60.帝国の商会にて
早いとこいろいろと補充し、さくっと街を出て行こう。
なぜって?
キャンピングカーがタイトルに入ってるのに、キャンピングカーに乗らない系主人公になってしまうからだ。タイトル詐欺になってしまうからだ。
昨今、タイトルに『スローライフ』を掲げておいて、全然スローライフしない作品とかマジあるからね。『山暮らし聖女の異世界スローライフ』とか。
あとタイトルに『配信』と入ってるのに、主人公が配信しない作品もあるらしい。けしからんな。カクヨムで連載中の『ダンジョン深層ソロキャン配信めし』っていうんだけど。
何はともあれ、補給は速やかに済ませたい。
ということで、帝国にある商業ギルドへとやってきた次第である。
「OTK商会……ここか」
目の前に聳え立つ建物を見上げ、私はあんぐりと口を開けた。
そこには、異世界ファンタジーの風情など微塵もない、現代日本の「デパート」そのものがあったからだ。
全面ガラス張りのスタイリッシュな外壁。自動で開閉するガラスの扉。入り口には制服を着たドアマンまで立っている。
ここだけ表参道か銀座ですか?
「どしぇー……でけえ……」
【人の子よ、目立っておりますよ。あまり変な声は出さぬことです】
「あんたにみんな注目してんのよ……」
こんなくそでか狐さまがいるせいで、みんなからの注目バリバリバリ! なわけよ。あー、視線が痛いです。
【OTK商会とやらに、何しに来たのですか?】
「商品を売りにきたのよ」
【ふむ? 魔物の死骸はなかったのでは……?】
そーね。
こないだの、蒼銀竜山事件では、魔物の死骸がゲットできなかったからね。
「しかーし、世の中にはね、せどりっちゅーもんがあるんですわ」
【くわ……】
興味ゼロ。
テンコが大きな欠伸をして、毛繕いを始めた。もっと興味もって!
「…………」くいくい。
「なんだいキャンピー?」
「…………?」はて。
キャンピーが小首をかしげている。
【『せどりとは?』とキャンピーが聞いてます】
OH~。キャンピ~。あんただけだよ、私に興味持ってくれるの。
テンコは飯、そーちゃんは飯。二人ともご飯にしか興味ないからさ~。
「商品を安く仕入れて、高く売ること」
【それって詐欺ではないのですか?】
「詐欺ちゃうわい。その地域では安く売ってるものを、仕入れて、高く売ってる場所で、売るのよ」
これぞ異世界せどり。
「では、いざゆかん!」
私はテンコたちを引き連れて、OTK商会の中に入る。
「うひー、すご。なんかここが異世界とは思えないわ」
一歩足を踏み入れると、そこはまさに「高島屋」だった。
一階は化粧品売り場なのだろうか、華やかな香水の香りが漂っている。
磨き上げられた大理石の床は、照明の光を反射してキラキラと輝き、ショーケースには高価そうな宝飾品が並んでいる。
行き交う客も上品な貴族ばかりだ。
受付嬢も、うわ、すっごい美女。
「いらっしゃいませ。OTK商会へようこそ」
「どうもどうも。商人のスミーです。商品を売りにきました」
私は商業ギルド証を提出する。
受付嬢はニコッと笑う。
「では、VIPルームにご案内しますね」
「ほへ……?」
変な声がでてしまった。なにゆえVIP?
あ! そっか。私Sランク商人だからかっ。
なるほどねえ。
私は受付嬢と一緒に、部屋の奥へと向かう。
「異世界なのにエレベーターあるし……」
案内されたのは、鉄格子の扉がついた重厚な箱だった。
ただし、動力は電気ではなく、壁面に埋め込まれた魔石が淡い光を放っている。魔導エレベーターってやつか。
「お乗りください」
私たちがエレベーターに乗っかる。
約一名、めっちゃでかいのがいるんだけど、スペースには余裕があった。
ブゥン……と低い駆動音が響き、箱が浮き上がる。
【すすすすすす、スミコよっ! なな、なんですかこれっ!? 体がふわって、ふわって!】
何驚いてるんだろ、テンコのやつ。
あ、エレベーター初だから、びびってんのね。
ぐんぐんと高度が上がっていく。
ガラス張りの側面からは、帝国の街並みが一望できた。
人が、馬車が、どんどん小さくなっていく。
内臓がヒュンッとなる独特の浮遊感。
【ひいぃ! た、高い! 体が浮いてるっ! なんですかこれっ! お、落ちる! 落ちますって落ちるってばぁ……!】
ぶるぶるぶる、とテンコが震えている。
尻尾を股の間に挟み込み、私の足にしがみついてくる。なんか可愛いな、こいつ。
「あんた風に乗って空飛べるのに、なにびびってんのよ」
【じじじじ、自分で制御できない飛行は恐ろしいものなのですよぉお!】
一方で。
『わー! しゅごーい! まぁま、そらとんでるー! しゅごーい!』
「…………!」ぴょんぴょん。
赤ちゃん組は楽しそうだ。窓に張り付いて、空の旅をエンジョイしてる。ザ・びゅーちほーわーるど。
【そなたら! 暴れるの止めなさい! 墜落したらどうするのですっ!】
「大丈夫だってば、墜落なんてしないから」
【墜落しないなんて保証はどこにあるのですか!?】
それこそ、落ちたらあんた自分で飛べばええやんけ、と思う私。
ちーん。
軽やかな到着音が鳴り、扉が開く。
最上階、VIPルーム。
「ほへー……すごーい……ひろーい……」
足首まで埋まりそうなほど毛足の長い絨毯。
壁には名画が飾られ、部屋の中央には最高級の革張りのソファセットが鎮座している。
大きな窓からは、サラディアスの街を一望できるパノラマビュー。
こんなところで商売できるなんて。やべー。Sランクってすごいな。
【ふむ……高貴なる妾に、ふさわしい部屋ですね……】
ガクガク、ブルブル。
テンコさん、生まれたての子鹿みたいに、足ぷるっぷるでした。
強がっても無駄ですよ。
ふっかふかのソファに、私が座る。近くにテンコも座る。
まだ怖いのか、ぴったりと体を寄せてくる。温かいし、モフモフで気持ちいいから許すけど。可愛い奴め。
「お待たせしました」
ガチャリと扉が開き、ビシッとスーツを着込んだイケメンが入ってきた。
整った顔立ちに、インテリジェンスを感じさせる眼鏡。
「OTK商会、ギルマスを努めております。オタッキー・イーダと申します」
変な名前。オタッキーって。
「初めまして、スミーです。こっちは従魔二名、あと……」
「キャンピングカー1名ですね」
「!? 知ってるんすか?」
「ええ。貴方様が召喚者であることとかも」
な、なんで知ってるんや……?
情報が漏れてへん?
「ああ、ご心配なく。情報が漏洩してるわけではありませんので」
「じゃ、じゃあなんであんたが、私のこと知ってるんすか……? どうやって仕入れたんですか」
オタッキー・イーダは、眼鏡の奥の瞳を鋭く光らせ、ニヤリと笑った。
「権力♡」
こわいよー! このイケメンこわいよー!
「商人は情報が命ですからね」
だからって個人情報を権力でぶっこ抜くのはどーかと思いますけどね。
ヤバいなこいつ。あんま取引しないほうがいいかも。
私は警戒心を強め、無難な商品を提示しようと口を開きかけた。
「それで、どのようなものを、売ろうとお思いで――」
「えっとお」
「できれば異世界の質の良い塩や胡椒など香辛料を売っていただけますと幸いです」
どっから仕入れてくるんだよ、そういう情報をぉ!
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※12/27(土)
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