46.翼竜たちを舎弟にしちゃった
翼竜王とやらをぶっ飛ばしてしまった、聖女さん。
『スミコ、本当に大丈夫ですか……? 怪我はありませんか……?』
さっきから、テンコのやつが、なんかもう別人(狐?)なんじゃあないかってくらい、甲斐甲斐しく心配してくる。
ぺろぺろぺろ、と温かい舌で、私の手や頬をなめてくる。くすぐったい。
「大丈夫だって……」
『無理してませんか?』
テンコの黄金の瞳が、不安げに揺れている。
「してないから……」
『本当は痛いところがあるのに、隠してないですか?』
「だーもー! 大丈夫だってっ」
この子なんでこんな心配してるんだろ。いや、心配されて嫌な気持ちにはならないし、なんだ優しいとこもあるじゃんって、見直してはいるけどさ。
『育ての親から聞いたのです。人は脆い生き物だと』
「ふぶきが?」
『いえ、山の神が』
ほぉ、なるほどね。
『妾がついていたというのに、危ない目に遭わせてしまって……ごめんなさい』
「いや、まじ大丈夫だから。ね? 怪我してないし、無理もしてないから。ね?」
テンコが『きゅう……くぅ……』と寂しそうになくと、私の胸に鼻をぐりぐりとこすりつけてくる。
普段の尊大な態度は、いったいなんなんだって思うね。まあ、可愛い子だ。よしよし。
しかしテンコにまさかこんな一面があるとは。
まあ、自分が見てないところで、魔物に私が襲われたケースって今までなかったからね。
『むー! テンコちゃ、まぁま独り占め、だめー! そーちゃも、すりすりしたい~!』
そーちゃんが私の腕の中にすっぽり収まり、柔らかな頬をすりすりと擦り付けてきた。
「…………」くわっ。
「キャンピーさん?」
人間姿となったキャンピーが、こっちにやってきて、ぴったりとくっついてきた。
無言で私の腕を抱きしめている。
え、なに、君も心配してくれたの~? やさすぃ~。
「…………はぁ」
ここで、いつものふぶきなら「モテモテじゃの」とか言ってくると思ったのに。
なんだか、寿命が十年縮んだような、重苦しい疲れたため息をついた。
「ゲータ・ニィガの召喚者どもは、どうしてこうも……そろいもそろってなのじゃろうな……」
「私以外もこんなやらかす感じなの?」
「うむ。特に山の神がとんでもない女でな……毎度大変じゃったもんだ……」
ふぶきが遠い目をしている。山の神ってそんなやべえ女だったのか。
うん。会いたくねえ。
「って、そうだ。旦那さんを治さないと!」
たしかふぶきの旦那さん、麻痺を食らってうごけなくなってたはず!
『問題ありません』
とテンコさん。
『妾が清らかなる風を吹かせ、毒を体から吹き飛ばしてあげましたよ』
テンコがエッヘンと胸を張る。
「お、おう……気がきくじゃん」
『今回出番なしでしたからね』
そういやそうか。ねぼすけさんだったもんね、この子たち。
「…………!」くわっ!
「どったのキャンピー?」
「…………!」びしっ。
キャンピーがあさっての方角を指さす。
ばっさばっさ。
「げえ! 翼竜王!?」
翼竜王、および翼竜たちが、こっちやってきたのだっ。
「え、なに? 報復……?」
『フッ……良い度胸です。貴様ら……全員我が魔法の風で、今度こそ粉々にしてやりますよ!』
やる気十分のテンコ。尻尾が逆立ち、臨戦態勢だ。
キャンピーもスペシ●ム光線の構えを取る。魔物ぶっ殺し光線でぶっ殺してやるぞ、という意気込みらしい。
「…………!」おらぁ……!
『そーちゃも、ぶっころちゅじょ!』
みんななんでそんな殺意ましましなんすかね。頼もしいけどさ。
しかし報復かと思ったんだけど、おや?
