第3話 ──冒険者ギルドへ ― 俺の始まり
昼過ぎの太陽が、石畳の街路を照らしていた。
異世界に来てまだ半日だってのに、もう狼を一匹倒してスキル進化までしてる。
……我ながらチートだな、ほんと。
「ここが……フィルドの街か」
城壁に囲まれた中世風の町。
露店からは焼き肉の香り、行き交う人々はみんな武装していて、
馬車がゴトゴトと石畳を揺らす。
まさしく、俺が夢見た“異世界”そのものだった。
そして目当ての場所――巨大な木製の扉の上に刻まれた看板が見える。
【冒険者ギルド フィルド支部】
胸が高鳴る。
これぞ、男のロマン。
俺は深呼吸して扉を押し開けた。
中は酒場と受付が一体になったような広間で、
冒険者たちがテーブルで談笑していた。
革鎧、ローブ、筋肉、そして剣。
見渡すだけでテンションが上がる。
「初めての方ですか?」
受付のカウンターにいたのは、若い女性だった。
栗色の髪を後ろで束ね、白い制服を着ている。
まるでテンプレ通りのギルド職員だ。
「はい。今日この街に来たばかりで、冒険者登録をお願いしたいんです」
「かしこまりました。お名前は?」
「高城……いや、ユウマで。ユウマ・タカシロです」
名前を書きながら、ちょっとだけワクワクしている自分がいた。
“異世界で名乗る自分”って、なんか特別な感じがするんだよな。
手続きが進む中、職員さんが俺のステータスを確認して目を見開いた。
「す、すごい……! レベル1で【強化創造】……ですか!?」
「え、そんなに変ですか?」
「変というか……このスキル、上位職の錬成師でも滅多に持っていないんです!」
周りの冒険者たちが、ざわめき始めた。
「おいおい、レベル1で強化創造ってマジか?」
「錬金職でもSランク相当のスキルじゃねぇか」
「新顔のくせにとんでもねぇな」
……おっと、早速注目を浴びてしまったらしい。
俺としては静かにスタートしたかったんだが。
「ま、まあとりあえず登録完了です! ランクはEからになりますが……」
「大丈夫です。ぼちぼちやってみます」
カードを受け取り、ポケットにしまった瞬間――背後から声が飛んできた。
「おい、お前!」
振り返ると、銀色の髪をした青年が立っていた。
年は俺と同じくらい。腰には二本の短剣を下げている。
その瞳はどこか挑戦的だった。
「お前、今ギルド入ったばっかだろ? 一人で行動する気か?」
「まあ、そうだな」
「バカか。Eランクで単独なんて、即死コースだぞ」
言葉はきついが、どこか放っておけない感じのやつだ。
「俺はリオン。Dランクの冒険者だ。ちょうどパーティに一人欠員が出てな。お前、腕試しに一緒に来てみねぇか?」
「パーティ……?」
「ああ。ちょうど森でゴブリン掃討の依頼を受けてる。新入りにはちょうどいいだろ」
なるほど、これもまたテンプレ展開。
でも、悪くない。
「いいよ。試してみたいスキルもあるし」
「ハッ、やる気はあるみたいだな。なら決まりだ。行くぞ!」
リオンの後を追い、ギルドを出た。
胸の奥で、何かが高鳴る。
新しい出会い。
初めての仲間。
そして――初めての本格的な戦場。
異世界の空が、まるで祝福するように光っていた。
俺の冒険は、ここから本当に動き出す。




