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八百万の神々と千年王国の竜  作者: 涼城 鈴那
鉱山都市と管狐の三姉妹

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IT'S SHOWTIME !!・2


それから数日たち、街の居住区に続いて鉱山の方でも復興が進み、日常が戻りつつある日の事。エヴァルトラウティ王女からの使いがマサキの元へとやって来た。


その用件は延期となっていた王女主催の祝賀会の日程の打診だった。

そろそろ王国に帰らなくてはならない俺達へ、救国の英雄への感謝の意を込めた祝賀会を王宮にて盛大に開きたいとの事だった。

俺達が未だこの国にいるのはこの件が残っていたからだ。王女から今しばらく待ってくれと懇願されては勝手に帰る事は出来ない。


「何かご希望があれば是非とも伺って来るようにと仰せつかっております。」

そう言う使者へ、希望を言っても良いならと俺からの提案を伝える事にした。


「会場は俺の希望する場所でお願いしたいのですが・・・。」

「はい、何なりとお申し付けください。」



────────────────────


そしてマサキ達が主役の「祝賀会兼送別会」が盛大に開催された。


ただし、場所はエヴァルトラウティ王女提案の王宮内ではない。

雑然とした街中のメインストリートに大量のテーブルと椅子が集められ、中央広場に一段と高いステージが用意されて、其の壇上に主賓達の席が用意されていた。


マサキを中心にその仲間たちが席上に並び、見渡す限りの通りには町中の人々が集まっていた。そう、これはマサキがカジノに完全勝利し、債務者全ての借金を全部帳消しにした大宴会の再来だった。


ただし今回は、マサキ達が国へ帰る事を知った街の人々が自主的に、盛大に送る会を開催したいとマサキ達に申し入れて、どうせやるなら記憶に新しいマサキがその名をツヴェルグ同盟国中に広める原因となった大宴会をもう一度、となったのである。


前回はマサキの稼いだ金貨16000枚を全部使い切る、という趣旨であったが、今回は街の住人が費用を出し合っての開催となった。


マサキに対し『借金が無くなってこれだけの余裕が出来た。』との報告を兼ねた大宴会とする為、敢えてマサキは費用を出さなかったし、王宮からの費用も受け取らない住人が主催の、心からの感謝を表す送別会なのだ。


国王や王妃、重臣と言った立場の方々は警備上の都合もあり、急遽作られたマサキ達より更に一段高い来賓席が用意されていたが、エヴァルトラウティ王女は敢えてマサキと同じ壇上を選び、マサキの傍らの席へと座っていた。



