62.めちゃくちゃ豪華なホテルを用意されてた
ビー玉で大もうけだっ。やったー!
私は懐に入った大量の金貨(引換証含む)にうっきうきで、OTK商会を後にしようとした……。
「お待ちください、スミーさん♡」
……出た。猫なで声の、オタッキーさん。
私は知ってる。こういう声を出す奴は……やばいって。私のゴーストがそう囁いている。
「な、んすかねえ……」
私の中の警鐘がなりまくってる。でも大口の取引先だし、無視するわけにはいかない。
「今晩はどちらにお泊まりでしょうか? よろしければ……ホテルを手配しましょうか?」
「あ、なんだ……」
ほぉ……なんか逃がしませんよ的なことを言われるのかと思った。
宿紹介してくれるってだけみたい。疑ってごめんねじょーじ。
「どっかいいとこあります?」
「ええ。DBホテルというホテルなんですけど」
「DB」
オラはおこったぞぉ! フリーザー! ってあれ?
「ダークノワール・ブラックシュバルツ ホテルです」
「好きだねダークノワール・ブラックシュバルツ!」
この国の人達それ好きすぎひん……?
黒×4ホテルって意味わかってないの? もしかして。
クロヨンホテルって改名したほうがいいんじゃあないかって、私思っちゃうけどね。
「DBホテルとてもいいとこなんで、おすすめです」
「あ、じゃあそこ泊まります」
他に知らないしね。ホテル。
「わたしの知り合いということであれば、【少し】お値引きさせていただます」
「まじで! あざーっす!」
「いえいえ、これからも……わがOTK商会をどうぞ、【ごひいきに】」
なんか「ごひいきに」ってとこ、めっちゃ力込めて言っていた気するわ。オタッキーさん。眼鏡が怪しく光ってたし。
ま、いい人だわ。ビー玉を高く買い取ってくれるし。ホテルも用意してくれるし。
私はオタッキーさんの元を去って、テンコたちとともに、地上へと降りてきた。
「ふっふっふーん」
【……むぅ】
なんかさっきからだんまりのテンコが、私の肩の上で低く唸っていた。
そーいや、エレベーター乗ったのに、今度は何も言わなかったな。
「なによ?」
【人の子よ……気をつけなさい】
「はぁ? 何に」
【男は、飢えた狼と聞きます】
「はあ~~~~? 何言っちゃってんの? 飢えた狐が……」
ぷーぷー、と眠ってるそーちゃん。
テンコの頭の上で、丸まって眠っている。あったかそー。
この平和な光景のどこに狼がいるというのか。
【スミコ、人の子よ! だめですからね!】
「なにが?」
【貴方は妾のなんですからね!】
「なんなのまじで……」
さっきからうるさいなぁ、この狐さんは……。
狼だのなんだのって。発情期か?
私たちは夜の帝都を歩き出した。
帝国の夜は明るい。石畳の道には等間隔に魔導ランプが設置され、淡い光が街を照らしている。
行き交う人々も身なりが良く、どこか余裕がある感じだ。
さすが大国。治安も良さそうだ。
そんな街並みを楽しみながら歩くこと数分。
教えられた大通りに出た瞬間、私たちの足が止まった。
「ここが……DBホテル……ってまじか……」
目の前に聳え立っていたのは、明らかに周囲の建物とは異質な存在だった。
石造りやレンガ造りの建物が並ぶ中、そこだけ時空が歪んでいるかのような、ガラスと鉄骨の摩天楼。
見上げる首が痛くなるほどの超高層ビルが、夜空を突き刺すように立っていたのだ。
窓から溢れる光が、まるで宝石箱みたいにキラキラしている。
ここだけ六本木ヒルズですか?
「いやいやいやいや……どーなってんのあれ……」
こんな中世ファンタジー世界で、こんなタワマン、どうやって用意できてるんだよ……。
どうやって立てたの? てゆーか、建てられるもんなの……?
耐震構造とか大丈夫? 風吹いたらポキッといかない……?
『わー! まぁま、しゅごーい! そーちゃしってるよー、たわわんっていうんでしょー!?』
「う、うん……正確にはタワマンね……」
マンションじゃないけども……。たわわんは別の意味になっちゃうから。
「ま、まじでここ……DBホテルなのかな……? 別のホテルって可能性もワンチャン……」
「…………」くいくい。
「キャンピー?」
「…………」すっ。
キャンピーが指さす先には、巨大なエントランスの看板があった。
高級感あふれる黒大理石に、金の文字が刻まれている。
『Dark Noir Black Schwarz Hotel』
「まじで……DBホテルか……ここが……」
威圧感がすごい。
入り口には燕尾服を着たドアマンが二人も立っているし、回転扉はピカピカに磨き上げられている。
こんなとこ一泊うん万円とかするんじゃあなの……?
「ちょいとやめよっか……」
「…………」えー。
『えー!』
【…………】
そーちゃんたち、露骨に落ち込んでいた……。
う……。その目見てたら、やめるって言えないじゃーん。
……あとテンコはまだなんか黙ってるし。
「と、とまろっかここ」
『わーい!』「……!」わーい。
ま、まあいいか……。たまには……ね。懐も潤ってることだしっ。
それに【少し】割り引いてくれてるっていうしねー。
少しってどれくらいかな。一割くらいかな。
二割引きだったらうれしいなー。
とか思いながら、恐る恐るDBホテルの回転扉をくぐると……。
「「「いらっしゃいませ! ようこそ、スミー様!!!!!!!!!!!」」」
ズラァァァァァァァァァァァッ!
ロビーに入った瞬間、視界を埋め尽くしたのは「人」だった。
支配人らしき初老の男性を先頭に、フロント係、ベルボーイ、メイド、清掃員に至るまで、総勢50人以上の従業員が、レッドカーペットの両脇に整列していたのだ。
そして全員が、軍隊のように綺麗なお辞儀をしている。
「……ふぁぁ?」
なに、これ……? なにこの熱烈歓迎……?
ここホテルだよね? 王宮とかじゃないよね?
「お待ちしておりました、スミー様! オタッキー・オーナーよりお話は伺っております!」
支配人が揉み手をする勢いで近寄ってきた。
「当ホテル最高のVIPとして、誠心誠意、尽くさせていただきます! お荷物をお持ちします! 靴をお磨きします! 肩をお揉みしましょうか!?」
近い近い! 顔が近い!
媚びへつらいのレベルが限界突破してるよ!
「さ、最上階のスイートルームへご案内を……」
「えーっとえーっと、その前に、一泊いくらくらいですか……」
こんなVIP待遇、絶対高い。怖くて泊まれない。
「タダです」
「ほ……?」
「タダです」
「へ……? た、ただ……? ノーマニー?」
「はい。本来であれば、一泊金貨100枚ですが。ですが、オタッキー様の紹介ということで、全額無料でございます!」
「ひゃ!?」
金貨100枚って、一泊百万ぅうううう!?
それが、ただぁああああああああ!?
【少し】値引きってレベルじゃねーぞ!?
【やはりあの雄……狙ってるではありませんかっ。スミコを。狙い撃ちしてるではありませんかっ!】
テンコの叫び声が、広すぎるロビーに虚しく響き渡った。
【お知らせ】
※1/2(金)
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