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八百万の神々と千年王国の竜  作者: 涼城 鈴那
北の大国と氷雪の虚像

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「水の大結晶」の下へ


俺達は2台の馬車に分乗して北のマレンキィ村へ向かう。


1台の馬車には俺達3人とシスターさん1名、「天狼星」のロベルトと女魔導士のジーナの2人が乗り、もう一台の馬車には「天狼星」の残りメンバー3人とシスター2名に分かれた。


今日は吹雪いて居ない為、暁様とアキラは馬車の屋根に乗っていた。外は吹雪いて無いだけで滅茶苦茶寒いのだが、アキラは薄着で全く気にせずお傍に侍っている。

シスターのデボラさんも『寒いですよ。』と忠告するのを諦めた様子だ。


デボラさんからは冒険者にも色々詮索したりしないで下さい。と釘を刺されていたので、当たり障りのない会話が暇つぶしにフリッツとの間に交わされていた。


「ロベルト達は同盟国と帝国のどっちがホームなの?」

「俺達は帝国でもう5年冒険者やってるな、同盟国は用事で行っただけだ。」

「それでギャンブルで剣を手放す事になったのかい、運悪すぎだろ?」

「いや、一度は良い所まで行ったんだぜ?金貨100枚は勝ってたんだぞ?」

フリッツが気の毒そうに苦笑した。


「いや、あのカジノ、イカサマだよ?最初はわざと負けて身包み剥ぐんだよ?」

「え?マジか?イカサマなのか!?」

「街の住人の半分くらいギャンブルで借金漬けになってたんだよ?」

「うっわぁ・・・、それに気付かず俺の愛剣取られちまったのかよ・・・。」

思わず両手で顔を覆うロベルト、そこへフリッツが問う。


「ん?取られたって、売ったんじゃなかったの?」

「売ろうにも足元見られて借金返す額に足りず、カタに取られたんだ。」

「なんだ、カジノから買い戻さなきゃいけないわけかい?」

「まぁそういう事だな・・・金貨300枚、先は長いぜ。」

フリッツが俺の顔を見てきた。ん?なんだろう?


「それ無効にできるかも知れないよ?」

「!?どういう事だ?」

フリッツが説明する。


「ここに居るマサキがね、そのカジノ相手に大勝ちして金貨16000枚勝ったんだ。」

「い、16000・・・枚!!??」

「何・・・その金額!!??」

今まで手にした事は勿論、見た事すら無い金額に、ロベルトとジーナの声が裏返る。それまで黙って会話を聞いてたシスターデボラも目を白黒させた。


「それどころか、金貨16000枚を一発勝負に賭けて更に100倍にしたんだ。」

「・・・100倍・・・160万枚・・・・?」

「・・・・・・うそ・・・・でしょ?」

皆声が掠れている、金額が大きすぎて固まってしまった。


「で、カジノが払えないって泣きつくから、マサキがカジノに借金してる者の負債を全て無かったことにすれば16000枚だけで良いって条件を飲ませたんだ。」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」


「だからカジノに掛け合えば剣も戻ってくると思うよ?」

「ほ、本当かそれ!?」

「ああ、全ての借金を帳消しにする約束だからね、僕が交渉しようか?」

「た、頼む!あの剣は爺さんの代から伝わる大事な剣なんだ!」


じゃあ、近いうちに同盟国へ行こうよ、予定合わせてさ。とフリッツ。

「解った!この仕事が終わり次第予定合わせる!お願いする!」

突然の朗報にロベルトは大喜びだ、ジーナも良かったねと声を掛ける。


「なぁフリッツ、お前そんな暇あるのか?」

「ん?この仕事終われば後は急を要する件はないだろう?しばらく休暇さ。」

ああ、確かにクリスタルへの魔力チャージが終われば、三国を回る依頼は完了か。

俺も久しぶりにのんびりするかな?


