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八百万の神々と千年王国の竜  作者: 涼城 鈴那
鉱山都市と管狐の三姉妹

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それぞれの武器

俺達は復旧の進む街中を歩いていく。


鉱山の方を後回しにして、先に居住区の復旧工事を進めているので思ったより作業は進んでいる様だ。何しろ普段から鉱石を砕いたり運搬したりと仕事でやってる鉱夫達の力が作業に生かされている為、災害から6日目だというのに街は日常を取り戻しつつある。


震災時にミアが作って振舞った『マサキ特製ドリンク』は肉体労働時に無くてはならない飲料となり、いまや全ての酒場、飲食店のメニューに載る事になった。

復旧が順調に進んでいるのもコレのお陰だともっぱらの噂に成る程、流行っている。


「もう、ほとんど復旧してると言っても良い位だね。」フリッツが言う。


この街の復旧作業は民家、商店から取り掛かり、日常生活に不必要な施設は後回しにされた為、街の人々の生活は落ち着きを取り戻した。生活に不必要な例のカジノなどは、一番最後に最期に回されるしおそらく国の補助はない。自腹で立て直しだろう。


そして彫金ギルドでは、俺の『お守り』が大量に増産されていた。

今回の件で『お守り』の有効性が証明され、今やそれまでの女神教のお守りを駆逐する勢いで全国民の手に渡ろうとしている程だそうだ。



「あとの心配事は邪神の使徒が一人残っているって事だけだね。」

フリッツが言う、俺は暁様が残した言葉を言った。


「一人じゃ大地を揺らすしか出来ないし、落石も無いし、心配要らないんじゃ?」

「んー、まぁその通りだけど、君の相棒が居ない今が絶好の機会だよね?」


奴が大地を揺らさず一人で暴れたとしても先日の『剣闘士』同様スーとアレックスで対応出来るだろう、一人で大地を揺らしても前回程の脅威は無いだろう。

そう、一人じゃ何もできないんだ。一人じゃ・・・。


「・・・ん?一人追加して二人で来たらどうなるんだ?」

沸いて来た疑問をフリッツにぶつけてみた、フリッツは少し考える。


「奴らの行動を振り返ると、かなり用心して他の力も利用してるんだよね。」

共和国では魔法が制限されるドラゴンの山で襲ってきたし、今回も大量の落石で同盟国の戦力と暁様を削りに来てるし、他の力が利用できない限り無理はしないのか。

フリッツは横を歩くアレックスとスーに視線を送ると、こう言った。


「アレックスとスーの二人で使徒を撃退できた事も想定外だろうし。」


王都で「虎獣人」が暴れた時、アレックスは「竜の加護」が無かった為「虎獣人」に歯が立たなかった。その後のドラゴンの山では「竜の加護」を受けた二人と素手の「翼竜人」は互角の戦いを繰り広げた。


この国で『剣闘士』ともう一人が襲ってきた際も、アレックスとスーの二人には武器と防具を持った剣使いで当たれば少なくとも互角以上、負けはないと考えてたろう。

しかしスーが最強武器を手に入れた為、あっけない程簡単に決着がついた。


何かこちらが不利になるような状況を作り出せない限り手を出してこないかも知れないね、・・・何か良い手があるかな?とフリッツが言ったその時。




突然、前方の上空に黒い穴のような物が出現した。


「あ・・・あれは、王都でキマイラが出た時の!?」

使徒は2人揃わず、代わりにキマイラを呼んだのか!?アレックスが叫ぶ。


「皆!建物の中に入れ!モンスターが来るぞ!」


行き交う人々はアレックスの叫びに空の穴に気付き、悲鳴を上げて建物へ逃げ込む。ここでもし、王都と同様のキマイラがやってきても今のアレックスとスーの二人なら何の問題もなく対応できるだろう。


