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夢見た異世界に本当に転生したら、チートすぎるスキルを授かった件  作者: 海鳴雫


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第8話 裁きの天秤 ― 神を量る創造者

白い世界。

音も色も失われた空間に、俺は立っていた。


目の前には――黄金の鎧に身を包んだ、巨大な存在。

背丈は人の三倍。両の腕には天秤と裁きの剣。

その瞳は、氷よりも冷たく、炎よりも鋭い。


「汝、創造を名乗る者――ユウマ・タカシロ」


その声は、空間全体を震わせた。

まるで天が喋っているような感覚。

鼓膜ではなく、魂が直接震える。


「我は審判神オルデス。創造の神々に代わり、汝を量る者なり。」


「……量る?」


「この世において“創造”とは、“破壊”と同義。

汝は生を創り、死を呼び、均衡を歪めた。

故に問う――汝、自らの創造に罪を見出すか。」


「罪……だと?」


俺の喉が鳴った。

オルデスの言葉は、まっすぐに胸を貫いてくる。

――“創造の罪”。


たしかに、俺は作り出してきた。

武器を、力を、道を。

だが、その過程でいくつの命を失わせた?


魔物を倒し、人を救った。

けれどその結果、俺の“創造”が誰かの運命を変えたのも事実だ。


「創造とは、世界への介入である。

汝の行いは、世界のことわりをねじ曲げた。

故に――天秤に掛けよう。」


オルデスが腕を上げた瞬間、光の輪が空中に現れた。

二つの皿を持つ天秤。

一方には白き光(創造)、もう一方には黒き影(破壊)。


「この天秤が傾くとき、汝の魂が正か罪かを決す。」


次の瞬間、地面が砕けた。

白の大地から黒い腕が伸び、俺の足を掴む。


「ぐっ……!」


「汝の罪を映す影――“審判の幻”」


黒い靄の中から、いくつもの人影が現れる。

村を襲った魔物たち、倒した冒険者たち、そして――俺が助けられなかった少女、セリアの幻影。


「……やめろ!」


「汝の罪を拒むな。

創造者は、常に裁かれる者であれ。」


剣を構えた瞬間、影たちが一斉に襲いかかってきた。

速い。

人間ではない。


だが、俺の体が反応するより早く、オルデスの剣が振り下ろされた。

空間が揺れる。

一瞬で距離が詰まる。


「っ、速っ――!」


間一髪で受け流すが、重い。

神の一撃。

ただの物理的な斬撃じゃない。魂を“削る”感覚だ。


「汝の剣は己を守るためのもの。

だが創造とは、“己を超えて誰かを救う”もの。

その違いを、まだ理解しておらぬ。」


「そんな理屈で――!」

俺は叫びながら剣を創造する。

手の中に、光が集まり、形を取る。


「――《創造展開:エンハンス・ブレード》!」


光の剣が、オルデスの一撃を弾いた。

火花が散る。

神と人との剣がぶつかり合う。


だが、押し返せない。

まるで天地そのものを相手にしているような重さだ。


「力だけで裁きに抗えると思うか?」


オルデスが片手で天秤を傾ける。

その瞬間、俺の剣が“重く”なった。

まるで罪が形を持ったかのように。


「……これが、神の力かよ」


「違う。これは、汝の心の重さだ。」


そう言ってオルデスが指を鳴らした。

黒い影たちが再び襲いかかる。

セリアの幻影が、泣いていた。


『どうして……助けてくれなかったの……?』


その声に、膝が震えた。

刃が、鈍る。


「創造者よ。己の創造が誰かを傷つけたとき、

それでもなお“正しい”と言えるか?」


俺は答えられなかった。


剣を握る手が、わずかに震える。

視界が、白から黒に染まり始める。

天秤が、ゆっくりと傾いた。


「汝の魂、罪に傾く。」


「っ――まだ、だ……!」


俺は叫び、剣を地に突き刺した。

光が爆ぜ、影が吹き飛ぶ。


「俺は、罪を否定するつもりはない。

 でも、俺は――この力を“誰かを救うため”に使ってきた!

 それが、間違いだったなんて言わせねぇ!」


オルデスの瞳が一瞬だけ揺れた。


「……ならば、証明してみせよ。

罪を背負いながら、なお創造を選ぶ覚悟を。」


剣を構え直した瞬間、光の陣が足元に展開した。


「これより、第一段階――“魂の量定”を開始する。」


神の天秤が輝き、試練の本番が始まる。

光と闇が渦巻き、世界が歪む。


「創造者よ――己の罪を見つめよ。」


白の空間が、黒い裂け目に飲み込まれた。

次に見た光景は――かつての世界。

俺が“最初に人を救えなかった日”だった。


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