50.聖女、神となり、逃亡す
空気清浄スキル、イオン発生モードによって、呪いをついでに取り除いたぞ。
聞くな。理屈を。私にもわっかんねーんだから。
私は「考えるのをやめた」顔で、遠い空を見上げた。
「何から何まで、ありがとうございます……」
場所は、獣人国ネログーマの王都、エヴァシマ。
キャンピーを使えば、エヴァシマなんてあっちゅーまに届いちゃう訳よ。
「それにしても、素晴らしい鉄馬車ですね」
と、騎士団長のボッタクルゾイが目を輝かせて言う。
でしょ?
ぷっぷ~♪
キャンピーもご機嫌なようだ。褒められたら嬉しいよね。ワイパーがパタパタと動いている。
「この大人数をのせて移動が可能、結界によって完全に敵からの攻撃を防ぎ、さらに要救助者の治療までもを行うなんて」
それを聞くと、キャンピー、すっごいわね。
救急車の完全上位互換じゃん。
災害地域での大活躍するじゃん。すごいわー、うちの野外活動車、まじすごいわー。
まあ、それキャンピングカーかっていわれると、首をかしげちゃう私だけどもさ。
捨てられ聖女は【救急車】で異世界を旅する。うん、あかんわ。
まったくわくわくしない。なんだよ救急車で旅って。ピーポーピーポーってか。
「ま、それじゃ……これで任務達成ってことで」
ちゃんと、蒼銀竜山まで、女王を送り届けて、さらに問題も解決したのだ。
文句ないでしょう。
「ありがとうございました。では報酬を……」
取りに行ってる間に、騒ぎになりそうだった。
「ま、ツケってことで良いですよ」
騎士団全員+女王が、いるのだ。
しかも女王が行方不明になって、騎士団が総出でさがしにいったんだ。
きっと、エヴァシマの中は、騒ぎになっていることだろう。
なら、中に入るのは、あんま得策じゃあない。目立っちゃうしね。
「…………」
「どうしたの、女王様」
「神……」
「は?」
「神……貴方は、女神様ですわ……」
なーんか、シュナウザー女王様ってば、潤んだ目で、私を見上げてきてる。
膝をつき、胸の前で手を組むその姿は、まるで神に祈りを捧げている聖女そのものではないか。
背後に後光が見える気がする。
「鉄馬車の聖女……いえ、鉄馬車の女神様……」
「いやいやいや! シュナウザー様、やめてくださいよ、女神様とかいうのっ」
私はぶんぶんと手を横に振った。背筋に寒気が走る。
「いいえ、鉄馬車の女神様。貴方様は本当に素晴らしいお方。この国の危機を何度も救い、そして、無償で去って行く……」
あ、いや、無償じゃあなくて、今度来たときに、報酬もらえればいいかなって。
だって、エヴァシマの中、さわぎになってるだろうし。
「既に我が国は……聖女神をお二方、あがめておりました」
「へ、へえ……そう……」
「山女神ミカデス、銀猫女神ヤスコニャン」
なんだ銀猫女神ヤスコニャンって。
なんだここの神ってみんな変な名前だな。
「そこに加えて、鉄馬車の女神スミコ様。この三柱を、国規模であがめてまいります!」
「シュナウザー様!?」
なんかおかしな事になってません!?
「様などつけるなど不要です、鉄馬車の女神様……!」
「なんかキャラ変してませーん!? あなた!?」
シュナウザー女王の目が、完全にキマッている。信仰の光に満ち溢れすぎている!
するとふぶきが「ふっ……」と全てを諦めたような、悟りきった表情で笑う。
「諦めるのじゃ……。聖女は……そういう宿命にあるのじゃ……」
「そういうってなによ!?」
「人を魅了し、狂わせる力……とでもいうのかな。とかく、強い神聖なる力は、人をおかしくしてしまうのじゃ。よかったの」
「ぜんっぜん良くないんですけどぉ!?」
私は地団駄を踏んだ。
ばっ、とシュナウザー様が天に向かって手を広げる。
「さぁ! 騎士団の皆さん! これからは、三女神をたたえましょう!」
三女神って、さっきのミカデス、ヤスコニャンと同列に、私を扱うって事!?
「ミカデス様、ヤスコニャン様、スミコ様……! バンザイ!」
「「「ミカデス! ヤスコニャン! スミコ様! ばんざーーい!」」」
ドォォォォォォッ!
騎士たちの野太い歓声が、地鳴りのように響き渡る。
あ゛あ゛あ゛~。みんなおかしくなってる!
集団ヒステリーみたいに、めちゃくちゃおかしくなってるよぉお!
こ、こうなったら。
「キャンピー、環境再生車だ! 壊れたものを元に戻せるんでしょ!?」
この狂った場の空気を、正常に戻して!
ぷ~……。
何その悲しいクラクション音!?
キャンピーが申し訳なさそうに車体を沈ませた。
「残念じゃったな。環境再生車は壊れた環境を治すのであって、洗脳を解くスキルじゃないのじゃ」
とふぶき。
おいいいいいいいいいいい。
洗脳つったぞこのメタモ●。
「逃げた方が良いぞ。国の女神にされるぞ」
「ひぃ! 逃げる……!」
私は脱兎のごとく、逃げるようにキャンピーに飛び乗る。
「出発進行! キャンピー! 全速力で!」
ぷっぷ~♪
キャンピーが、みんなの前から、砂煙を上げて凄いスピードで去って行く。
キキーッ! というタイヤの摩擦音と共に、景色が後ろへ流れていく。
「またきてくださいねー! 鉄馬車の聖女さま~!」
「また会おう、聖女よ……! 達者でなぁ……!」
ふぶきがハンカチを振っているのがバックミラーに見えた。
もーこれないよぉ~。
はーあ。
私は座席に深く沈み込み、ガックリと項垂れた。
なーんで、こんな逃亡者みたいな逃げ方しないといけないわけ~。
人助けしただけなのに~。とほほ~。
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※12/27(土)
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