アレックスとスーも空の穴に対し何が来ても良い様に静かに剣を構えた。


「マサキ!周りに注意して!使徒がどこかに居るはずだ!どこだ!?」

フリッツに言われ周りを注意して見回す、管狐達にも周囲を警戒させる。

少し待つと『桃』がそれに反応した。


「あそこだ!協会の屋根の上!」

教会の屋根の上には黒い軽装の頭巾を被ったようないかにも怪しい男が立って居た。

頭巾の下は仮面なのか素顔なのか、暗褐色の無表情な貌が見て取れた。


あれは『忍者』?それとも『アサシン』と言われる奴か?成る程、逃げ足の速そうな奴だ。奴は発見されたのを確認したのか、空の穴になにやら合図を送った。


「来るのか?またキマイラか!?」

フリッツが叫ぶ、そして穴からゆっくりと現れたのは王国で暴れたキマイラではなく、背中に備えた翼で悠然と羽ばたきつつ中空に表したその姿、鷲の上半身に獅子の下半身を持つ伝説上の魔物。


「グリフォン!?通常よりデカいぞ!」

アレックスとフリッツが叫ぶ。


「不味い!空に居られたらこちらは攻撃できない!」

そうだ、今この場所には暁様も居らず、アキラの投てきも無く、空中と塔の上にと距離を取る相手に対して対応が出来ない!奴ら、こんな手を考えるとは!


そして、『アサシン』が見覚えのある宝珠が装着された杖を背後から取り出し、自らの眼前に悠然と構える、まさか塔の天辺で再び地震を起こすつもりか!

地震の中、揺れに構わず動けた俺対策として高所に陣取るとは学習してるのか!


あの宝珠が赤く強く光れば、再び大地が揺れる、揺れてしまえば皆の動きが止まった所をグリフォンに襲われる、この状況で杖の発動は不味い!が、距離がある!


この距離を詰めるには俺の『飛翔』しかない、間に合うか一か八か行くしかない!

俺の『飛翔』あれから少しは上達している、今では走って移動する位の速度は出る。


「アレックス!『飛翔』で飛ぶ!」

俺は瓦礫の中に転がっていた角材を手に、『アサシン』に向かって飛んだ。


「!?・・・速い!?」

想定してたより速い速度が出た。『飛翔』を使いこなせてきたという事か?

しかし『アサシン』の手前でグリフォンの邪魔が入る、真っ直ぐ突っ込んできた10m近い巨体を水平に移動して何とか回避する。

回避の速度も速くなっている、巨体故小回りの利かないであろうグリフォン相手ならなんとか避ける事が出来る。が、塔には近づけない。


「マサキ!」

スーが叫ぶ!地上に居る彼女は何も出来ず歯がゆい思いなのだろう。


グリフォンの攻撃を避けている内に、『アサシン』の持つ杖の光が強くなる。

全く近づけない!気ばかりが焦るが、そこへ意外な人物が奴に躍りかかった。


『アレックス!?』

なんとアレックスがいつの間にか協会の屋根まで跳躍していたのである。

アレックスは民家の屋根に跳び上がり、教会の屋根、塔の上の『アサシン』の元へと、一足跳びに軽々と跳躍していた、これも神剣の効果か。


「アサシン」も一気に距離を詰めて来たアレックスに一瞬驚いたようだが、前回同様に杖の発動中は動けない。


アレックスは『アサシン』に『ファルコ-ラスティコ』で斬りかかり、「アサシン」は攻撃を躱して杖から手を放してしまい、地震の発動は不完全に終わった。

『アサシン』は屋根から跳躍し地上に飛び降りる、それを追い跳ぶアレックス。


アレックスは『アサシン』に追いすがり斬りかかる、『アサシン』は両手に持った短剣で常人では避ける事も難しいであろう連続攻撃を繰り出す。

しかしアレックスも負けずにその動きについて来る、神剣を自在に繰り出し『アサシン』を怯ませる。


「マサキ!こっち!」

スーが叫ぶ、俺ではグリフォンに手も足も出ない状況なのを打開するつもりだろう、俺はスーの元に飛ぶ。グリフォンはスーを明らかに警戒し決して軽々しく近づこうとしない、代わりにスーの頭上を飛び回り屋根を破壊して瓦礫を落としてくる。


スーは瓦礫を避けつつ刀を構えるがグリフォンは決して距離を詰めない。

こんな時に俺は全くの役に立っていないのが歯がゆく、情けなく感じられた。

右手に持った『鞭』も未だまともに扱えず、攻撃手段が何もないのだ。


グリフォンは屋根から飛び上がりスーに向かって急降下すると、スーの刀がギリギリ届かない直前で上空に逃げる。


「あ!?」

スーが声を上げた、左手で顔を抑えている。怪我ではない様だ、グリフォンは砂埃を目潰しにスーの頭上にまき散らしその視界を奪ったのだ。


「スー!?」

視界を奪われたスーに対しグリフォンが音もなく空中から襲い掛かる、不味い!

