56.取り調べ!
帝国はサラディアスの街へ、入ったところで、いきなり警告音が鳴った。
ぞろぞろとゴーレムと軍人が出てきて、有無を言わさず別室へと連行されたのだった。
通されたのは、レンガ造りの薄暗い取調室。
窓はなく、重厚な鉄の扉が閉ざされている。空気は冷たく、カビ臭い。
中央には無骨な机と椅子が置かれているだけの、殺風景な部屋だ。
【人の子よ、スミコよ】
念話で、テンコが話してくる。
【なんですかこれは? どうして我らはこんな粗末な部屋に通されるのですか?】
【知らないわよ……】
警告音には、未登録の強大な魔力反応がどうたらって、言っていたような気がする。
【未登録で、強大な魔力……か】
【なるほど。スミコのことですね】
【ユー! ミー! OK!?】
多分ここ二名の魔力量がひっかかったんだろうなぁ。
てゆーか、まさか入り口で魔力量を調べられるとは。
ガチャリ。
重い扉が開き、一人の軍人が入ってきた。
「失礼します」
息を呑むほどの美女だった。
青い髪を後ろで束ね、鋭い眼光を放つ長身の女性。
ぴっちりとした軍服が、そのスタイルの良さを強調している。クールビューティーだ。
「初めまして。私は【ラディアス・カーター】。マデューカス国軍の大佐です」
「す、スミーです。冒険者で、あ、あと一応商人です」
「二度言う必要はありません。身分証は預かってますので」
ここへ通されたときに、冒険者&商人ギルド証を提出させられたのだ。
【なんですか、こいつ。人の子の分際で。偉そうですね】
あんたが言うな案件だが、それはおいとく。
「あ、あのぉ~……私らなんでここに通されたんでしょうか?」
「失礼。未登録の、高魔力反応のかたは、全員、聞き取り調査を行うことになってますので」
「は、はあ……それはどうして?」
「かつて、高い魔力量を持っていて、それを隠した馬鹿な王子が、帝国で暴れまくった過去がありまして。それ以降、入り口での調査を開始することが決定したのです」
誰だよ、そんな馬鹿な王子。
余計なことをしやがって。そいつのせいで、私は今、取り調べを受けてるじゃあないのっ。
「で、その……ラディアスさん……私らはどうなっちゃうんですか? ま、まさか……しゃ、射殺とか……?」
「いえ、そこまでは。取り調べを行い、問題が無ければ、普通に通れますので」
「そ、そーっすか……」
ほぉ。良かった。
【スミコよ。この部屋、監視されてます】
【!? まじ……】
【ええ。この部屋全体が魔道具となっており、外から中が監視できるようになってます。そして、嘘を見抜く魔道具を使っております】
まじか。
しかし助かった。耳がよく、風の加護を受けたテンコが居て。
彼女がいなかったらヤバかった。
そうか、取り調べだもんね。そんくらいするよね。
「では質問です。貴方たちはどこから来たのですか?」
嘘は誰だ。正直に話そう。
「ネログーマから来ました」
【ダウトだそうです】
はぁあああああああ?!
【ちょ、どういうことよっ】
【嘘を見抜く魔道具が、反応したそうです】
部屋の外の音を拾って、テンコが言う。
いやいやいや。嘘なんてついてない。
って、まさか! そっか!
出身を聞かれてるんだっ。
「あ、て、訂正します!」
しっかしどうしよう。これもう嘘ついたらアカンやつやん?
なら正直に召喚者っていうしかないか。あんまばらしたくないけども。
「召喚者、っす。私」
「……召喚者?」
ラディアスさんがぴくっと眉を動かす。
【今度はセーフ、だそうです】
テンコが、外での会話を拾って、私に共有してくれる。
「なるほど……召喚者。つまり異世界からきたということですね」
「は、はい……」
「召喚者は皆一様に、強いですからね。高魔力反応になるのは当然ですね」
「そ、そーなんすよはい……」
「では次の質問です。そこのデカい狐はいったい?」
ここも嘘はつかないで。
「うちの友達で、天狐です」
「!?」
ガタタッ!
ラディアスさんが椅子から転げ落ちる。
え、なに?
【今度もセーフ、と言ってます】
「あ、ありえない……本当に、し、神獣と……と、友だというのですか……?」
「ええ。まあ、ね、テンコ」
「…………」
テンコが黙っている。あ、しゃべるなって言ったから黙ってるのか。意外に律儀だな。
「いいよ、しゃべって」
「…………」
「ちょ、テンコさん!? なんでだまってんの!? ねえ!」
【スミコはしゃべるなと言ったではありませんか】
言ったけどっ。でもいいんだって。証拠を見せるんだってっ。
【しかししゃべるなと】
「今良いのっ。しゃべるのっ」
「…………」
ラディアスさんが、こっちをじとっと見ている。
ああ、しまった。私が独り言言ってるみたいになってる。
独り言を言う痛い人みたいに、見られてる!?