翼竜王たち、私ら、というか、私の前にやってきた。
そして。
ごろんっ!
「……は? 何腹見せてるの?」
翼竜王、および翼竜達がみな、その場に仰向けで寝だしたのである。
硬そうな鱗に覆われた背中に反して、腹は柔らかそうだ。いやそういう問題ではない。
『申し訳ございませんでした。親分』
「お、おやぶぅうん!?」
え、なに? 私!? 私っすか!?
「な、なにいってるのあんたら……」
『魔物の世界は弱肉強食。弱いものは強い物の食い物になるのが必定。そんななか、親分は我らに慈悲をおかけくださった』
慈悲だぁ~?
「一片もかけてませんけども慈悲……」
『いいや、我らは皆生きてる。それすなわち、貴方様が我らに慈悲をかけてくれたからに他ならない! 間違いない!』
堂々と誤解答を述べているんだよな。
『親分、どうか……おれたちを貴方の舎弟にしてください……! さもなくば死にます!』
こ、こいつ。私がNOと言えない状況を作りやがった。
とんでもないやつだな。
「えーっと」
どうしよう。どうでもいい。慈悲とかかけてないし。
舎弟にするつもりもない。かといってじゃあ見殺しにはできないし。
しょうがない。
「じゃあ、いいよ。親分になるよ」
『おお!』
「ふぶきが」
「…………」
あら、ふぶきさん?
役割を押しつけられた、というのに、驚きも、突っ込みもしていなかった。
ただ、死んだ魚のような目で虚空を見つめている。
「え、いいの?」
「なんで押しつけた本人がいいのとか言ってるんじゃおぬし……」
「あ、いや。なんで我が!? とか、どうしてこうなった! とか、そういう突っ込みが来るんじゃあないかって」
「もう……慣れてるから……」
「そ、そう……」
私の知らないところで、いろいろ苦労を重ねてきたみたいだ、この狐さん。
まあ、なんにせよ、これで面倒ごとに巻き込まれずにすんだ。めでたしめでたし。
『待ちなさい……!』
テンコが、待ったをかける。
『納得できません! 親分になるべきは、スミコです! なぜ他人が……』
「キャンピー、口を塞いでテンコの」
キャンピーは速やかに、テンコに飛び乗ると、後ろからガシッと口を押さえる。
『もが……! はなせ……! もがが……! スミコの手柄を……もが……』
「はいじゃあ、ふぶき。後のことよろしく。てゆーか、良かったね。下山してる間、このあたりの魔物の調停、翼竜王に任せられるじゃん?」
翼竜王はまあまあ強かった。
こいつに、魔物達の管理を任せればいいのである。
「まあ、そうじゃな。ということじゃ、魔物どもが暴れないように、しっかり見張るように」
『はいっ、親分二号さんっ』
「……好きに呼ぶがよい」
はぁあ、とふぶきがこの世の終わりのような、重々しく長い長いため息をつく。
「な、何かあったのですの……?」
「あ、シュナウザー女王。実は……」
私があったことを説明する。
「ということで、神竜が下山しても、蒼銀竜山は大丈夫になりました。ので、二人を王都まで送ってきます」
「…………」
「シュナウザー様?」
「すごい……翼竜王といえば、昔から我らネログーマ国民を悩ませてきた、頭痛の種」
シュナウザー女王が目を丸くし、口元を手で覆っている。
あれそうだったんだ。
「神竜さますらなしえなかった、翼竜王の支配を、いとも容易くなしえてしまうなんて!」
そういえば、ふぶきに逆らっていたっけ、翼竜王。
あれ、神竜とか言うわりに、そこまで腕っ節はないのかな。翼竜王になめられていたってことだもんね。
「さすがですわ、聖女様……!」
女王がうっとりとした瞳で見つめてくる。
こうして私は翼竜達の親分となり、女王からはさらに一目置かれるようになったのだった。
なぁにこれ……?(CV武藤●戯)
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※12/24
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