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八百万の神々と千年王国の竜  作者: 涼城 鈴那
鉱山都市と管狐の三姉妹

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"Treasure"

邪神の使徒が同盟国を壊滅させようと暴れた事で壊滅しかかった鉱山都市の復旧が落ち着いて来た頃、マサキとは同盟国の王宮の謁見の間に居た。


マサキを先頭にアレックス、フリッツにスーが並ぶ。暁様とメイ、ミアはこんな場に出たくないと酒場で待機している。アキラは戦闘で雷撃を受けた影響が残っており、右足の自由が効かない為、宿屋で大人しくさせている、


目の前の2つの玉座には左側にこの国の王、ドリアステア三世が鎮座し、右側に王妃殿下が居り、その左右には3名ずつの重臣が並ぶ。謁見の間の左右にはマサキと共に救助活動に当たった近衛騎士団が並び客人たちに好意的な眼差しを送っていた。


「マサキよ、この度の働き誠に見事であった、国を代表して礼を言おう。」

国王がそう口を開く、礼を言おうと言っているだけで礼を言った訳ではない。


「邪神の使徒に依る破壊活動の被害を最小限で食い止めた事は賞賛に値する。」

「それは街の人々の献身的な協力有ればこそ、私個人の功績では在りません。」


こういう公式の場でどんな事を話せばいいか見当も付かなかったマサキは、フリッツの提案で「こう言われたらこう返す。」「こう来たらこう言う。」という練習をこなしており、幾つかのやり取りをなんとか無難に答える事が出来ていた。


『あー、こんな堅苦しいの苦手だ。早く帰りたい・・・。』

内心そんな事を考えていると、目の前にある台座の傍らで此方に熱い視線を投げかけてくる王女と目が合った。王女は満面の笑みを浮かべていた。


「救国の英雄マサキ様に『開かずの秘宝』が贈られる事に相成りました。」

王女が国王の言葉を継いでそう言い、目の前の台座に置かれた箱を指し示した。


前回の邪神戦後に高名なドワーフの彫金職人が制作した逸品と伝えられている宝箱で、全面に見事な装飾が施されている。上部が蓋となっており前面に鍵穴があるのが解る、しかしカギは最初から作られていないという。


「この箱は知勇兼備の英雄しか開ける事が出来ないと伝えられております。」

中に何が入っているのかは不明だが、開ける事自体が重要であり、開けられた場合は中身は自動的に開放者の所有となり、王位継承権も与えられる事になるらしい。


話しを聞いたフリッツが知的好奇心満々で『自分が挑戦したかった。』と悔やんでいたが、その権利が与えられたのはマサキであり諦めるしかなかった。


「さあ、マサキ様。救国の英雄のそのお力をお試しください。」

王女がマサキに箱を開けるように促す、マサキは台座に近づき箱を確かめる。


その箱は幅80cm程、高さ20cm、奥行き30cm程の横に長い造りで、大きさの割に軽く、一人でも持ち上げる事が出来る位だ。鍵も無いのに開けろ、とは・・・?


────────────────────


『一体どんな造りになっているんだろう?』


俺は『桜』にこの箱を調べさせた、しばらく箱の周りを探っていた桜が困惑している様だ、どうやらこの箱の鍵穴も蓋も内部の空洞に通じていない様だ。

つまり、鍵穴も蓋の隙間の様なモノも装飾でしかないらしい、そしてしばらくして桜が内部に繋がる微小な隙間を見つけた様だ、それは箱の底面に有った。


箱の底面を覗いてみると、上部とはうって変わって装飾が全くない、真っ平だ。

平と言っても脚は5個付いている。四隅と中央の計5個の足だ。

『・・・何故、5個?』

俺は足が中央に有るのに引っかかった。この箱は軽い、支えるには四隅の足で十分なはずだ。何故中央に足があるのだろう?

そして箱の側面に何やら文字のような物が書かれているのに気付いた。


「その文字は古代文字で書かれておりまして、未だ解読されておりません。」

王女が説明をしてくれた、もっとヒントが欲しいと思ったが、王女達も開け方を知らないのだ、知らない物は教えようがない。


その古代文字を何とは無しに見ていたら、5行ほど書かれている文字列の最上部の1文字と、最下段の1文字にフリガナが振られたように視認できた。こちらの世界の文字もいつもこう見えているが、古代文字にも有効とは・・・。


上の文字が「地」、下の文字が「天」と書かれているのが解った。


『あれ?「地」と「天」?・・・上下逆じゃないか?』

そう疑問に思った時、桜が見つけた隙間が中央の足の部分に有る事に気付いた。

『この中央の足に何か秘密があるのか?』

俺はこの大きさの割に軽い箱を思い切って裏返してみた。


「マ、マサキ様、箱をひっくり返すなどどうなされたのですか?」

「ここの文字に『天』と『地』と書いてあって、その通りの向きにしようかと。」

俺の言葉に王女は驚き、喜色を満面に浮かべる。


「流石は救国の英雄、古代文字まで理解されようとは・・・。」

その言葉に構わず、真ん中の足を桜に調べさせた。どうやら足の中央が蓋の様になっているようなので、その部分を思い切って外してみると、丸い蓋があっさり取れた。


その瞬間、足の中央付近に空いた小さな穴から空気が漏れる音、いや吸い込む音か?が微かに聞こえた。内部に空気が吸い込まれたという事は中は真空に近い状態だったのか?この穴が桜の見つけた内部に続く唯一の隙間なのだろうが一体?


その時俺は気づいた、5個の足のうち中央のモノだけが形が違う。その形が取っ手の様に見えたのだ。俺は取っ手を握って少しずつ力を入れて引き上げようと試みた。

すると足の穴から再びかすかな吸気音が聞こえ、力を入れる毎に音は続く。


そして引き続ける事少し、真っ平らな底面に薄く文様の様なモノが浮かび上がる。


「マサキ様!これは一体?」

王女の問いには答えず、取っ手を引き続けると文様ははっきりと浮かび上がり、文様の形に段差が生じて来た。こうなると少し離れた所からでも視認できたようだ、国王も身を乗り出すだけに留まらず王妃と共に台座の前まで移動してきた。


フリッツ、アレックスとスーも思わず台座に駆け寄り、事の成り行きを見守る。


「こ、これは一体?」

徐々に段差は大きくなり、やがて完全に分離して20cm×50cm程。厚さ4cm程の板を俺は手にしていた。・・・この部分が『蓋』だったのだ。


周囲の視線は俺の持つ蓋に集められていた、この蓋の形は王国の紋章を模した形をしており、ドワーフの彫金士の超絶技巧によって、蓋に合わされる本体側の穴の形が完全に一致して隙間なく一体化するよう作られた箱だったのである。


「あ、開いた?」

「まさか本当に開けるとは!」

「この男本当に伝説の英雄だったのか!」


周囲の近衛騎士団から歓声が上がった。


────────────────────


マサキは手にした蓋の断面や裏面を興味深げに観察していた、箱の中身は無視だ。

これを作ったドワーフの技術力に思いを馳せている様子だ、精密機械の無いこの世界でこれ程の精度でこんなものを作る事が出来ようとは・・・。


そのマサキに対し、箱の中身を見た国王、王妃、王女に至っては彫像と化したか、固まってしまって声も出せないでいた。


未だかつて誰も100年来開ける事の出来なかった箱、そしてその内部にあった物。

それは、白銀の刀身に、「隼」の紋章が柄に施された「グラディウス」型の剣。


固まってしまった王族たちの中でやっと声を絞り出せたのは、王女。


「・・・・これは神剣『ファルコ-ラスティコ』!?」




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