59.カフェで爆食いテンコさん
カフェでお昼ご飯を食べる。
くそでかミルクレープは、テンコさんがペロッと食べちゃいました。
「すげえ……」
「あのダークノワール・ブラックシュバルツクレープ全部くった……」
「ダークノワール・ブラックシュバルツ完食した奴なんて見たことねえぞ……」
「ダークノワール・ブラックシュバルツ……」
ダー(省略)言い過ぎでしょ、ギャラリー。
そんなに食べきれないもんなのね。まー、顔面と同じ高さまで積み重なったクレープなんて、普通は完食するの難しそーだもん。
ちなみに、私ら普通組は、サンドイッチを食べましたとさ。
【けぷ……まあまあでしたね】
テンコが満足そうにつぶやく。なーにがまあまあじゃ。まったくもー。
しかし、大丈夫かな。ダー(略)、高くない?
「あ、あのぉ~……」
恐る恐る、私は店員に手を上げる。
「お勘定を……」
「はいどーぞ」
「ひぃ……どれどれ……って、ええ!? うそ!?」
伝票の数字を見て、びっくりじゃ。
なぜなら……。
「あの、このダークノワール・ブラックシュバルツクレープ……0円になってるんすけど、マジですか?」
「ええ、マジです」
「な、なんで……?」
「正確に言えば、時間以内に完食したらタダなんです」
あー、なるほど、大食いチャレンジ的なもんだったのね。
いやぁ、ラッキーだったわ。
【人の子よ……】
嫌な予感。
振り返ると、ぶぉんぶぉんっ、と尻尾を振る、猛獣が一匹。
【話は聞かせてもらいましたよ】
「やめろ」
【時間内に食べ切れたらタダなのでしょう?】
「マジで! やめなって!」
【妾の腹は……まだ空いてますよ?】
春日のここ空いてますよ的な感じで言うんじゃあない!
「つぶれるでしょうがっ、店……!」
【大丈夫、加減しますので】
「加減を知らんだろうがあんたっ!」
【ダークノワール・ブラックシュバルツをっ。ダークノワール・ブラックシュバルツを所望しますっ! あれは美味しくて、量もたくさんあって、とても美味なのです!】
「だーもー!」
揉めてる私とテンコを前に、小首をかしげる店員さん。
「どうなさったのですか?」
「あ、いや、その……うちのペットが、ダークノワール・ブラックシュバルツを大変気に入ってまして……。もう一皿食べたいとのことで」
【まぁ! そうだったんですねっ。ダークノワール・ブラックシュバルツは、うちの看板メニューで、国が誇れる郷土料理なのですっ。旅人さんには、是非、心ゆくまで堪能してほしいですっ!】
アチャー。イッチャッター。
「私は知らんぞ……」
「はい?」
「あ、いや。そういうことなら……もう一皿お願いします」
「かしこまりました~!」
店員さんが笑顔で去って行く。
この後、この場は地獄となることを知らずに(テレビ番組風あおり)。
【人の子よっ。ダークノワール・ブラックシュバルツは来るのですかっ】
「来るってさ。ヨカッタネー」
【ええ。あれは妾が食べるにふさわしい料理です……!】
さいですか。
まあ、もう店側がOKしちゃってるし、私は止めないよ。
なぜならね、食費が浮くからね。悪いね。
「お待たせしました! ダークノワール・ブラックシュバルツクレープです!」
どんっ、とテンコの前に、100層ミルクレープがお出しされる。
「制限時間は60分ですっ!」
【フッ……! そんなに時間はかかりません!】
「スタート!」
テンコが猛烈なスピードで、ダー(略)を食べていく。
ハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグ!
【美味!】
「は……? え……? か、完食!? き、記録……い、一分ぅ!?」
なんと早いこと……。
【おかわりです】
「おかわり所望してます」
「な!? お、おかわり……ですって……!? ダークノワール・ブラックシュバルツを二皿食べて、まだ入ると!?」
「見たいですね。どーします?」
私としては、もう店が可哀想なので、退店するのもやぶさかではない。
「て、てんちょー! 店長ぉ!」
店員さんが厨房へと戻っていった。
ほどなくして、恰幅のいいおじさんが、やってくる。
「ほぅ~……。このおっきい狐ちゃんが、おれのダークノワール・ブラックシュバルツを……二皿食ってまだおかわりしたいと?」
みんなただダー(略)って言いたいだけでは……? って思ってしまった。
「フッ……! いいだろう!」
「マジでいいんすか?」
「無論だ!」
「だってさ、テンコ。良かったね」
するとテンコがにやり、と笑う。
【この天狐、二皿程度じゃ満足しませんよ? まだまだこの程度じゃ満足しません!】
「まだ満足できないってさ」
店長のおじさんは「いいだろうっ」と不敵に笑う。
「じゃんじゃん作ってきてやる! 時間内に食べ切れたら……タダ!」
あーあー。あーあー。
私しーらないっと。
「キャンピー、そーちゃん、隣の席でまったりしよーねー」
『あー、あー、そーちゃもたべたい~』
「やめなさい」
マジで店潰れるから。
キャンピー、そーちゃん、私は隣の席へ移動。ずず……とコーヒーをする私&キャンピー。
【美味……! おかわり!】
「ちくしょう! なんて速さだ! ありがとよ! ほれおかわりだ!」
しゅばっ、と店長がダー(略)をだす。
しゅばっ、と天狐がダー(略)を食べる。
しばし、そのやりとりが何度も続く。
潰れるでぇ、これ。
「あのぉ~。店員さん」
「なんでしょうっ?」
なんで興奮してるんすかね。
周りを見ると、ギャラリーがテンコの周りに集まっていた。
「すげえぞあの狐! もう五杯目だ!」
「うそだろ!? 一皿でも食べるのムズいのに!」
「五杯もたいらげるなんて! なんて狐だ!」
「すげええ……!」
完全にフードファイターテンコ、そしてそれを見守るギャラリーになってる。
そんな彼らは放置して。
「食い過ぎちゃってますけど……店潰れないっすか?」
「大丈夫ですよっ。帝国はみんな裕福なんでっ」
へー、金に余裕があるんだ。店も、そして客達も。
だから店長さんってば、ノリノリで料理をお出ししてるわけか。
「なんでそんな裕福なんです?」
「魔道具技術が、他国より発達してまして。それを売って大きな利益を得てるんですよ」
「はえー……なるほどねー」
そういえば、帝国の魔道具はすごいって、前にあった冒険者も言っていたっけ。
なるほど……魔道具が高く売れるのか。ふぅん……。
「七杯目を食ったぞあの狐!」
「やべえ! 伝説だ! おれは今、伝説ができるのを目撃してる!」
「歴史の目撃者なんやおれらはぁ……!」
まー、いっか。ギャラリーも店も、喜んでるみたいだしね。
てゆーか、さっきより間違いなく、客数が増えている。
客寄せパンダならぬ、客寄せ狐ね、テンコのやつ。
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