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八百万の神々と千年王国の竜  作者: 涼城 鈴那
北の大国と氷雪の虚像

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休暇


俺達は帝国で「水の大結晶」の魔力をクリスタルにチャージする事に成功し、元来たルートをシスター達の世話になりつつ移動して王国まで無事戻って来た。


本当に無事だった、というか何の障害もなくあっさりと三国を回る任務が終了だ。

結局帝国領内に居たのは計4日間だけだった。いつもこんなだと良いんだがな。


帝国以外は随分と長い間駆けずり回っていたので、疲れも溜まっているだろうという事で俺達は長い休暇を取る事にした。今から一月ばかり3人バラバラに行動する事になるだろう。


俺は自身のホームタウンともいえるノルマールの街中を久々に散策していた。

随分と長い間留守にしていたようにも思えるが、あまり変わり映えはしていない。

いろいろせわしなかった元の世界と違ってなんだかんだ時間の流れが緩く感じる。


夕方、学校が終わる頃になったので久々に子供らの所へ顔を出した。


「あ!先生!お帰りなさい」

「随分とご無沙汰じゃねーか先生よぉ!」

「先生の活躍は色々と耳に入ってますよ!」

村の子供の中でも年嵩組のクレア、バーツ、ロディの3人だ、他の子は見ないな。


「ああ、通い組はもう馬車で帰っちまったよ。」

「先生、今ね、村から街まで1日5往復定期便の馬車が出てるのよ。」


「定期便って馬車が?いつの間にそんな事になったんだ?」

俺は驚いて聞き返す。


「メロンもそうだけど、農作物の収穫が増えて住人が増えたのよ。」

「そうそう、何しろ狼が巡回してるから農作物が荒らされる被害もないしさ。」

「でも一番は先生の出身地だから王国中で一番安全だって言われてるからだよ。」


そう言う事か、流石に暁様の暴れっぷりを知ってる者で、脛に傷持つ奴らは絶対お近づきになりたく無いだろうしな。まあ、安全で豊かな土地だと人も増えるだろう。


「立ち話もなんだし、皆で飯食いに行くか?」

「行く行く!色々話したい事あんだよ。」

「色々聞きたい事もあるしね。」

「先生の噂が何処まで本当か確かめたいもんな。」

と、言う事でギルド横のいつもの酒場に皆を連れて行くことになった。


しばらくぶりの酒場もやはり代り映えがしないいつもの酒場だ。

子供らも慣れたもので、各々好きな物を遠慮なく注文している、以前の何を注文したら良いか迷っていた頃が嘘の様だ。バーツはエールまで注文している。


「で、学校はどうだ、しっかり勉強してるか?」

料理が来る前にエールとジュースで喉を潤して、子供らにそう聞いてみた。


「ようやく街の奴らに追いついたって感じかな?」

「そうね、最初は文字とか覚えるの大変だったけど覚えちゃえば何とかなったね。」

「最初は周りに見下されてたけど、それも無くなったよな。」

まぁ、ビーストマスターが睨みを効かせてりゃそんな事出来ないもんな、と言う。


「ただ、ちょっと他の子と距離がまだあるかなって感じかな。」

「女子はそうかもな。男は単純だからな、学校でフットサル流行ってんだぜ?」

「俺達で休憩時間にやってたら、周りもやってみたいって言いだしてさ。」


なる程、何処の子供らも男の方が単純で一緒に遊んでりゃ蟠りも無くなるか。

女子の方も一緒に共通の趣味とか遊びをやれば、仲良くなれるんだろうがな。


・・・遊びか、そう言えばクレアはオセロ強かったな。最終的には俺も歯が立たなくなってしまった位強い。・・・よし、フットサルみたいにオセロを流行らせるか。



その時フリッツが年若の冒険者を数名引き連れて酒場に入って来た。


「やぁ、マサキ。休暇を楽しんでるかい?」

「ああ、何しても良いんだろうけど、何して良いか解らない位平和だな。」

