第4話 ──森のゴブリン討伐戦 ― チートの真価
「ここが……ガルドの森、か。」
昼の光が届かないほど濃い木々が並び、湿った風が肌を撫でる。
遠くから、甲高い笑い声が響いてきた。
間違いない。ゴブリンだ。
リオンが前を歩きながら、短剣を抜いた。
後ろには、弓を構える少女エルナと、盾を構える大男ガロス。
俺は最後尾――見習いポジションだ。
「いいかユウマ。ゴブリンは群れる。油断するとすぐ囲まれるぞ」
「了解。初陣だ、気を引き締める」
リオンの声は真剣そのもの。
だがその目には、俺を試すような光が宿っていた。
いいだろう。望むところだ。
俺の中で、魔力が波打つ。
体の奥に“創造”の衝動が熱く膨れ上がっていく。
その瞬間、木の陰から三匹のゴブリンが飛び出した。
錆びた短剣を構え、唾を飛ばしながら突進してくる。
「来るぞ!」
「エルナ、援護を!」
「了解っ!」
エルナの放った矢が風を裂き、先頭のゴブリンの眉間に突き刺さる。
一匹が倒れ、リオンが残りの二匹を斬り伏せた。
見事な連携――Dランクの実力は伊達じゃない。
だが、そのとき。
「っ、リオン! 左の茂みから――!」
俺が叫ぶより早く、木陰からさらに五匹のゴブリンが飛び出した。
一斉に包囲を狭め、ガロスの盾を叩く。
「チッ、囲まれたか! エルナ、後退! ユウマ、守れ!」
「了解!」
俺は剣を構えたが――普通に斬るだけじゃ追いつかない。
なら、試すしかない。
今の俺のスキルが、どこまで通じるのかを。
「【強化創造】――武器融合、発動」
剣身が輝き、青い稲妻が迸る。
俺は炎と雷、二つの属性をイメージし、融合させた。
ギィィィンッという音とともに、剣が震える。
「これが……“雷炎剣”か!」
魔力を解き放ち、一気に踏み込む。
炎が爆ぜ、雷光が走る。
剣の軌跡が稲妻の線となり、ゴブリンたちを一瞬で薙ぎ払った。
「なっ……!?」
リオンが目を見開く。
エルナも矢を放つ手を止めていた。
ゴブリンたちは立つ間もなく焼き尽くされ、黒い煙を上げて消えていく。
残るのは焦げた草の匂いと、俺の手の震えだけ。
「……ふぅ、上出来だな。」
静寂の中で、息を吐く。
魔力の消費はあるが、制御できないほどじゃない。
確かに“強化”されてる。
炎と雷の属性を掛け合わせた複合創造――これが新たな境地だ。
「ユウマ、お前……今のは何だ?」
「創造スキルの応用だよ。炎と雷を混ぜてみたら、こうなった」
「簡単に言うな……そんな芸当、普通の錬成師にはできねぇぞ」
リオンが呆れたように笑い、ガロスは感心したように頷いた。
エルナだけが、きらきらした目で俺を見ていた。
「すごい……まるで英雄様みたい……!」
「いや、まだ始まったばかりだよ。これからだ」
そう言いながらも、胸の奥に熱いものがこみ上げてくる。
この世界に来て、まだ一日。
けど今、確信した。
――俺はこの力で、生きていける。
いや、それだけじゃない。
“この世界を創り変える”ことが、できるんだ。
「よし、全員無事だな。撤収するぞ」
「了解!」
森を抜ける頃には、夕日が赤く差し込んでいた。
金色に染まる空の下、リオンが肩を叩いてきた。
「ユウマ、やるじゃねぇか。これで正式に仲間だな」
「光栄だよ。よろしくな、リオン」
「はっ、次はもっと派手に頼むぜ」
笑い合いながら、俺たちは街へと戻っていく。
だがそのとき――
森の奥で、何かがこちらを見ていた。
黒い影。
その瞳は、まるで炎のように赤く光っていた。
“神の力を持つ者”――また一人、異界に現れたか。
静かに呟く声。
それは、人ではなかった。




