44.ワイバーン、来る
翌朝。
「ふぁああ~……よく寝た……」
我々は昨晩、ふぶき所有のログハウス、その寝室の一つを使わせてもらった。
どうやらこのログハウス、部屋が有り余りまくってるらしい。
「しっかし……豪華なお部屋だこと……」
私たちが使わせて貰った、天蓋付きベッドのある、広くて清潔な部屋だ。
さらにシャンデリアなんてものも付いてる。
壁には、女性? の絵がかかれていた。
たくさんの動物たちに囲まれた女性だ。
長い髪。どこか気だるげな雰囲気を持つ。
「このログハウスの持ち主……とか?」
ふぶきも、その女性の近くに書いてあったし。そうじゃあないかと。
まあ、だからなんだって話しではあるんだが。
『すぅー……』『ふがー……』「…………」
我が可愛い娘達は、まだまだおねむ状態だった。
テンコのそばにキャンピー、そしてそーちゃんが眠っている。
眠っているとっても可愛いんだよなぁ。起きてるときも可愛いけど、口を開けば飯ー飯ーなんだもの。
おまえは未来の海賊王かよって。
「ん~……早く起きすぎた……」
暇だ。暇すぎて、馬になっちゃうわねえ……(大蛇●)。ならねーよ。
なーんて思いながら、私は上着を着て、部屋を出る。
暇なもんでね。
「ん~……暇、バンザイ」
私はてこてことログハウスの中を歩く。
木製でできた外観とは裏腹に、内装は洋風だった。まじでこれどーゆー技術なんすかね。
「おや、どうしたのじゃスミコよ」
「あらふぶき。おはよー」
「うむ。おはよう」
朝も早いというのに、ふぶきの身だしなみはバッチリだった。
お化粧までしてる。すごい。ちなみに私はすっぴんだ。こっちに来てから特に。だって大体の人、こっちだとお化粧してないもんね。逆に浮くって言う。
「朝からなんかしてたの?」
「うむ。子らの面倒を見ておったのだ」
「子……? そーちゃん以外にもいるの?」
「うむ。前の持ち主が残していった子がおってな」
はーん?
「姿は見えないんだけど……」
「みな、見慣れぬ客人にびびっておるのだ」
なるほど。ちっちゃい子って、大抵、人見知りするもんだからね。
「自分のこともしつつ、他人の子どもの面倒も見るなんて……なんというか……」
あれだ。はっきり言うのは躊躇われた。私も淑女ですので。
「はっきりっていいぞ」
「物好きねあんた」
「じゃろうな。じゃが……子どもはいい。可愛いからな」
「他人の子でも?」
「うむ。自ら腹を痛めて生んでなくても……。子は尊いものじゃ」
ふぅん。独身の私にゃわからないや。
でもふぶきは、なんというか嘘を言ってるようには思えなかった。取り繕っていない言葉だと、直感的にわかったのである。
「ところで、スミコは何をしてるのじゃ?」
「暇すぎて馬になるところだったんで、散歩」
「馬……? まあよいが。あまり外は出歩かんほうがよいぞ。この山頂以外には魔物がおるでな」
そーいやそうだったっけ。
「召喚聖女は基本的に攻撃スキルを持たぬからな」
「ほぉん……魔物に襲われたとき、対抗する術がないってこと?」
すると、ふぶきは押し黙る。
「どったの?」
「いや、違う。そうであって、違うんじゃ」
「????」
「攻撃スキルは持たぬのじゃが、召喚聖女は皆等しく、ヤバいのじゃ。だから外はむやみに歩かない方がよい」
「????????」
まったくさっぱりこれっぽっちも、ふぶきが言いたいことを理解できなかった。
攻撃スキルがないから、外を出歩かない方が良い。そういう警告なら、理解できるのだが。
どうやらそういうことではないらしい。
どーゆーこっちゃいね?
と思っていたそのときだ。
ずずぅうん。
「なに? 揺れた……?」
「敵襲じゃ! いかん! 隠れているんじゃ!」
ふぶきが私に言う。
敵が来てる。攻撃を受けたら危険、だから隠れろってことらしい。
「大丈夫よ、ふぶき。私も多少腕が立つ」
「だからいけないんじゃ……!」
だからいけないんじゃ?
「とにかく、おぬしは外に出るな! よいな、絶対にでるな! 良いな! でるなよ! でるんじゃあない!」
念を押しまくって、ふぶきが外に出て行く。
「そこまで私がか弱い存在だと思ってるのかな……?」
いやまあ、私、か弱い存在ですし。
そのポテンシャルのほぼすべてを、野外活動車に振っちゃってるからね。
キャンピーがいないと、駄目な女だからね私。
「…………」むにゃむにゃ。
「おお、キャンピー。いいとこに来た」
寝ぼけ眼の、うちの可愛いキャンピー(人間姿)が、ぽてぽて歩きながら近付いてくる。
「…………?」
「どうやら敵襲らしい」
「…………!」くわっ!
キャンピーは大変な状況なのを、瞬時に理解したらしい。
「ふぶきはここに居るように言ってきたんだけど……」
「…………」ふるふる!
「だよねー。ほっとけないよね」
「…………」こくん!
この蒼銀竜山には魔物が多く居るとのことだ。
ふぶきはまあたしかにドラゴンだし、強いから、一人でも大丈夫かもしれない。
けど、たくさんの敵が居た場合はどうだろう。
彼女一人で対処できるかはわからない。
「一緒にご飯を食べた友達が、ピンチかもしれない状況、ほうっておけないね」
「…………」こくん!
