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八百万の神々と千年王国の竜  作者: 涼城 鈴那
鉱山都市と管狐の三姉妹

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90/213

俺はスーを酒場に連れて行き、桶に水を用意してもらってスーの目に入った砂を洗い流す手伝いをしていた。大したことが無くて良かった。


「奴らの目的はアレックス達だったみたいだけど、返り討ちになったね。」

タオルを手渡してくれたフリッツがそう言う。


「ん?地震で街を壊滅させるんじゃなくて?アレックスとスーが?」

「んー、街の壊滅が目的なら僕たちが居ない時にやるのが確実だろう?」

そう言われればそうか、俺達が居なくなるまで待ってれば良いんだし。


「地揺れで二人が動けない所を、確実に消すためのグリフォンだったんだろう。」

「あー、落石なんて不確実な物使うより、手っ取り早くて確実か。成る程。」

「君の相棒が居ない今がチャンスだし、短期決戦で考えたんだろうね。」


『アサシン』は仲間の『剣闘士』が二人にやられる処を見て危機感を持ったんだろう。地揺れで俺以外が動けないのも見ていただろうから、地揺れで二人を動けなくしてグリフォンで確実に二人を倒す事にしたと。・・・俺は眼中にないってか?


まぁ、眼中に無かったはずの俺がグリフォンを抑えて、アレックスが塔の上まで跳躍する事が出来たのが奴らの敗因となったわけだ。

それもこれも俺達が新しい武器を手に入れたからこそ、だ。



『ふむ、奴らは無事に片付いた様じゃな。』

すぐ後ろで暁様の声がした。今お帰りの様だ。数歩遅れてメイも入店する。


『お帰りなさい、って、暁様!奴らが来るの知ってたんですか!?』

『知っていたわけではない。我が居ると来ないであろうから留守にした。』

つまり、アキラの治療を口実にわざと留守にしておびき出したと言う訳だ。


『死人が出ないまでもケガ人が出るかもしれなかったんですよ?』

『スーが居れば問題なかろうし、アレックスも神剣を手にした、そうはならん。』

それに念の為に何か起こればすぐに解る様手配していたから、異変が解りすぐに駆け戻ってきたと言う。確かに異変が起きて数分後には戻ってこられた。


『奴を残したままこの街を去る訳にはいかん故、後顧の憂いを絶っただけだ。』

確かに暁様の言う通りだ、この街の人たちがいつ起きるか解らない地震の危険性に怯えて暮らすなんて耐えられないだろう。これで良かったんだ。



メイは早速厨房に向かってフライドポテトを注文している。

「走って来たからお腹空いちゃったね。大盛り2つ急いでね。」

走って来たばかりで良く食うな、走ってなくとも喰うんだろうけど。


「メイ、肝心のアキラは治ったのか?姿が見えないけど?」

「走って来るのに邪魔だったから多分何処かに落としてきたね。」

『多分?邪魔って、おい?』

いつもアキラにはぞんざいな扱いをされるが、この時ばかりは奴に同情した。


「せめて治療場所に置いてきてやれば良かったのに・・・。」

『ああ、あれは欺瞞情報だ。そんな場所などない、放っておけば数日で治る。』

まぁ、多少不自由だろうが、今日、明日には戻って来るだろう、と暁様。


・・・アキラ無事に帰って来いよ。


────────────────────


スーの目に入った砂埃を何度も水を替えて洗い流し、だいぶ良くなったようだ。


「ちょっと見せて。」

スーの目を間近でのぞき込んで、まだ異物が残ってないか確認する。

少し充血してるが問題なさそうだ。あ、スーの瞳って綺麗な茶色なんだな。


「ちょっと・・・もういい?」

少し慌ててスーが恥ずかしそうにそう言った、あ、言われてみると顔と顔が滅茶苦茶近い。傍らでミアが食い入る様に見ているのに気付いたので、思わず照れ隠しにスーの鼻を摘まんだら、スーに滅茶苦茶怒られた。


「ちょっと!いきなり何するの!?」

「あ、ゴメン。そう言えば妹に良くこうやってたなって懐かしくて、つい・・・」


妹扱いした所為でさらにスーに怒られる結果となってしまった。

スーが平手で叩いて来るのを両手で防ごうとするが、「竜の加護」を使って的確に狙われてはどうにもならない。笑って見てたフリッツに助けを求める視線を送ると


「そう言えば、マサキの『鞭』って変な動き方をするよね。」

「そうそう、何か変なんだこの鞭、スーもそう思うだろ?」

「私、見てないから知らないんですけど!?」

そう言えばそうか、これ幸いとスーに説明がてら状況を確認する。叩くの止めて?


