54.帝国へ向かいましょう
へそくりのおかげでガソリン代はなんとかなった。
しかしまあ、余裕がないことには変わりない。
余裕がないせいで、のんびり、気ままな自由な旅ができなくなる。
そうなると、読者からは『タイトル詐欺じゃあないかっ!』って総ツッコミを食らっちゃうからね。
ちゃんと、余裕を取り戻さないといけないわけですわ。
『一人旅』じゃあないっていうツッコミには目を逸らしつつ。
一台と二匹は、【人】のカウントに入らないのだ。
「で、キャンピー。我々が今居る場所はどこだい?」
運転席に座る私が尋ねる。
カーナビ上に、周辺地図が表示された。
【マデューカス帝国 東端 サラディアス】
「帝国……」
あれ? ゲータ・ニィガを走っていたような気がするんだけど。
キャンピーが拡大地図を表示させる。
どうやらマデューカスは、ゲータ・ニィガのお隣さんらしい。
しかもゲータ・ニィガの凹んだ形の間に、マデューカスの一部が隣接している。なるほど。
「いつの間にか帝国に入ってたわけね」
さて、どーしたもんか。
別に街ならどこでもいいかも、とは思いつつも。
帝国に入ったとなると、『帝国式馬車です』の言い訳が成り立たなくなるような気がする。
ぷっぷ~?
『キャンピーが心配していますよ?』
テンコがキャンピーの言葉を翻訳する。
ガソリンの残りを考えると、あまり遠回りもできない。
うん。よし。
「目標、帝国の都市サラディアス!」
ぷっぷ~♪
キャンピーがサラディアスへと向かって走り出す。
『人の子よ』
「ステイ」
『まだ何も言ってないのですか』
「腹減ってるんでしょ?」
『その通り。さぁ、馳走を』
「ちょいとまってなさい。これでも食って」
KAmizonで買った、スルメを取り出す。
袋を開けると、独特の磯の香りが車内に漂った。
『なんですかこれは……? 干物……?』
「そう。イカの乾物」
『ふぅ……』
「あ、そういうのもういいんで、省略で」
『なんですかっ。妾のセリフを遮るのではありませんよっ。不敬ですよっ。不敬罪で捕まえますよ……!』
「スルメを食ってなさい」
私が差し出したスルメを、テンコがパクリと口に入れる。
もぐもぐ。
『なんですかこの貧相な食べ物は……もぐもぐ……この程度では……むしゃむしゃ……お、これは……噛めば噛むほど……あじが……むしゃむしゃ……』
最初は不満げだったテンコの表情が、次第に蕩けていく。
硬い繊維を噛みしめるたびに、凝縮されたイカの旨味が口いっぱいに広がっているようだ。
『あー! あー! そーちゃも、そーちゃも~!』
テンコが美味そうにスルメを食べてるもんだから、そーちゃんも欲しがりだした。
「はい、どーぞそーちゃん」
一本丸々だと大きすぎるので、ちぎったスルメを渡す。
膝の上にのっかるそーちゃん。
そーちゃんはスルメを口の中に入れる。
そういえば、歯って生えてるのかな。今更だけど。
『むちゃむちゃ……ん~♡ まいうー♡』
どうやら歯は生えてるらしい。
「まいうーって、どこで覚えたのそんな言葉」
『てれびー!』
子どもは何からでも影響受けるものだ。
特に、この二匹は暇なとき、現実世界のテレビ番組(グルメ番組)見てるもんね。
そこで、そーちゃんは言葉を覚えてるみたい。
『まいうー! すっごい! まいうー!』
『ほう……これはなかなかの美味ですね』
一方でテンコさんの語彙はいつも通りだった。
『もちゃもちゃ……美味……これも美味……ふむ……むちゃ……』
あれ? もしかしてだけど、前からこういう乾物系のものを、間食として出しておけばよかった?
そうすれば、毎度の食事の準備に、悩まされなくて済んだのでは?
もー! 誰か早くそれ言ってよー!
はい、居ないですね。
それに、乾物(間食)では栄養が足りないしね。子ども達の成長に、よくない。
早くお金を作ってあげないと。
ぷっぷっぷ~♪
カーナビ上では、サラディアスの街の近くまで来ていた。
「よっしゃ、みんな降りますよ~」
『ふむ……到着しましたか』
「うん。さ、降りて降りて」
ぞろぞろ、と私たちはキャンピーから降りる。
「こっからは徒歩ね。鉄馬車が見つかってはいけないからね」
『仕方ないですね』
おっと、あっさりOKしたな。
『なんですか? キャンピーは仲間です。悪目立ちするのは、妾が許せないだけです』
「フフ……そうかいそうかい。良かったねキャンピー」
ぽんっ、とキャンピーが人間姿へと変形する。
そして、テンコの顔に抱きつく。
むぎゅぅ。
『そーちゃも、もふー』
そーちゃんはテンコの頭の上に乗っかる。
どれ私も。
『なぜスミコが抱きつくんですか』
ぶぉんぶぉん!
口では拒否しながらも、テンコの尻尾が嬉しそうに私の足をペチペチと叩く。
「なんとなく。よしよし」
『そんなので機嫌を取ろうなどと、浅はかな考えですね』
ぶぉんぶぉんぶぉん!
さらに激しく尻尾が振られる。風圧がすごい。
テンコさん、言葉と感情(※しっぽ)が一致して無いっすよ。ちょーかわよ。
「よっしゃ、じゃ、サラディアス向かいますよー」
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※12/27(土)
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