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捨てられ聖女は万能チート【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる  作者: 茨木野


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62/95

62.めちゃくちゃ豪華なホテルを用意されてた



 ビー玉で大もうけだっ。やったー!

 私は懐に入った大量の金貨(引換証含む)にうっきうきで、OTK(おたく)商会を後にしようとした……。


「お待ちください、スミーさん♡」


 ……出た。猫なで声の、オタッキーさん。

 私は知ってる。こういう声を出す奴は……やばいって。私のゴーストがそう囁いている。


「な、んすかねえ……」


 私の中の警鐘がなりまくってる。でも大口の取引先だし、無視するわけにはいかない。


「今晩はどちらにお泊まりでしょうか? よろしければ……ホテルを手配しましょうか?」


「あ、なんだ……」


 ほぉ……なんか逃がしませんよ的なことを言われるのかと思った。

 宿紹介してくれるってだけみたい。疑ってごめんねじょーじ。


「どっかいいとこあります?」


「ええ。DBホテルというホテルなんですけど」


「DB」


 オラはおこったぞぉ! フリーザー! ってあれ?


「ダークノワール・ブラックシュバルツ ホテルです」


「好きだねダークノワール・ブラックシュバルツ!」


 この国の人達それ好きすぎひん……?

 黒×4ホテルって意味わかってないの? もしかして。

 クロヨンホテルって改名したほうがいいんじゃあないかって、私思っちゃうけどね。


「DBホテルとてもいいとこなんで、おすすめです」


「あ、じゃあそこ泊まります」


 他に知らないしね。ホテル。


「わたしの知り合いということであれば、【少し】お値引きさせていただます」


「まじで! あざーっす!」


「いえいえ、これからも……わがOTK(おたく)商会をどうぞ、【ごひいきに】」


 なんか「ごひいきに」ってとこ、めっちゃ力込めて言っていた気するわ。オタッキーさん。眼鏡が怪しく光ってたし。

 ま、いい人だわ。ビー玉を高く買い取ってくれるし。ホテルも用意してくれるし。


 私はオタッキーさんの元を去って、テンコたちとともに、地上へと降りてきた。


「ふっふっふーん」


【……むぅ】


 なんかさっきからだんまりのテンコが、私の肩の上で低く唸っていた。

 そーいや、エレベーター乗ったのに、今度は何も言わなかったな。


「なによ?」


【人の子よ……気をつけなさい】


「はぁ? 何に」


【男は、飢えた狼と聞きます】


「はあ~~~~? 何言っちゃってんの? 飢えた狐が……」


 ぷーぷー、と眠ってるそーちゃん。

 テンコの頭の上で、丸まって眠っている。あったかそー。

 この平和な光景のどこに狼がいるというのか。


【スミコ、人の子よ! だめですからね!】


「なにが?」


【貴方は妾のなんですからね!】


「なんなのまじで……」


 さっきからうるさいなぁ、この狐さんは……。

 狼だのなんだのって。発情期か?


 私たちは夜の帝都を歩き出した。

 帝国の夜は明るい。石畳の道には等間隔に魔導ランプが設置され、淡い光が街を照らしている。

 行き交う人々も身なりが良く、どこか余裕がある感じだ。

 さすが大国。治安も良さそうだ。


 そんな街並みを楽しみながら歩くこと数分。

 教えられた大通りに出た瞬間、私たちの足が止まった。


「ここが……DBホテル……ってまじか……」


 目の前に聳え立っていたのは、明らかに周囲の建物とは異質な存在だった。

 石造りやレンガ造りの建物が並ぶ中、そこだけ時空が歪んでいるかのような、ガラスと鉄骨の摩天楼。

 見上げる首が痛くなるほどの超高層ビルが、夜空を突き刺すように立っていたのだ。

 窓から溢れる光が、まるで宝石箱みたいにキラキラしている。

 ここだけ六本木ヒルズですか?


「いやいやいやいや……どーなってんのあれ……」


 こんな中世ファンタジー世界で、こんなタワマン、どうやって用意できてるんだよ……。

 どうやって立てたの? てゆーか、建てられるもんなの……?

 耐震構造とか大丈夫? 風吹いたらポキッといかない……?


『わー! まぁま、しゅごーい! そーちゃしってるよー、たわわんっていうんでしょー!?』


「う、うん……正確にはタワマンね……」


 マンションじゃないけども……。たわわんは別の意味になっちゃうから。


「ま、まじでここ……DBホテルなのかな……? 別のホテルって可能性もワンチャン……」


「…………」くいくい。


「キャンピー?」


「…………」すっ。


 キャンピーが指さす先には、巨大なエントランスの看板があった。

 高級感あふれる黒大理石に、金の文字が刻まれている。


『Dark Noir Black Schwarz Hotel』


「まじで……DBホテルか……ここが……」


 威圧感がすごい。

 入り口には燕尾服を着たドアマンが二人も立っているし、回転扉はピカピカに磨き上げられている。

 こんなとこ一泊うん万円とかするんじゃあなの……?


「ちょいとやめよっか……」


「…………」えー。


『えー!』


【…………】


 そーちゃんたち、露骨に落ち込んでいた……。

 う……。その目見てたら、やめるって言えないじゃーん。

 ……あとテンコはまだなんか黙ってるし。


「と、とまろっかここ」


『わーい!』「……!」わーい。


 ま、まあいいか……。たまには……ね。懐も潤ってることだしっ。

 それに【少し】割り引いてくれてるっていうしねー。


 少しってどれくらいかな。一割くらいかな。

 二割引きだったらうれしいなー。

 とか思いながら、恐る恐るDBホテルの回転扉をくぐると……。


「「「いらっしゃいませ! ようこそ、スミー様!!!!!!!!!!!」」」


 ズラァァァァァァァァァァァッ!


 ロビーに入った瞬間、視界を埋め尽くしたのは「人」だった。

 支配人らしき初老の男性を先頭に、フロント係、ベルボーイ、メイド、清掃員に至るまで、総勢50人以上の従業員が、レッドカーペットの両脇に整列していたのだ。

 そして全員が、軍隊のように綺麗なお辞儀をしている。


「……ふぁぁ?」


 なに、これ……? なにこの熱烈歓迎……?

 ここホテルだよね? 王宮とかじゃないよね?


「お待ちしておりました、スミー様! オタッキー・オーナーよりお話は伺っております!」


 支配人が揉み手をする勢いで近寄ってきた。


「当ホテル最高のVIPとして、誠心誠意、尽くさせていただきます! お荷物をお持ちします! 靴をお磨きします! 肩をお揉みしましょうか!?」


 近い近い! 顔が近い!

 媚びへつらいのレベルが限界突破してるよ!


「さ、最上階のスイートルームへご案内を……」


「えーっとえーっと、その前に、一泊いくらくらいですか……」


 こんなVIP待遇、絶対高い。怖くて泊まれない。


「タダです」


「ほ……?」


「タダです」


「へ……? た、ただ……? ノーマニー?」


「はい。本来であれば、一泊金貨100枚ですが。ですが、オタッキー様の紹介ということで、全額無料タダでございます!」


「ひゃ!?」


 金貨100枚って、一泊百万ぅうううう!?

 それが、ただぁああああああああ!?

 【少し】値引きってレベルじゃねーぞ!?


【やはりあの雄……狙ってるではありませんかっ。スミコを。狙い撃ちしてるではありませんかっ!】


 テンコの叫び声が、広すぎるロビーに虚しく響き渡った。


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