全長で10m近くはあろうかと言う巨体なのに全く音を立てず滑空して迫る。

スーは気配を絶って迫るグリフォンに全く反応出来ないでいる。

グリフォンは勝利を確信しスーにその鋭い爪で襲い掛かる!


『左手に持ちなさい。』

確かにそう聞こえた、咄嗟に『鞭』を左手に持ち変える。グリフォンの爪が今にもスーの首に届こうとする瞬間。


俺の左手から『鞭』が飛び、グリフォンの顔面を痛打し頭部に絡みつく。

突然激痛が走り、視界を奪われたグリフォンは焦り、暴れようとするが『鞭』が絡んで思う様に動けない、スーはグリフォンの暴れる羽音で獲物の位置を確信した。


「ふっ!」

思い切りよく振りぬかれた刀はグリフォンの胴体を真っ二つに両断した。

その途端にグリフォンの頭部に巻き付いていた『鞭』は俺の手元に戻って来た。


「スー!大丈夫か?」

「・・・大丈夫、砂が目に入っただけ。」

スーの傍らでは切断されたグリフォンの上半身が未だもがいていたが、大地を大量の血液で赤黒く染めて、やがて動かなくなった。

スーに手を貸した俺はアレックスと『アサシン』の攻防を確認した。


両者の間では凄まじい勢いで攻防が繰り返されている、二刀の短剣に対し、片手の神剣はその速度で負けていないどころか、圧倒しているようにすら見える。

これがアレックスの言っていた、重さを感じない剣の攻防なのだろう、『アサシン』側に焦りの色が見える程、徐々にその速さでも圧倒して行く。


短剣以上の疾さで切り返し、その打撃の一つ一つに両手剣並みの重さが宿る。

『アサシン』の短剣は弾かれ体勢を崩され、両手の短剣をクロスさせて受けても身体ごと吹き飛ばされそうになる、神剣は通常ではありえない攻撃を繰り出し続ける。


「ファルコ-ラスティコ」の制御は「竜の加護」で得た反応速度で行い、「アサシン」に見えた隙に確実に攻撃を叩きこんでいくアレックス。


そしてアレックスが水平に振った剣がいきなり、速度を変えず垂直に跳ね上がった。

アレックスが言っていた『風に乗った刃が飛ぶ。』瞬間だった。


アレックスの『ファルコ-ラスティコ』は勢いそのままに『アサシン』の頭部を顎から頭頂部まで一気に切り裂いた。頭部を叩き割られた『アサシン』はそのまま大地に膝から崩れ落ち、最期は神剣で2度袈裟切りにされ動かなくなった。


暁様がスーは『虎獣人』より強いと言っていたが、そのスーに追いつく程の力を『ファルコ-ラスティコ』がアレックスに与えた瞬間だった。

アレックスもまたその名の通りの「白隼」の最強の力を手に入れたのだ。


グリフォンと『アサシン』が死体となり戦闘が終わり静寂が戻ってくると、建物に隠れていた人々も徐々に通りに戻り始めた。


「・・・また、アンタたちに助けられたな。」

「姐さんも強かったが、アンタも化け物みたいに強いんだな・・・。」

「マサキも『飛翔』持ちだったとは、アンタら何の集まりじゃ?」


やがて現れた近衛騎士団に後の処理を頼んで、未だ視界が十分でないスーを連れて俺達は現場を後にした。


スーとアレックスは各々最強の武器を、そして俺も風変わりな「鞭」を手に入れた。

この風変わりな武器は、役目を終えると勝手に自らを一纏めに束ねてしまった。

この「鞭」もスーの刀同様に、自らの意思を持つのだろうか?


『左手に持ちなさい』、確かにそう聞こえた、おそらく女性の声。

あれがこの「鞭」に宿る「神」の声だったのだろうか?


今、この「鞭」からは何の反応も感じられない。


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