「まじで天狐なんすよぉ! ね! ね! ほら、いつみたいに偉そうにしゃべってごらんっ」
「わん」
わんってなんだよわんって!?
【ふふん、知らないのですか? 人の子よ。狐は「わん」と鳴くのです。召喚者の世界では、「こんこん」って鳴くと信じられてるようですがね】
「変なトリビア発揮してるんじゃあないわよっ。ほら、いつもみたいに美味美味って、さぁ! ねえ!」
「わんわん」
「おいいいいいいいいいいい! 私が変な人みたいに思われちゃうでしょうがぁあああああ!」
はぁ……とラディアスさんがため息をつく。
「……どうやら天狐というのは、本当みたいですね」
あ、そっか。嘘をつけば、魔道具でバレるんだった。
裏を返すと、魔道具を使って、私の発言が嘘じゃあないってわかったわけか。
「では、貴方の肩に乗ってるトカゲは?」
「蒼銀竜の赤ちゃんです」
ガッタンッ!
またも、ラディアスさんが椅子から転げ落ちる。
立ち上がって、咳払いをして椅子に座り直す。
「蒼銀竜……あの、神獣の?」
「ええ、まあ」
「……つまり、貴方は神獣を二匹つれて旅してると」
「そうなりますね。そーちゃん、ご挨拶」
テンコのやつは、融通が利かなかった。
でもそーちゃんは違う。純粋な赤ちゃんだ。
さっきは私、ただの狐を天狐だと主張し、独り言を言うヤバい女みたいになっていた。
でも今回は違う! そーちゃんは、ちゃんと私の言うことを聞いてくれるからねっ。
「ぷー……ぷー……」
「そーちゃん? おねむなのぉ!?」
「ぷー……」
鼻提灯が出ている。
ああもうっ。そーちゃんなんてタイミングで眠ってるの!?
「や、マジです。マジですから。ほんとに蒼銀竜なんすわ。ね?」
「……信じましょう」
YES。ありがとう、嘘を見抜く魔道具。
ふぅ。いやぁ、取り調べ、なんとかなったわ。
ヤバい二匹を乗り切ることができたしね。
もー、無いでしょ。障害は。
「最後に……」
「最後に!?」
え、最後? え、他に調べるようなものあった?
「…………?」はて?
あり、ましたねえ!
ここに! 可愛いキャンピングカーがぁ……!
「先ほどから黙っている、そちらのお嬢さんは?」
え、え、えー……。
ど、どうしよう。どう答えればいいんだろうっ。
えーっと。でも嘘はつけないし。
事実を言うにも。
「なんですか? やましい存在なのですか?」
「ああ、いえそんなことはまったくないっす!」
「では、誰なのですか? 妹ですか、娘ですか? それとも奴隷?」
「……です」
「はい?」
「キャンピングカー、です」
「………………………………は?」
うん、まあ、そうなるよね。
「きゃん……は? なんですかそれ……」
「だから、キャンピングカーです」
「は!?」
なんかまたびっくりしてる、ラディアスさん。
【セーフだと聞いて、驚いてますね、この人の子は】
でしょうねえ!
「……キャンピングカーとは、なんなのですか?」
いやなんなのって言われても。
「乗り物です」
「ふざけないでください……!?」
「や、マジですって……ね、キャンピー?」
「…………」こくんっ!
キャンピーが大きくうなずく。
ラディアスさんは、外で嘘かどうかの判定を聞いてる。
私の発言……つまり、キャンピーが乗り物だって事が、嘘じゃあないことを聞いて、さぞ困惑してることだろう。
「……少し、席を外して良いか?」
「ど、どうぞ……」
ラディアスさんがふらつく足取りで外に出て行く。
【外に居る連中に、魔道具が故障していないか、聞きに行ったようです。無駄なことを……】
うん……だって私、真実しか語ってないからね。
【『壊れてない? そんな馬鹿な!?』と怒鳴ってますね。フッ……度量の狭い女ですこと。この程度の事実を受けられないなんて】
いやぁ、乗り物が美少女の姿してるの、だいぶ受け入れられがたい真実だと思いますよ。
アイム・ユア・ファーザー並に。
【お知らせ】
※12/27(土)
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