司会進行も住人たちの手で行われる為、顔ぶれも大宴会の時のまま開会された。


「お前らー!明日いよいよ俺達の恩人であり友人のマサキ達が帰る事になった!」

大宴会でも壇上で叫び続けたジアップの大声は健在、震災後に要救助者を探し求めてマサキと共に街と鉱山中を駆け回ったのもすでに良い思い出だ。


『帰っても元気でなー!』『なんで帰っちゃうのー!?』『もうこっちに住めよ!』

など様々な声が飛び交う、その声を手を掲げ制止するジェスチャーで鎮める。


「マサキには借金を返しても貰ったし、街の住人の命まで助けてもらった!」

『ありがとー!マサキー!』『お母さん元気になったよー!』『もうギャンブルは懲り懲りだー!』ジアップの一言ごとに住人の感謝の声が押し寄せる。


「そこで!マサキから俺達に送る言葉があるそうだ!!」

ジアップの一段と大きな声に会場から大歓声があがり、マサキが席を立つ。


 『マサキー!帰んないでー!』『本当にありがとうなー!!』『お前は英雄だー!!』『全部お前のお陰だー!』『マサキー!愛してるー!』『この色男!!』等々


「みんな!この街に来て色々な事があった!一つ一つが忘れられない思い出だ!」

マサキが話し出すとあれだけ騒がしかった人々が一気に静まった。マサキの言葉を一言たりとも聞き逃すまいと、皆が聞き耳を立てていた。


「カジノでは勝ったり負けたりしたが、最後は皆の応援のお陰で勝利できた!」

その現場に立ち会ったであろう住人達から歓声が上がる。

『お前は本当の『THE GAMBLER』だー!』『アンタの度胸は世界一だぜー!』『アンタにゃ女神さまがくっついてるぞー』『アンタが負けるわけねぇよー!』


「邪神の使徒が襲って来た時も、俺一人じゃ何も出来なかった!でも仲間たちが居たからこそ奴らを何とか撃退できた!お前達もありがとうな!」


マサキが壇上の仲間たちにそう呼びかける、群衆からも感謝の声が殺到する。

『あんたら強すぎるぜー!』『アンタら一体何者だー!?』『マサキとその仲間に感謝だー!』『ありがとう!あなた達!』会場が割れんばかりに歓声が上がる。


その大歓声を見て聞いたエヴァルトラウティ王女は当時の光景を思い出し、マサキが大地震の中只一人で自分を救出に来た事がつい先ほどの事の様に思い浮かんだ。

『ああ、この大歓声を受ける英雄がこの私の為に危険を冒して下さったなんて。』

気付けば王女の目には大粒の涙が溢れていた。


「街や坑道が崩れた時は皆の協力があってこそ全員助けられた!ありがとう!」

今日一番の大歓声が上がった。前回のマサキが国を出る時に借金を帳消しにして貰った住人たちが感謝を込め、彼を見送りに行った際に起きた大災害。


その直後にマサキの指示で彼と一緒に救出活動に駆け回った事は、関係者たちが一丸となり、英雄と一緒に街を救えたという誇りを共有した瞬間だった。

・・・その英雄が明日にはこの国を発ってしまうのである。


「本当にありがとう!どこへ行こうと、この国の事は決して忘れない!」


マサキにこれまでの感謝を伝える者や、帰らないでと懇願する声、声が出ずにひたすら涙を流す者達であふれた空間の中で、貴賓席の王侯諸侯はマサキにかけられた国民からの大歓声の凄まじさに言葉を失っていた。

大歓声の中、マサキからの言葉が終わり、司会のジアップは進行を続ける。


「ここで王室を代表してエヴァルトラウティ王女のお言葉を頂こう。」

ジアップの紹介で王女が席を立つ、皆の視線が集まる中、王女は言う。


「マサキ様、この国に対する様々なお力添え、本当に感謝に堪えませぬ。」

群衆からは一斉に拍手が上がる、王女のマサキへの感謝に同意する拍手だ。


「マサキ様のご厚恩に応える為にも、王室と国民が一丸となって復旧作業にあたり以前と同じ、いえそれ以上の国になる事をここで誓いまする。」

再び群衆から拍手が上がる、王女が言葉を続ける事を察した人々は拍手をやめる。


「もしこの先、救国の英雄が必要とするならば、わが『ツヴェルグ同盟国』は私めを筆頭に、近衛騎士団、騎士団に限らず義勇兵に至るまでが、マサキ様の掲げる御旗の元に必ずや馳せ参じましょうぞ!!」


その王女のどこまでも英雄と進むとの宣言に、集まった群衆は大歓声で応え、両腕を天に突き出し、マサキと王女を称える声が周囲に木霊した。

そのいつまでも続くかと思われた大歓声の中、ジアップの元に国王からの使いの者が駆け寄り、ジアップがそれに頷いた。


壇上のジアップが両手を上げ、群衆に注目する様促し、辺りに静寂が戻った。


「あー、ここで国王陛下からのお言葉がある、皆静粛にな。」

『国王陛下からの言葉』という言葉に、皆が静まり貴賓席の国王が立ち上がる。



────────────────────



「私から救国の英雄マサキへ国家を代表して感謝の意を述べたい。」

群衆は国王の言葉に静かに耳を傾ける、壇上のマサキ達も姿勢を正した。


「英雄が我が国に対し行った善行の数々、人づてには聞いてはいたのだが・・・。」


「先ほどよりこの場で国民たちの英雄に対する感謝の数々を直接耳にして、まさに救国の英雄と呼ぶに相応しいと確信し、その感謝の念は我が心に深く刻み込まれた。」

国王の賛辞に群衆から歓声があがり、すぐに収まる。


「我が感謝の言葉は既に多くの国民たちが語ってくれたものと全く同じである!ならばこれ以上多くは語るまい、『ツヴェルグ同盟国』は英雄と共にあり!」

国王の宣言は群衆からの割れんばかりの大歓声と盛大な拍手で迎えられ、国王を称える声が響き渡る、何時までも続き兼ねない歓声を頃合いを見て止めるジアップ。


「国王陛下からのお言葉も頂いた所で、いよいよ乾杯だ!」

群衆は各々杯を手に取り掲げる準備をする、マサキが再び杯を手に立ち上がる。


「じゃあ皆!あとは難しい事は考えずに行くぞ!乾杯!」

『乾杯!』『かんぱーい!』乾杯の声が響き渡り、大宴会が開催された。


────────────────────


前回の大宴会同様、群衆は酒を飲み料理を喰らい、英雄を称える会話が其処ら中で繰り返され、吟遊詩人が唄い、楽団が音楽を奏でる。


前回の大宴会では債務者が壇上に上がって自らの借用書を破り捨てるパフォーマンスが酒の肴に饗されていたが、今回はマサキに感謝の言葉を告げたい者達が壇上に上がってその思いを絶叫する事になった。