フリッツに問われ。正直な感想を答えた。何もしなくても衣食住に困らないってすごい事なんだろうけど、時間がたつのが凄く遅く感じる。


「あら?スコットじゃない?元気してた?」

「あ、スコット!久しぶりだな。」

「本当だ、冒険者姿も板について来たかな?」

子供たちがフリッツの連れた冒険者の一人に声を掛けた、スコットと言うのか。


「やぁ、クレアにロディ、バーツ、本当に久しぶりだね。」

あ、そう言えば村に居た時、15歳になった男の子が街へ行って冒険者になったって聞いたな。それがこのスコットか。優しそうな大人しそうな少年だ。


「ああ。君がスコットか。去年冒険者になったって聞いてる。俺はマサキだ。」

「マサキさんのご活躍を耳にしない日は無いですよ、スコットです。よろしく。」

見た目通り、人当たりの良い少年だ。冒険者にあるまじき礼儀正しさもある。


「そうか、マサキの村出身だったんだねスコットは。」

フリッツが、丁度いい、相談に乗ってやってくれないか?と聞いて来た。

「相談?一体何なんだ?」

「実は・・・」

「あ、それは僕から話した方が良さそうですね。マサキさん、実は・・・」


そう言ってスコットが話してくれたのは、彼の家は元々村で大工を家業としているのだが、村では大した仕事が無い為、彼は村を出て冒険者になったと言う。


で、一年ほど冒険者をやっているのだが、魔物とはいえ生き物を殺したりするのにどうしても慣れなくて、このまま冒険者を続けて良いのか迷っていたそうだ、

そんな折、村では俺のお陰での作物の収穫量が増え、生活が安全で豊かになり、村の評判を聞きつけた移住者が増え、大工仕事が急増したらしい。


その噂を聞いて、父親に村に帰って大工を手伝いたいと言った所、

『お前みたいな不器用は先ずは街で修行しろ、人様の家なんて任せられん。』

と言われ、まだ村に帰って来るなと突っぱねられたそうだ。


それはまぁそうだろう。村を出る前に多少父親の手伝いをしていたとしても、いきなり家を建てる手伝いというのも難しかろう。家なんて材木の寸法を一つ間違えばまともに建たないのだから。不器用ってのは致命的だな。


「先ずは小物家具、椅子とかテーブルとか建具から作る事から始めなきゃな」

「そうなんだよね、木工ギルドに伝手はあるから紹介するのは問題ないんだ。」

ギルドに所属するのも問題ない、とすると問題は彼の腕か?


「・・・スコットってどっちかって言うと不器用なのか?」

俺はスコットに聞いてみた、彼が少し答えにくそうにしていたら子供らが


「スコットってどっちかって言うより、はっきり言って不器用よね?」

「ああ、不器用過ぎて不気味な位だぜ?」

「親父さんが『本当に俺の血引いてるのか?』って言う位不器用だよな?」


「ちょっと君達、それはあんまりじゃないか!?」

スコットが悲痛な叫び声を上げた、なる程そんなに不器用なのか。


まぁ、彼としては親の手伝いをして楽をさせてやりたいって考えなのだろう。

しかし、それがご両親の心労の元になってしまっては本末転倒だ。

フリッツの相談ってのも彼に引導を渡してくれという事でもないだろう。


「なぁスコット、君は木工に関わる仕事がしたいってことで良いのか?」

「あ、はい。親の作った物を売ったりとかそう言うのでも構いません。」


ん、それなら行けるかも。木製品を売る店を営むのも一つの手だ。


「よし、木製品を売る店を開くんだスコット、資金は俺が出す。」

「え?いいんですか?椅子とか家具とかの店って事ですか?」

いずれはそう言う品物に手を広げるのも良いが、先ずは・・・。


「とあるゲームの盤とコマをセットで作って売って貰いたい。」


俺のその言葉に、クレアとバーツ、ロディは顔を見合わせ目を輝かせた。


反対にスコットとフリッツはその意味が解らず困惑していた、フリッツの困惑した表情なんて珍しい物見れただけでも言った甲斐が有ったってものだ。




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