41.今夜は泊まってく
ま、何はともあれ、だ。
「無事、問題解決ね」
「ありがとうございますわ、聖女様」
ログハウス前にて。
シュナウザー女王が私に頭を下げてくる。
そもそも、ここへきたのは、神竜との交信が途絶えていたことがきっかけだった。
「すまぬの、難産で苦しんでおったのじゃ。周りにも迷惑をかけてしまったのじゃ……」
『すまぬ』
パパドラゴンさんが頭を下げる。
どうやら、雪崩はパパドラゴンさんが、妻が死にかけてるってことに動揺し、暴れまくった結果だそうだ。
「そういうときはね、助けを呼ぶといいよ」
『そうだな……その通りだ……』
そんな姿を見て、シュナウザー女王が目を輝かせる。
「神竜様と対等にお話ししてる……すごいですわ、聖女様!」
うーん、すごい、かなぁ? 普通じゃねーすかね。
「ときに、ネログーマの女王よ。このたびは大変迷惑をかけてしまったな。謝罪するのじゃ」
「ああいえ! そんな! 頭を下げないでくださいですわ!」
「スミコの言っていたとおり、ちゃんと情報共有をするべきじゃった」
そこはまあその通りよね。
でも、うーん、まあ情報を共有しなかったことで、女王出撃→問題解決に繋がったところはあったけど。
まあでも、そこは運次第なところあったしね。
「ちゃんと報連相しないとね」
「…………」
「どったの?」
ふぶきが、なんだか苦虫をかみしめたような顔になった。
「いや……全くもって、その通りじゃな……ほんと……その通りじゃ……なんてことを……」
「う、ん。まあ、そこまで深く落ち込む必要ないんじゃあない?」
「いや……駄目じゃ。我は、特に気にしないと駄目なんじゃあ……」
なんでっすかね。
まあでもなぁ、どーっすかね。ふぶきは自分の行いを大変悔いている。
女王は許すって言ったけど、それが気が済まないみたいだし。
うーん、どーっすか。あ、そーだ。
「そんじゃ、ふぶき、しばらくネログーマで暮らしたら?」
「む? ネログーマで……暮らす……?」
「そうそう。そばにいたら、今回みたいな連絡ミスは起きないっしょ。それに、国運営を手助けしてあげたら? 子育てはほら、こっちでするしさ」
赤ちゃんの面倒を見る必要がないのなら、そういう時間もあるだろうし。
『聖女の言うとおりだ。ふぶき、主はしばらく下山するがいい』
パパドラゴンさんも賛成してる。
『山の管理はおれに任せてくれ』
「よいのか?」
『ああ』
「……ありがとう、旦那よ」
ちゅっ、とふぶきがパパドラゴンさんにキスをする。あらあらうふふふ。
二人目ができるのも時間の問題かしら~。
二人目は、さすがに面倒見れないよ?
さすがの私もね。
「ということじゃ、女王よ。しばしおぬしの国で厄介になる」
「いいのですか!? ありがとうございますわっ!」
まー、ふぶき面倒見もいいし、なんかすごそうだし、国の運営に役立ってくれるでしょうね。
「ありがとうございます、聖女様っ」
「え? なんで私に……?」
「神竜様を国に招くことができたのは、スミコ様の素晴らしいお知恵があったからこそですわ!」
す、素晴らしいお知恵?
おいおい、ちょっと持ち上げすぎじゃあないっすか?
テキトーに思いついたこと言っただけよ、私。
「聖女様になんとお礼を申し上げれば……」
「もう十分にもらったって」
「ネログーマには貴族制度がありませんし……」
「不穏なこと言わないでっ」
貴族制度があったら、貴族にしてやるとかいいからね!? やめてね!?
「ああ! 国を救いながらも、金銭などを要求しない……。無欲でなんて素晴らしいのでしょう! さすが聖女様です!」
いやまあ、ここまでの依頼料はもらいますけど。
それ以上の大きなものはいらないって言ってるだけ。
「まるで聖女の神……聖女神キリエライト様や、創女神セイファート様、山女神ミカデス様のようですわ……!」
なんか知らん女神の名前を出されても。
てゆーか、神と同列に扱ってませんこの人? 私のことを。
「いや私はしがない一介の聖女なんで……」
「聖女はしがない存在ではないと思うがの」
しゃらっぷメタ●ン!