何を隠そう、こちらにはキャンピーさんがついてるのだ。
私一人ならか弱い聖女だが、極上めちゃ強キャンピングカーがいれば、問題ない!
「いくぞ、キャンピー!」
「…………」おー!
待っててふぶき。聖女&キャンピングカーが、加勢に向かうからね!
私はログハウスを出る。
少し離れた場所、森の入り口あたりに、大量の魔物がいた。
~~~~~~
翼竜
→翼を持ち、高速移動が可能な魔物。
→レベル:300
~~~~~~
翼竜とやらが、何十、何百と、このログハウスを取り囲んでいた!
『わはははは! 蒼銀竜! 今日で貴様の命も終わりだ……!』
ひときわでっかい翼竜が、ふぶきを前に、高笑いしてる。
『に、にげ……ろ……ふぶ……き……』
パパドラゴンさんは、ふぶきの隣で倒れている。
体をけいれんさせてる。
~~~~~~
蒼銀竜(雄)
【状態】
麻痺
~~~~~~
鑑定スキルで調べたところによると、どうやらパパドラゴンは、麻痺をくらってしまったようだ。
「卑怯なり……翼竜王!」
翼竜王、なるほど、あのでっかい、しゃべる翼竜が、この集団のボスって事だろう。
『卑怯で結構! 最終的に……勝てば良かろうなのだぁああああああ!』
どこぞの究極生命体っぽいセリフを吐く、翼竜王。
なるほど。ふぶきが出産直後で、本調子じゃあないタイミングを狙って、翼竜王が部下を連れてやってきたって感じか。
なんて卑怯で卑劣な奴だ。
「ふぶき!」
「スミコ! く、来るな……! 来るんじゃあない……!」
ふぶきが、私を追い返そうとする。
くっ! なんて優しい女性だろうか。
私がこいつらにやられてしまわぬよう、安全なところに居ろというのだろう。
「大丈夫、私……結構強いみたいだから」
「知っておる! 誰よりも我は知っておる!」
?????
知ってるのに、なんで来るなと言うんだろうか。
わがんね! おらわがんね!
わかることは、ただ一つ!
「敵は殲滅よ! やっちゃえキャンピー!」
「…………!」
かっ、とキャンピーが目を見開く。
巨大な野外活動車へと、変貌した。
『なんだその妙ちきりんな鉄馬車はぁ……?』
翼竜王のやつ、うちのキャンピーさんをなめ腐ってる様子。
はっ!
「消し炭にしてやるわ! キャンピー! 魔物ぶっ殺し光線!」
「なんじゃその物騒な名前のスキル! や、やめろおおお! やめてくれえええええええええ!」
しーん……。
「って、あれ? キャンピー? どうしたん、魔物ぶっ殺し光線は……?」
プー……。
え、なに? その悲しそうなクラクションって、まさか!
「が、ガソリン切れ!?」
ぷっぷー♪
正解っ、じゃあない! ああくそっ、そうだった!
野外活動車のスキル使用には、ガソリンが必要なんだったっ。
キャンピー(人間姿)が、いくらご飯食べても、ガソリンが補充される訳じゃあない!
「ちょ、ちょっとタンマ。ガソリン入れるから……タンマ」
『ふはは! 待つわけなかろうがっ!』
ああですよねえ!
ちくしょう!
『ゆけ、翼竜ども! 此の地に張られた結界はこのワガハイが中和する! 突っ込んで殺せ!』
翼竜王が吠えると、そこに空間の穴が開いた。
どうやらここ、結界が張られてるらしい。
で、王が結界を中和、つまり無効化する。
しまった、そこから翼竜たちが、雪崩のように入ってきた!
パパドラゴンは動けない。
ふぶきは産後で調子が出ない!
キャンピーはガソリン切れ!
絶体絶命じゃん!
『ふはは! まずは女! 貴様からやっつけてやる! 死ねえええええええ!』
翼竜が直ぐ近くまできた。
あ、おさらば(辞世の句)
がきん!
「…………って、あれ? 痛くない?」
翼竜が私の体にかみついてる。でも、痛くない。全然、これっぽっちも。
「あ、そうだった。私、固有スキル【野外活動】があるんだった」
『野外活動!? なんだそれは!?』
「外だと無敵」
『なんだそれは!?!?』
二度も驚愕してる翼竜王。あー、そうだったそうだった。
最近めっきり使ってないから忘れてたけど、私には野外活動っていう、外では無敵のスキルがあるんでしたね。
「ってか、邪魔。どいて」
翼竜の顎をつかんで、引き剥がす。
『ふはは! 馬鹿な女め! レベル300の翼竜だぞ? 貴様のようなか弱い存在に、引き剥がせるわけが……』
パァンッ!
『翼竜が粉々に砕け散っただとぉおおおおおおおおおおおお!?』
あいや、なんか知らないが、翼竜ぱーんなったわ。
なんで? 自爆? レベル300が? レベル。
「あ、そういえばレベル……」
私、今どんくらいだっけ。
~~~~~~
【名前】乗鞍 澄子
【種族】人間
【レベル】15000
【HP】1500000
【MP】1500000
【攻撃】15000
【防御】15000
【知性】15000
【素早さ】15000
~~~~~~
「れ、レベルい、15000!?」
「ああ、始まったのじゃ……!」
なんで、ふぶきさんは頭を抱えてるんすかね?
【おしらせ】
※12/24
新連載、スタートしました!
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『スキル【リサイクルショップ】で捨てられた悪役令嬢(英雄)や神器を仕入れて修理したら、いつの間にか最強国家になってました 〜捨てられ貴族の楽しい領地改革〜』
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