55.帝国到着と同時に捕まる!?
「どしぇー……でっけえ……」
初めて帝国に来たんだけど、その異様な威容に、私は口をあんぐりと開けてしまった。
見上げるほど高い、黒鉄の外壁がどこまでも続いている。
壁の表面には継ぎ目がなく、金属的な冷たい光沢を放っている。
そして、何より異様なのが「門」だ。
巨大な鋼鉄製の扉が、ひとりでに開閉している。
人の姿はどこにもない。門番すらいない。
「キャンピー、ここって帝国の首都じゃあないんだよね?」
「…………」
キャンピーがこくこくと頷く。
首都でなくて、このでかさと近未来的な設備とは。
いやぁ、凄いもんだ。
『早く参りましょう。腹が減ってます。妾もそーちゃんも』
『はんぐり~……』
そーちゃん、マジどっから言葉を覚えてくるのやら。
「二人とも、わかってるね」
『ふむ? ナニガですか』
「君たちは神獣です。目立ちます」
『当然ですね。妾たちは高貴なる存在ですから』
ナチュラルに上から目線っすね君。まあ、特別な存在として生まれ、育ってきたから当然っちゃ当然だけども。
しかしそーちゃんにまで、その言葉遣いがうつってしまわないか、お母さん心配です。
「神獣だって事がバレるとすっごく面倒なので。君たちは……霧狐、そして火蜥蜴亜種ってことにします」
どっちもこの世界には普通にいる、魔物達だ。
神獣って言うより、霧狐と火蜥蜴って言った方が、騒ぎが大きくならずにすむ。
『むぅ~……。仕方ないですね』
「おやあっさり。『どうして妾が嘘をつかねばならぬでおじゃる!』とか言うんだと思ったけど」
『そうしないと人の子らに迷惑が掛かるんでしょう?』
ここで言う人の子らというのは、私たち……つまり、私+キャンピー+そーちゃんってことだ。
自分一人だと嫌だけど、仲間に迷惑が掛かるのは嫌だと。ふふふ。
『……なんですか、その生暖かい目は』
「いやぁ、なんでもないよ。可愛いとこあんのね、あんたも」
よしよし。もふもふ。
『か、からかうのはお止めなさい……わ、妾は高貴な神獣なのですよっ』
ぶぉんぶぉん!
抗議の言葉とは裏腹に、尻尾が嬉しそうに振られている。かわよー。
「さ、ふざけてるのはこれくらいにして……はい、じゃあ復唱。まずはテンコ。あなたはだれ?」
『霧狐』
「YES。じゃあつぎそーちゃん」
『あいっ。そーちゃは、しゃらみゃんだー!』
「火蜥蜴ね。よしよし。そして次に……魔物は基本しゃべれません。なので、人前では念話を使いましょう」
こく、とテンコがうなずく。
『そーちゃは?』
「あ、そういえばそーちゃんってできないんだっけ……。悪いけど、何か伝えたいときは、私の耳元でこそっとお願いね」
『ん! そーちゃ、ときどきろちあごでぼそっとでれる!』
そーちゃん、テレビの見過ぎはよくないっすよ。
「そーちゃん、テレビは一日1時間」
『やーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!』
すっごく反発された。どんだけテレビ好きなのよ。
地球の娯楽は世界一ぃ……! って、某這い寄る渾沌も言っていたもんね。
『やー! やー!』
「わかったわかった。でも見る時間は少なくするんだよ」
『ぜんちょしますっ!』
政治放送でもみてるのかな。
これ善処しますっていって、治らないやつや。
「…………」くいくいっ。
「どうしたのキャンピー?」
「…………」じ~?
ふむ。
「テンコさんなんて言ってるんですか?」
『【わたしはわたしはっ?】だそうですよ』
「あ、いやキャンピーは人間姿してるし。そのままで良くない?」
「…………」しゅん。
キャンピーが露骨に肩を落とす。
なんか寂しそう。みんなみたいに、あれしてこれしてって役割を与えて欲しいのかな。
「そうだね……じゃあ、キャンピー。君は……妹!」
「…………!」
「君は私の可愛い妹ってことで、よろしくね」
「…………!」おー!
ぱぁぁぁっ!
役割を与えられ、キャンピーの顔が輝いた。
まあ可愛い妹の役って、それ演じるまでもないんだけども。可愛いし。
「そんじゃ……対策したところで、いざゆかん、帝国へ!」
前の話でもやった気がするけど、今度こそ、帝国へ向かう私たち。
サラディアスの門にさしかかる。
「門番って居ないのねー」
『ふむ……たしかにオカシイですね。どこの人の街にも、人間は入り口に立って、入るのを制限してるのに』
私たちは小首をかしげる。
しかし、私たちの前にいた馬車は、誰に止められることもなく、自動で開いた門の中に入っていく。
「入っちゃってもいいのかな?」
『別に良いのでは?』
「だよねー。ってことで、おじゃましまーす」
私たちが門を通りかかった、そのときだった。
ブーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
鼓膜をつんざくような警報音が、頭上から降り注いだ。
「え? え? な、なにっ? なんなのっ?」
ガシャンッ!!
目の前で、鋼鉄の門が落下するように閉ざされた。
さらに、背後の門まで閉まり、私たちは閉じ込められてしまう。
ガシャッ、ガシャッ、ガシャッ、ガシャッ!
重厚な金属音が響き渡り、壁の一部がせり上がった。
そこからぞろぞろと現れたのは、人間ではない。
全身が金属で構成された、無骨な人型兵器――魔導人形だ。
しかもただのゴーレムではない。彼らは帝国軍の軍服を着用し、その手には、銃剣のような魔導兵装が握られている。
『警告。警告。未登録の巨大魔力反応を検知』
無機質な音声と共に、数十体のゴーレムが一斉に銃口をこちらに向けた。
「ひぇっ!?」
お邪魔しますって言っただけなのに、いきなり蜂の巣にされるの!?
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