「となると、あんたら二人をネログーマの首都エヴァシマに届ける必要があるわね」
「頼んでもよいかの?」
ふぶきに尋ねられ、私はうなずく。
「いいよ。ま、うちのキャンピーさんに掛かれば、よゆーなんで。ね?」
「…………zzz」
キャンピーさんおねむだった。
食いしん坊娘たちは、お腹が満たされたからか、みんな眠っていた。
ふわっふわのテンコの毛皮にうずくまるように、キャンピーおよびそーちゃんが眠っている。
寝心地よさそうだなおい。
「泊まってくかの? この子らも眠っておるようじゃし」
キャンピーをたたき起こすわけにもいかないしね。
「じゃあ、お言葉に甘えよっかな」
「そうするがよい。朝ご飯は我が作……」
『馳走か!』『ちそー!』
あーあーあ。眠れる獣が、目を覚ましたようだ。
『朝餉の時間ですかっ?』
『あしゃげっ?』
『馳走の時間です』
『あしゃげー! ちそー! くえー!』
あーあ。
「い、いや今は夕暮れ時じゃし……なんだったらさっきご飯を食べたばかりではないっ!」
『別腹です』
『べちゅ?』
『それとこれとは別という意味です』
『べちゅー! そーちゃ、ちそー!』
ふぶきが「えーっとえーっと」と困っている。何となく、昔もこんな感じで、手を焼いていたのではないかと思えた。
「す、スミコ~」
「……やれやれ」
しょうがないなぁ(未来青だぬき風)。
「ほれ、君たち。これを見なさい」
KAmizonで購入した、【それ】を取り出す。
『なんです、その白いつぶつぶは?』
「これは……マシュマロ。お菓子です。これくって朝まで我慢なさい」
するとテンコが『ふぅ……』と人を小馬鹿にしたような息をつく。
『そのような駄菓子で、この妾の舌が満足できるとでも思っているのですか?』
君の舌を満足できなかったもののほうが、なかったように思えるんだけども。
「実はとんでもなく美味しくできるんですよこれ」
『フッ……。スミコよ。人の子よ。馬鹿言っちゃあいけません。駄菓子は所詮駄菓子。それ以上の美味になんてできるわけが……』
さて。どうだろうね。
「もしも美味しくできたら、ぎゃふんって言いなさいよあんた」
『フッ……良いでしょう。もっとも? 偉大なる山の神ミカデス様に名と力を授かりし、この高貴なる天狐。ぎゃふん、などとはしたないセリフを吐くわけがない!』
ふぅん。どうだかね。
「そーちゃん、ちょいとお力貸してちょーだい」
『よいっ! よいっ!』
テンコのそばに、そーちゃんを置いとくの、危険な気がした。
セリフが感染ってるぜ。
「んじゃ、準備しまーす」
アイテムボックスから、あー、しまった。
「どうしたのじゃ?」
「いや、焚き火台取りだそうって思ったんだけど、キャンピーの中だったんだ」
今キャンピー、人の姿で眠っているし。
取り出すわけにはいかなかった。
「うちに焚き火台あるぞ」
「まじか。貸して」
「わかった」
ふぶきはいったんログハウスに戻って、焚き火台を持ってきてくれた。
炭も用意してくれてる。ありがてえ。
「そーちゃん、火を吐いて」
『そーちゃ、火ぃはくー!』
「あ、言っとくけど火力は……」
ボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
とんでもない火力だった!
「パパドラゴンさん、消火活動を……」
『んほぉ~♡ 我が子よぉ~♡ すごい火力だぞぉ~♡ しゅごいでしゅねえ~♡』
「消火しろ親馬鹿ドラゴン!」
パパドラゴンのおかげで、なんとか山火事は防げた。
ああもうっ、ちょっと料理するつもりが、大事になっちゃうところだったよっ。
「ふふっ……懐かしいのぅ……この感じ……」