そんな当たり障りのない会話をするうちに目的のマレンキィ村に到着した。



────────────────────


マレンキィ村の修道院は村の入り口すぐの所にあった、村の入り口で馬車を降りるともう目の前が修道院だ、村の入り口には小さな石像のような物があった。


その形状はおそらくアンファング村に居た頃、川から引き揚げた像と同じものだ。

若干の形状は違うかもしれないが、同様の神様を祭ったのかも知れない。


ただ置かれている場所が村の入り口で厄災の侵入防止の為の物の様だ、川の近くにあった像とは祭られ方が違う為似ているだけの別の像かも知れない。

とは言え、像を祭るという事はかつては同じ宗教観に属した地域という事は間違いないだろう。現王国の北側は旧帝国の領地だった証でもある。


俺は修道院に入る前に村の入り口の像に手を合わせ旅の無事を祈願した。



村に着いたのはまだ日が高い時だったが、今から「水の大結晶」に行ってもチャージする間に夜中になってしまう為、ここで一泊して朝日が上がってから向かうらしい。

俺達はそれぞれ部屋を用意されたが、俺達に2部屋と言うのは変わらない。

「天狼星」チームとは建物の構造の都合上別々の建屋に分けられた。


やがて夕食の時間となり、食堂に一同が集められ一緒に食事を摂ることになった。

献立は黒パンと野菜と魚のシチューにワインという前夜と同様のものだった。

ここに居るシスターもやはり美女ぞろいだ、これも制服の魔力なのだろうか?


夕食が終わるとやはりそれぞれの部屋に戻った。何もする事が無いのでやはり書庫で本を借りて読んでみた。当然の様にそのままぐっすりと寝るはめになった。



翌朝、朝早く目が覚めた。随分と早く寝たから当たり前だがすこぶる調子が良い。

そして食堂で朝食を皆と一緒に摂り、準備が出来ると早速馬車に乗った。


なんとも順調だ、順調すぎる。馬車の窓から外を眺めると眼前に広大な氷の湖が広がっていた。シスターの説明ではこの辺りでは夏でも氷が解ける事が無いらしく、魚も棲んでいないそうだ。これも「水の大結晶」に関係しているのだろう。


氷か、共和国では氷のブロックが一個金貨一枚の価値があった。幾つか貰ってみな喜んでいた。此処では氷は逆に厄介者だ、世の中はそう上手く行かないもんだな。


順調だ、こんな時こそ気を引き締めなければ何が起こるか解らない。油断大敵だ。

・・・などと思っていたのだが、あっさりと「水の大結晶」のある平原へ着いた。


共和国ではプラム熱騒動に巻き込まれ、同盟国では落盤事故やら震災に見舞われ、四苦八苦してようやく任務を遂行してきたと言うのに、この順調さは何なんだ?

邪神の使徒は寒さに弱くてここをスルーしてるのか?


広大な「永久の平原」ではその中央付近に「水の大結晶」があった。


俺達4人と暁様が中央の「水の大結晶」まで行き、涙滴型クリスタルに魔力を注入するまで留まる。その間、護衛の「天狼星」とシスター3人は「水の大結晶」から100m程離れた場所にある小さな小屋で魔力の注入が終わるまで待機すると言う。


これだけ離れて護衛の意味があるのか?と思っていたが「大結晶」の周りは使徒に対しデバフが掛かるし、暁様が居る所に来るのは自殺に等しい。

まぁ、一応『大結晶』には用もなく無闇に近づいてはならないと言われてる所為でもあるようだが、お陰でこれからの事がやり易い。


早速4人と1柱で「大結晶」の下に行き用意したクリスタルを真下に3個設置した。

1個紛失したと言う設定なので、1個は見え難い様に雪に穴を掘って埋めた。

100m離れてれば見えないだろうが、念には念を入れるに越したことはない。


時間が掛かるので携帯用の椅子を置いて皆それに座った、小屋を背にして。

「風の大結晶」の時もそうだったが、「大結晶」の周りは過ごし易い気温になっている。体感で20度無い位か、厚着をしているので逆に暑く感じる位だ。


「・・・やっぱり警備が厳重過ぎるよね・・・。」

「ああ、帝国の人間とは一切接触させないようにしてるよな。」

「村人たちとも一切顔を合わさないのは、おかしすぎる。」


俺達は念を入れて小声で会話をする、周りに誰も居ないのは桜達を使って確認してるから間違いない、それでも念には念を、だ。


ちなみに俺が夕食後に本を読んですぐに爆睡したと言うのも、欺瞞情報だ。

寝た振りをして桜達にシスターの部屋や彼女らの会話を調べていたのだが、その際彼女らの着替えが見えてしまったりしたのは不可抗力であり、役得である。


その結果、現場のシスターたちも上から言われた通りに行動してるだけの様だ。住民に近づけさせない、護衛とも帝国内の事情が分かるような会話はさせない事など、理由は何も知らされていないらしい。


何か知られたくない、知らせたくない事情があるようだ。


「やっぱり、この後は予定通りに行動するしか無いな。」

フリッツがそう言い、俺とアレックスもそれに同意した。



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