散っていた。
キャンピーの『超硬化ボディ』&『結界』の前では、岩なんて豆腐みたいなもんなのだ。
フロントガラスには、ヒビ一つ入っていない。
「ば、馬鹿な……岩鳥の特攻を受けて無傷どころか、向こうが……勝手に自爆した……だと!?」
戦慄するラディアスさん。
「大丈夫っすよ、うちのキャンピー、まじ頑丈なんで。ね?」
【(´_ゝ`)】
カーナビには、どこか誇らしげで、ドヤ顔の絵文字が表示されていた。
かわ~~。
ラディアスさんは、砕け散った魔物の残骸と、涼しい顔で走るキャンピーを見て、悔しげに拳を握りしめた。
「……一ヶ月前、この御方がいれば……この御方が来ていれば……くっ!」
【作者からお願いがあります】
少しでも、
「面白い!」
「続きが気になる!」
「更新がんばれ、応援してる!」
と思っていただけましたら、
広告の下↓にある【☆☆☆☆☆】をタップして、
【★★★★★】にしてくださると嬉しいです!
皆様の応援が、作品を書く最高の原動力になります!
なにとぞ、ご協力お願いします!




