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夢見た異世界に本当に転生したら、チートすぎるスキルを授かった件  作者: 海鳴雫


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第34話 崩れゆく秩序 ― 神々の陰謀

神々が去った後、世界は不気味な静寂に包まれた。

空は曇天に覆われ、風が止み、鳥の鳴き声すら消えていた。


世界の呼吸が――止まっている。


リオンが剣を鞘に収め、低く唸った。

「……おかしい。空気が“濃い”……いや、“重い”。」


エリシアが周囲を見回す。

魔力の流れが狂っていた。

本来は均一に循環するはずの“世界魔脈”が、脈打つように歪んでいる。


「……神々の干渉が、まだ残ってるのね。」


ユウマは手を空に伸ばした。

掌の上に、微かに光る粒子が浮かび上がる。

それは“神界の残滓”。

本来なら祝福の輝きであるはずが、

今は黒い靄を帯びていた。


(これは……“神の穢れ”か。)


第五の試練で生まれた虚無の反動。

それが神界と地上の境界を歪め、

世界そのものを軋ませている。


ユウマは小さく息を吐いた。

「神々が帰ったわけじゃない。

 ――見ている。上から、ずっと。」


エリシアが不安げに眉を寄せる。

「ユウマ、彼らは……何を企んでいるの?」


ユウマは答えず、ただ空を見上げた。

そこには、ほんの一瞬だけ、赤い光の裂け目が走った。


(――神界。

 奴らは、もう“静観”の段階を終えているな。)



その頃、神界――

“アストラル・サンクトゥム”、天上の議場。


七柱の神々が、螺旋状に並ぶ円卓を囲んでいた。

その中央に、蒼白い炎のような光が揺れている。


審判神オルデスが、低く口を開いた。


――報告を。第五の試練、虚無神ニヒルの消滅を確認。

だが、その力の一部が“創造者ユウマ”へ継承された。


戦神ゼルヴァが拳を握る。


――ならば放置はできん。

あの人間は、虚無と存在を融合させた“新たな神格”だ。

もはや人間ではない。


生命神イリュナが眉を寄せる。


――それでも、彼は命を救った。

人々は彼を“救世主”と呼び始めている。

それをどう見る?


時神クロノスが、冷徹な声で答える。


――危険だ。

神の座に近づく人間は、必ず秩序を乱す。

我らが“上”であるという絶対が崩れれば、

世界そのものが“定義”を失う。


オルデスは沈黙していた。

その目は冷たくも、どこか揺れている。


――では、“調律”を発動するしかない。


その言葉に、場がざわめいた。


「まさか、神界律・第零条を……!」

「あれは世界そのものを再構築する禁忌だ!」


――選択肢は他にない。

人間が創造の権限を得た時点で、秩序は瓦解する。

いずれ神と人が同位となれば、世界は自壊する。


オルデスが立ち上がる。

その背後に、無数の光輪が生まれた。


――“創造者の抹消”を提案する。


静寂。

長い沈黙ののち、

ゼルヴァが頷き、クロノスが賛同の印を掲げた。


だが一人、生命神イリュナだけが首を振る。


――あなたたちは恐れているのね。

自分たちが、“超えられる日”を。


――黙れ。これは感情の問題ではない。


――いいえ。

彼は“創造”を理解した。

それは支配ではなく、“受容”よ。

神ですら到達できなかった真理。


場の空気が張り詰めた。

オルデスの瞳が、わずかに光を帯びる。


――ならば問おう、イリュナ。

貴様は創造者を“神と認める”のか?


――違うわ。

彼は“人間”として、神を越えた。

だからこそ、滅ぼしてはいけない。


オルデスが目を伏せる。

そして、深く息を吐いた。


――……多数決で決す。


光輪が一斉に輝く。

七柱の神々の票が、天に吸い込まれるように舞う。


結果は――


――五対二で、承認。

“創造者の抹消”を可決する。


イリュナが叫ぶ。


――オルデス! あなた、理性を捨てる気!?


――理性ではない、“秩序”だ。

我らは神。均衡を保つために存在する。


――それは秩序じゃない、停滞よ!


議場の光が荒れ、空間がひび割れた。

オルデスの声が全神界に響き渡る。


――創造者ユウマを――“調律の祭壇”へ。




地上――夜。


ユウマは焚き火の前で膝を抱えていた。

リオンとエリシアは眠っている。

風は止み、星はひとつも瞬かない。


「……やっぱり、上で何か起きてるな。」


掌の中で、黒い靄が微かに揺れている。

それは神界の“余波”――

世界のバランスが崩れた証。


(俺が“神”と同じ領域に足を踏み入れたせいで……

 世界が歪み始めてる。)


彼はゆっくりと拳を握る。

「でも……もう逃げない。

 創った責任は、最後まで取る。」


その時、風が吹いた。

遠く、空の向こうから声が届く。


――創造者ユウマ。聞こえますか。


「この声……イリュナ?」


――時間がありません。

神界はあなたの抹消を決議しました。

彼らは“調律”を発動する気です。


「……やっぱり、そう来たか。」


――逃げてはだめ。

あなたが消えれば、この世界も消える。

神々は“創造者と世界”を同一として扱っているの。


ユウマは息を呑んだ。

(つまり……俺を消すことで、世界を“初期化”するつもりか。)


――止められるのは、あなたしかいません。

どうか、“神界”へ来て。

私は、あなたを導く。


ユウマは立ち上がった。

焚き火が風に煽られ、炎が大きく揺れる。


「……神々の秩序が崩れるなら、

 俺が――新しい秩序を創る。」


その言葉に、風が応えるように舞い上がった。

そして、空に浮かぶ一筋の光が彼を包み込む。


――来なさい、創造者。

神々の座が崩れる前に。


光が弾け、ユウマの姿は夜空に消えた。


彼が目指すのは――神界の中心、調律の祭壇。

そこが、神々との最終決戦の地となる。


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