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Chapter 2:危険な敵


本当に、この男はいったい何を企んでいるのだろうか。近づくたびに、私はいつも不吉な気配を感じる。


私とあのジャベスという奴は闘技場に上がり、互いの視線がぶつかる。その顔には驚きと自信が同居しており、まるで自分が勝つのは当然だと言わんばかりだった。私はただ早く決着をつけたかった。素早く叩き潰してしまいたかった。こういう殴り合いに関しては魔法の勉強とは違い、今まで一度も負けたことがない。いつも魔道具競技で簡単に首位を取っていたから、この勝負も勝てると自信満々だった!……とはいえ、この男も手強そうだ。


審判の教師はしばらく沈黙したのち、大声で叫んだ。


――「両選手、準備はできていますか?」


深く考えることなく、私はすぐに構えに入り、戦う準備を整えた。頭の中で一瞬にして七七四十九通りの倒し方を思い描く。


火砲の音が鳴り響き、審判の宣告が下る。


――「試合開始!」


私は瞬時に後方へと軽功で飛び、あまりに速い動きで残像を残す。そして致命的な一撃を放った。


――「デザクティヴェール!」


この技は全力で放てば、重ければ相手は即死、軽くても最低五割の魔力を廃人同然に封じる危険がある。威力は込める魔力量に比例するので、私はできるだけ抑え、彼を倒すのに十分な最低限にした。


だが、この男の反射神経も侮れなかった。ほんの一瞬でその技をかわしてみせた。無駄のない動作で、逆に私に一撃を放つ。


――「コントロール!」


黄金色のまばゆい光線が私へと向かう。


それは強制的に支配する術だった。熟練度が高ければ、魂のような非物質的存在すら支配できる。だが、この術の欠点は一直線上でしか放てないこと。だから私は軽功で横に移動し、簡単に避けてしまった。やはりこの男、制御系の魔法に関してはまだ未熟だ。


避け終わった私は、すぐさま別の強制拘束の技を重ねる。


――「プリゾン・レジェール・ア・シス・バトン!」


六本の光の棒が敵の体を突き刺し、肉体と魂を同時に拘束する。基本的に強力な術だ。だが今の私の実力では長時間維持できない。だから私はすぐに決着の技を放つ。


――「レーヴ!」


その瞬間、彼は深い眠りに落ち、まるで死んだように倒れた。


結果はもちろん私の大勝利。だが、もし私が一瞬でも遅れていたら逆に負けていたかもしれない。



---


彼は「魔力を帯びた眠り薬」で眠らされたあと目を覚まし、試合を思い返した。


彼は怒り狂い、部屋の物を叩き壊した。破片が四方に散らばり、その多くはガラスだった。なぜなら彼の持ち物はガラス製品が多かったからだ。部屋はすぐに戦場のようになった。


――「ちくしょう! あの時は完璧に計算して、最強の拘束を叩き込んだはずなのに……!」


その夜、彼は試合のことばかり考え続けた。考えれば考えるほど、くだらない負け方に苛立った。本来なら勝っていたはずだ。すぐに彼は深呼吸し、冷静さを取り戻そうとする。そして小声でつぶやいた。


――「待てよ……あの女は……確かエトワールの双子の姉じゃなかったか。名前は……オー……何とか……ああ思い出した、オーロールだ。プランタンで裕福と有名なイヴェール家の娘らしい。ならば……」


彼はいやらしい笑みを浮かべ、何やら企みを巡らせた。


――「よし! 待っていろ、このアマ! 皆の前で俺の顔を潰した報いを受けさせてやる……!」


そのとき、外から声がかかった。


――「坊ちゃま、まだお起きですか?」


――「ああ……エドモンか? 入れ!」


声の主はエドモン・オベイル。トリッシュ・ジャベスの部下であり、プランタン学院に潜入している男子学生の一人だった。幼い頃に両親を失い、ジャベス家に引き取られた彼は、魔法の素質があると見込まれ、トリッシュと共に学ぶことになった。二人の関係は育つにつれて兄弟のように親密になった。