「マサキー!お陰でお母さん医者に診せる事が出来たよー!」

「うちの亭主がギャンブル辞めてくれたよー!ありがとう!」

「マサキー!愛してる!」


たまに挟まれる『愛してる』の言葉に内心ムカつきながらもスーは平静を装う。

『なんでマサキの周りでこんなことばっかり起きるかな!?』

スーの隣ではミアが涙を零していた。


「どうしたのミア?」

「マサキ兄さん、いつも人助けばかりやってるんですよね、凄いなぁって思って。」

ミアは、マサキの困ってる人が居たら見捨てられない性格を、良い方向に捕らえて感動していた。それに対し自分は心が狭いのかなとスーは思う。


そのスーの目の前で綺麗な女の子がマサキに感謝の言葉を告げた後、隙をついてマサキに抱き着いた。それに対し満更でもない風のマサキにやっぱりムカつく。


「スー様!あなたのお陰で近衛騎士団、命を救われました!」


壇上でスーに対し感謝を告げる集団が現れた、近衛騎士団の連中だった。

『剣闘士』の雷撃を斬り裂き続けたスーの技量と度胸に対し尊崇の念を抱き壇上に上がった彼らは、一人一人がスーに握手を求め感謝の言葉をかけて行った。


マサキはこれを見て何か思うかな?とスーは横目でマサキを見るが、マサキは別の美女に抱き着かれている最中だった、やはりムカつく、こっち見ろや。


アレックスの剣技を褒めたたえる者や、一緒に走り回ったフリッツを労う声、メイを褒める者まで居たが彼女は食べるのに夢中で生返事だ。

ミアにも、フライドポテト美味しかったよ、またレシピ教えてね、等声が掛かる。


途中、1時間ほどで国王諸侯は退席する事になり、住人から盛大な拍手で送られた。


エヴァルトラウティ王女は変わらずマサキの横に陣取っている。

王女もまたマサキの人気に一喜一憂する事になるのだが、将来の夫が人気なのは仕方あるまいと随分前向きに考え、スー程ヤキモキしていない。


『うむ、国民にこれだけ好かれておるのだ、我らが夫婦になるのに障害は無い。』

王女の眼前で一人の女性がマサキに近寄る、しかし抱き着くような様子はない。


「マサキ様、仰る様に裏方として働いている者にはチップを渡し終わりました。」

「ああ、ありがとう。大丈夫?お金足りた?」

「金貨4000枚も使い切れませんよ、まだ3000枚残っております。」

前回も会計を任されたセルティアが今回も会計を引き受けていた。


「とりあえず料理と酒に使い切っちゃって?余ったら復興支援に回そうか?」

「解りました、全部使い切る方向で手配しておきます。」


『マサキ様は欲の無い方じゃな、王国の支援金も復興に回せと受け取らぬし。』

マサキの横顔を見ていた王女は、彼の首に掛かっている妙なものを発見した。


「マサキ様、その首から下げておられる物はなんでしょうか?」

「ああ、コレですか。これは最近皆が付けている笛の原型です。」

マサキはこれを元に笛を作った事で救助活動で大いに役立ったと説明した。


「ああ、あの時の『命の笛』でございますか、私も一つ欲しいものです。」

「そうですか、ではこれでよろしければ差し上げましょう。」

マサキはそう言って、笛を首から外し王女へと手渡した。


「まぁ!マサキ様の大切な物なのではありませんか?よろしいのですか?」

「俺には今のところ必須ではありませんし、必要なら彫金ギルドで買います。」

何しろ、避難セットに入ってた簡単な作りの笛だ。それに対し彫金ギルドではこれを参考にした上で様々なデザインの凝った物が何種類も売られている。


『マ、マサキ様の肌に触れて、マサキ様が吹いた笛を頂けるとは・・・。』

肌に触れるアクセサリーは特別な意味を持つ物でもあり、王女にとっては結婚指輪にも等しい価値があった。


その事実に王女の気分は何処までも高揚し、元々マサキの傍で飲む酒が美味く感じていたこともあって、ついつい杯を重ね今まで飲んだことのない量を飲んでいた。

流石に王女は酔いが回って来るのを感じ、ついに瞼が重くなってきた。


『酔いつぶれたら、また優しく抱きかかえて運んで下さるのかのう?』


遂に王女は酔いと睡魔に勝てず夢の中の人となった、夢の中ではマサキに抱きかかえられて王宮の自室へと運ばれて、夢の中でも実際にその振動も感じていた。

しかし現実は、スーから指示された近衛騎士団員に抱えられの退場だったのだ。


そうとは知らずに王女は自室で静かに幸せな夢を見ていた。



────────────────────


今回の宴も明け方近くまで続く事になり、会場に残されたフライドポテトを食べ歩くメイと、会計を済ませるまでは眠れないと頑張って起きているマサキ以外の仲間は壇上で夢の中だった。参加者の多くもテーブルに突っ伏して寝る者、路上で構わず鼾を掻く者様々な姿を晒していた。これでこそドワーフ、「ツヴェルグ同盟国」である。


未だ起きて酒を飲んでいる人々の中に見知った顔を見つけたマサキは声を掛ける。


「おい、アスコール。また今度も面白おかしく唄を作るつもりか?」

「やだなぁ、少々受けが良くなるよう脚色してるだけですよ、脚色。」

マサキにそう答えた吟遊詩人アスコールは変わらぬ顔色で酒を飲んでいた。

そしてマサキはふと違和感に気付く。


「でもさお前、イグニスの街に居たのに戻ってくるの早過ぎないか?」

「あれ?言いませんでしたっけ?私、転移魔法が使えるんですよ?」


え?転移魔法?

そう言えばアンファング村の村長がちらっと言ってたような?




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