まず、右手で持つと違和感が凄い。左手で持つと抜群に手に馴染む、それこそ手と一体化するんじゃないかと思える程だ。

それと勝手に伸び縮みするらしい、試し振りした時は5m位だったが、グリフォンとの距離は10m以上あった上に頭部に数回巻き付いてる。20m近く伸びてるのかも?


「それとこれが大事なんだが、俺が思った通りに勝手に伸びて巻き付いた。」

俺は手すら振ってないのにこの鞭は勝手にそんな動きをしているのだ。


「え?傍から見てた分には君、振ってたよ。それも最小限に、鮮やかに?」

「え?そうなの?俺振った覚えないんだけど?」

「・・・んー。もしかして『鞭』に振らされた、のかも?」

鞭に振らされる?そんな事あるのか?


「んー。スーちゃんの刀のやりとり見てると不思議とも思えないんだよねー。」

そう言えばスーも刀と会話してたな、変わった奴だとは思ったけど。


フリッツはスーの事を「ちゃん」付けで呼ぶ、完全に妹扱いしているのだが、スー的にそれは別に良いらしい。俺が妹扱いするのが嫌なだけだと言う。


・・・話が逸れたが、確かにあの時『左手に持て』と声が聞こえた。それがこの鞭に宿るモノの声だったのかもしれないが、それ以降何も反応は無い。

・・・が、使えるのなら今は問題はない。どの位使えるか要検証だな。



────────────────────


アレックスの試し切りに付き合い鞭の扱いの無様さに笑われた武器屋に再び来た。

暁様にアレックス、スー、フリッツも一緒だ。


元来、剣や槍の試し切りの為に作られたスペースだ、そこまで広い場所ではない。

鞭を振り回すには少々狭いが、試しに立てた巻き藁を目標に鞭を振ってみるか。

あの時と同じように自分では振らずに、目標を意識してみる。が、動かない?


今度は目標を意識しながら手首を動かすと、いきなり鞭がしなって巻き藁の上部10cm程が弾け飛んだ。

『!?』

突然の事にその場に居た全員が驚いた、事の成り行きを見ていた武器屋の主まで唖然としている。成る程、多少でも鞭を動かして目標を意識すればいいのかも知れない。


ちょっと威力が強いかな?と思いつつ、もう一度試してみた。

今度はしなった鞭が巻き藁の上部に絡みつき、一瞬で巻き藁を引き抜き手元に手繰り寄せる結果となった。どうやら威力も変えられるらしい。


更に建物の傍に有った小さな樽を目標にしてみた、すると鞭は樽に巻き付き俺の手元に引き寄せた。・・・なんかコツが掴めてきた気がする。


あとはどの程度の射程があるかだな、敷地内では10m程度しか無いので建屋の上方、向こう側に見える街路樹を狙う。20m程も離れた枝に鞭は易々と絡みつき、俺と街路樹を結び付けた。


その状態で鞭を少し強めに引っ張ってみる、割としっかり枝に巻き付いてるようだ。

この状態で鞭を回収できるか頭の中で考えると、途端に鞭は街路樹を解放し、あっさりと手元に戻って来た。成る程、巻き付きもリリースも意識次第って事か。


この一連の動作を確認して俺はある事を思いついた。試しにもう一度街路樹を狙う。

しっかり巻き付いたのを確認し、その状態で街路樹を引き寄せる意識のまま、俺は

『飛翔』を使った。その途端に俺は街路樹方向へ勢いよく引っ張られ、街路樹を軽々と飛び越えた。その勢いのまま枝を解放すると、俺は空高く舞い上がった。

いうなれば簡易型のカタパルトとして使う事が出来た。


「!?」


武器屋の中庭では驚愕の表情で空中の俺を見上げる3人と不敵に笑う暁様が居た。


『ほう、なかなか面白い使い方が出来るではないか。』

暁様が面白そうに笑う。そして俺はもう一つ試す。


武器屋の中庭に面した壁面に鞭を伸ばす、そうすると鞭はなんと平面である壁にへばりつき、俺と壁とを繋げる。そして鞭を巻き戻すと俺は中庭に引き戻された。

鞭をリリースするとそのまま手元に綺麗に巻き戻った。


「そんな使い方が出来るなんて、『飛翔』持ちの君にぴったりじゃないか!」

フリッツが興奮気味に賞賛する、確かにこれは俺以外が使っても使いこなせまい。

アレックスに『ファルコ-ラスティコ』、スーに『タウゼント-フォーゲル』、俺には『名無しの鞭』と専用武器が揃った事になる。


少なくとも今まで自他ともに認める足手纏い気味だった俺が、多少は役に立てるようになった様だ。

でも「名無しの鞭」のままじゃ他の二人の武器と比べて見劣りする気がした。


『よし、なにか名前を付けてやるか。』


そう考えた俺だが、一瞬で考えを改めた。散々名付けで迷った過去を思い出し、いつか時間のある時に考えようと決めた。




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