――「坊ちゃま、今朝の試合のことで苛立っておられるのでしょう?」


――「ああ、その通りだ。考えるほどに腹が立つ……!」


――「坊ちゃま! 陛下から賜った任務をお忘れでは?」


――「しまった、忘れていた。さて、どうするか……」


――「私の考えでは……まず学院の生徒や教師たちとより親密になっておくべきです。あの女のことはひとまず脇に置き、陛下の任務遂行を最優先に! 他のことは後回しでもかまいません」


――「そうだな……危うく任務を忘れるところだった。ところで、他のワスプたちはどうしている?」


――「順調に進んでおります、坊ちゃま!」


――「よし、では明日から本格的に動き出すとしよう!」


そう言うと彼は大きなあくびをし、続けて言った。


――「ああ、もう寝ろ。真夜中だ。長く話しすぎて他の奴らに聞かれたら厄介だ」


命令に従い、エドモンは立ち上がり、姿勢を正して言った。


――「はい、坊ちゃま。おやすみなさいませ」



---


二日後は学院創立七五〇〇周年の記念日だった。その日、学院では舞踏会とミニゲームが開かれ、とても賑やかだった。夜は満月で、学院の外は真っ暗。舞踏場の中は柔らかな灯りで彩られ、優雅な音楽が流れていた。


私は背中の開いた黒いドレスを着て、淡いピンクの口紅をさし、香水を少しだけ振りかけた。その日、私は長い間探し続けていた人物と出会った。フィデル・アルベール――学院一の美男子であり、最高の才能を持つ青年だ。


彼が私をダンスに誘ったとき、私は熟れた林檎のように顔を赤らめた。私たちは美しいが少しぎこちないステップで踊った(何しろ私は不器用だから)。二人が夢中になっていると、妹のエトワールがからかうように言った。


> 「今日はつがいが揃ったみたいね」




ただの嫉妬にすぎない。あの子にはまだ求婚者が一人もいないのだから。



---


ある少年がオーロールに近づき、十メートルほど離れた場所で呟いた。


――「エスピオナージュ!」


そう言うと、彼は大広間の入口に歩み出て、トリッシュに出会い、ステップ・ヴェルトの母語で話した。


――「坊ちゃま、あの娘はかなりの魔力量を持っているようです」


彼こそがエドモン・オベイル――トリッシュ・ジャベスの忠実な部下だった。


――「やはりな。あの試合以来、奴の魔力には異常を感じていた。先に始末するべきか……」


――「ですが……」


――「だが、どうした?」


――「魔力は多いですが不安定です。実戦ではうまく発揮できないでしょう。後回しでもいいかと」


トリッシュは沈黙し、つぶやいた。


――「ふむ……そうか。だが待て、あいつはこの俺を簡単に打ち倒したんだぞ?」


> (計画はこうだ――国王ラッシュ三世の命により、ワスプたちと協力し、プランタン帝国がどのようにリュミエールやガニェ、ジュリウスのような大魔法使いを育成しているのかを探る。同時に、少しずつプランタンの魔法教育を破壊することだ。彼らは着実に学院を蝕んでいく。)




――「あっ! 忘れていました。申し訳ありません、坊ちゃま!」


――「よい。まずは奴らの信頼を得て、この学院の情報を引き出すのだ。そして徐々にあの女を孤立させる。学院全体が敵に回れば、どんなに魔力が強大でも白鳥の群れの中の一羽の鵞鳥にすぎん」


――「なるほど……さすが坊ちゃま!」


――「まずは奴を仲間から引き離す策を考えねばな。何を使えばいい……」


――「ではこうしましょう。私は監視を強化し、坊ちゃまは他の者たちの歓心を買う。そのうえで……」


(にやりと笑う)


――「ふむ、悪くない案だ。そうしよう!」


二人は計画を立て終えると、何事もなかったように舞踏会へと戻っていった。



---


第2章•終


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