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八百万の神々と千年王国の竜  作者: 涼城 鈴那
鉱山都市と管狐の三姉妹

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命の笛の音

邪神の使徒の脅威はあっけなく消滅したが、鉱山都市の壊滅は目前に迫っていた。


大地の揺れによって街の建屋の半ばは倒壊し、坑道は崩れ落ちその半ばが埋まり、崩れ落ちた瓦礫の中には大勢の人々が閉じ込められているのだ。

その事実に、勇者との甘い妄想に浸っていた王女は現実に引き戻される。


「いかん!瓦礫の下に民が埋もれて居る!至急救出せよ!」

王女の叫びに近衛騎士団は崩壊した街へと走る、わずかに遅れて見送りに来ていて難を逃れた人々も、隣人たちの救援にと駆け戻る。

彼らが街に入って目にした光景は、予想よりも遥かに悲惨な状況であった。


「・・・一体、どこから手を付けたら良いのだ・・・?」

「急がんと救える命も救えないぞ・・・。」

「考える暇があれば手を動かせ!片っ端から瓦礫を掘り起こすんだ!」

動ける者は人が居そうな建屋の瓦礫を掘り起こし、被災した者を探す。


「おーーい!返事をしろ!聞こえていたら返事をしてくれーーー!」

「もう少しの辛抱だ!必ず助ける!諦めるな!」


王女は目前に広がる惨状に膝から崩れ落ち、双眸からは後悔の涙が溢れ出す。

『わっしが奴らに騙されていなければ・・・こんな事には・・・。」


ヘルムートに騙された弟の事を偉そうに叱責しておきながら、自分自身も簡単に騙されこの様な結果を招いてしまうとは・・・なんという愚か者であろうか・・・。

王女が後悔の念に苛まれていたとき、周囲で異変が起こった。


「おい!笛だ!笛の音が聞こえるぞ!」

「ああ!本当だ!聞こえる!笛が聞こえる!」

「笛だ!笛の音を目安に掘り起こせ!急ぐぞ!」


半ば悪夢を見ているかのように、悲惨な現実を受け入れられなかった人々が、微かに聞こえてくる笛の音に悪夢からたたき起こされ、現実に引き戻された。


「居たぞ!もう大丈夫じゃ!しっかりしろ!」

「こっちも居たぞ!命に別状はないぞ!」

「おい!こっちも手伝ってくれ!」

急に活気づき、次々と救助報告が上がる周囲を見回し、王女は一体何が現状を変えたのかと近くの住民に問うた。


「一体『笛の音』とはなんじゃ!?何が起こっておる!?」

瓦礫に埋もれた被災者を助け出しながら、問われた鉱夫は答えた・


「この笛はアンタが捕まえようとしたマサキが考案した『お守り』なんだよ!」


前回の落盤事故で坑道内に閉じ込められた恐怖から、鉱山の仕事が手に付かなくなった鉱夫達の為に、万が一落盤事故にあっても救助を求められるようこの笛をマサキが作らせたんだよ! その言葉に王女は衝撃を受けた。


「なんと、事故の後遺症に苦しむ者を救うべくそのような事を・・・・。」

なんという先見の明、なんという慈愛の心、マサキ様の言葉を信じてこの笛をお守りとして身に着けていた者は、命が救われたという事なのか?


人々を魔の手から救い、更に『信じた者が救われる』とは神の御業に等しいのでは?

・・・そうかスーが彼の剣となり、その命すら惜しまないのは自分同様に彼の力に救われたからなのだ。今の自分も彼の為なら何でもできる気がする。


皆の借金を帳消しにした事も、なにか下心があってのものではなく、彼の大いなる慈愛の心によるものだったのだ。王女は全てを理解した気になった。


王女は彼の姿を探す、大勢の人に混じって救助活動に勤しむその姿は余りにも神々しく輝いて見える。多くの民を救ってくださった事の感謝の念を伝えねば。


自分がどれほど彼の行いに救われ、助けられ、どれほどの慕情を抱いているのかをお伝えしなければ。しかし今はその時ではない、先ずは笛の音が聞こえる限り、救助活動に専念せねば・・・そしてその後に・・・。



被災地全域で笛の音を頼りに救助活動が行われ、大方の救助がひと段落したころ、王女はマサキの元を訪れた。


「マサキ様、先ずは今までの数々の非礼をお詫びいたします。」

救助活動で流れる汗を拭きながら、マサキは神妙な面持ちの王女に驚く。


「あ、いえ、俺もお節介ばかりして問題起こして済みませんでした。」

「あなた様の考案された笛の効果を信じた者が大勢救われました。助けて頂いた民に成り代わりお礼を申し上げます。」

そう言った途端に王女の目から涙が溢れ出した。マサキを信じた者は助かったのだが、それ以外は未だ瓦礫の下の何処に居るか解らないのだ、


「犠牲になった者もあなた様を信じて居れば助かったでしょうに、残念です。」

王女のその言葉に遅ればせながら気付く。

『そうだ、笛を持っていない人はまだ瓦礫の下なんだ!』


「いえ!全員助けます!必ず俺が助けて見せます!」

マサキはそう宣言するや、管狐達を放った。


『みんな!瓦礫の下に埋もれた人を探すんだ!頼むぞ!』


管狐3姉妹は主の命で周りの瓦礫へと散る、埋もれている人の匂いを辿り、瓦礫の中に潜り込み、確実にマサキに要救助者の居る場所を伝えていく。

管狐達はどんな狭い場所でも入っていけるのだ。


「ここだ!この奥に2人!1m先と3m先に居る!」

そう言って瓦礫を押しのけるマサキにフリッツが声を掛ける。


「待ったマサキ!埋もれた人が解るのかい!?」

「止めるな!フリッツ!解るからこうしているんだ!話は後にしてくれ!」

「いや、そうじゃない。手分けするんだ!君は捜索に専念してくれ!」

フリッツは近くに居たジアップとドワーフに指示を出した。


「ジアップ!荷車に杭を用意してくれ!あと、元気な若いドワーフを大勢集めて!」

マサキとフリッツのやり取りをただ王女は見ているしかなかった。


────────────────────


マサキとフリッツ、ドワーフ達は荷車と共に走る。

マサキは管狐達の報告をそのままフリッツに伝えていく。


「この通路、一人居る!2m先だ!」

「ジアップ杭を1本頼む!」

フリッツの指示でドワーフ達は地面に杭を打ち、フリッツが杭に数字を書く。

「手の空いた者は、杭の場所を掘り返してくれ!杭は人数、数字は距離だ!」

たちまち瓦礫は取り除かれ、埋もれていた者達が救出される。


「何で埋もれた奴らが解るんじゃ!?」

「カードを見ないで当てる奴だぞ!それ位朝飯前なんだろう!」

「ピンポイントで当てて居るわ!無駄な作業をせんで済むぞ!」

「このままいけば、犠牲者は少なくて済みそうじゃわい!」


鉱山都市全体をマサキ達は走る、片っ端から被災者を探し、杭を打ち、救助する。

災害の規模から考えてもあり得ないペースで救助者は増えて行く。


「奇跡じゃ、神の御業じゃ・・・。」


王女は次々に救出されていく民達の怪我はしているが元気な姿に安堵していた。

『まさに救国の英雄とはあの方の為にある言葉であろう・・・。』

王女の目にはマサキの駈ける姿が神の御使いの姿に見えていた。




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