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夢見た異世界に本当に転生したら、チートすぎるスキルを授かった件  作者: 海鳴雫


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第32話 創造者の影 ― 自分という虚無

静寂が、降りていた。


光の奔流が収まると、そこには何もなかった。

世界の断片も、大地も、仲間の声も――ただ、白。

無音の白だけが、永遠のように広がっていた。


「……リオン? エリシア?」


声は響かない。

音が、世界に拒絶されている。


(ここは――どこだ?)


歩いても、足音がしない。

呼吸をしても、胸が動かない。


「……俺、まだ生きてるのか?」


その瞬間、白の空間に“もう一人の自分”が立っていた。

顔も声も、すべて同じ。

だが、その瞳だけが、底なしの空洞を湛えていた。


――お前はもう、存在していない。


「……なんだ、お前は。」


――“お前自身”だよ。

ニヒルが言ったろう? “自分を創り直せ”と。

つまり――ここが“お前の内側”だ。


ユウマの影が笑う。

その笑みは冷たく、しかしどこか哀しい。


――お前は創りすぎたんだ。

世界を、神々を、奇跡を。

そしてその度に、少しずつ“自分”を削っていった。


「そんなこと……知ってるよ。」


――なら、なぜ止めなかった?

誰かを救うたび、お前は“存在の定義”を他者に譲り渡していた。

その結果、今の“お前”は――ただの器だ。


影が手を伸ばす。

触れた瞬間、身体が砂のように崩れ始めた。


「ぐっ……!」

手の甲が、腕が、粒子になって消えていく。


――もう限界なんだよ、ユウマ。

“創造者”は、創った瞬間に“創造される側”に堕ちる。

お前は、自分の存在を他人の願いに明け渡した。


「……それでも、いい。」


――何?


「俺が創った世界で、誰かが笑ってくれたなら。

 俺の存在は、それだけで意味がある。」


――それは“自己犠牲”だ。

“創造者”としては、最も愚かな結末。


「違う。

 創造は、誰かのためにあるもんだ。

 自分だけのための世界なんて、空っぽだろ。」


影が沈黙した。

その瞳に、わずかに揺らぎが生まれる。


――なら、問う。

お前が創る世界が“お前を忘れた”としたら、どうする?


「……それでも、創る。」


――なぜだ?


「誰かが、今この瞬間を生きる限り――

 俺の“創造”は消えない。」


影は目を伏せた。

次の瞬間、空間に亀裂が走り、白が黒へと反転した。


――お前は本当に、強いな。

だがその強さは、“人間”の限界を超えている。

神を越え、虚無を越え――

それでも“自分”を保とうとするお前に、私は問う。


「なんだよ。」


――“お前は、誰だ?”


静寂。


ユウマはゆっくりと目を閉じ、そして答えた。


「俺は――ユウマ。

 異世界に転生して、仲間と出会って、

 笑って、泣いて、戦ってきたただの“人間”だ。」


その言葉が、白と黒の世界を貫いた。


光が生まれる。

影が溶ける。

世界が再び、形を取り戻していく。


――……そうか。

お前は“虚無”をも認める“創造者”なのだな。


影が微笑んだ。

それは、初めて“人の表情”を見せた瞬間だった。


――ならば、最後の贈り物だ。

この魂を、お前自身へ返す。


光がユウマを包み込む。

温かく、懐かしい感覚。

遠くからリオンとエリシアの声が聞こえた。


「ユウマ! 戻ってこい!」

「お願い、あなたの世界を終わらせないで!」


「……ああ、帰るよ。」


光が弾ける。

ユウマの身体が再構築されていく。

そして、白の世界が完全に崩壊した。


――気づけば、ユウマは神殿の床に倒れていた。

傍らでリオンが涙を流し、エリシアが祈るように手を握っていた。


「……ただいま。」


その言葉を聞いて、二人は泣き笑いになった。


天井から光が差し込む。

神々の紋章がゆっくりと消え、空へと昇っていく。


――創造者よ。

お前は“存在”と“虚無”の両方を抱いた。

その心こそが、神々をも超える“真の創造”である。


空に響く声は、もう穏やかだった。

そして、第五の試練――終わった。


ユウマは拳を握りしめ、深く息を吐いた。


「これが……俺の、創造の答えだ。」


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