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八百万の神々と千年王国の竜  作者: 涼城 鈴那
鉱山都市と管狐の三姉妹

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鉱山都市壊滅

近衛騎士団とスーの睨み合いは続く。


いや、睨み合いと言うのは語弊がある。近衛騎士団は武器を構えスーを遠巻きにしているが、スーは全く動じず自然体で立ったままである。


アレックスが動こうとするが、マサキが止める、アレックスはそれに従う。

アレックスも「竜の加護」を持つ、この程度の相手なら特に問題は無い事は解る。が、マサキがここまでスーを信じているのを意外に思っただけだ。


普段からスーを主の様に信奉するアキラとメイも動かず見守るだけだ。

白狐もただ見守るのみ、「竜の加護」はそれ程のものなのだ。


只一人マサキだけは内心不安で一杯だった。暁様に『止めなくて良い。』と言われた為、動こうとしたアレックスも止めた。しかし、スーに万一に事が有ったらと不安が心をかき乱す。


『マサキよ、少しは落ち着け。』

『そうは言いますけど・・・。』

『お主以外、皆心配などしておらんぞ?』

いや、そんな事を仰られても兄に売られた喧嘩を妹が買ったような気がして・・・。


『あの刀を持ったスーは、アレックスよりはるかに強いぞ?』

『はぁ!?そんな事あるんですか?』

『スーとあの刀は相性が絶妙なのだ、あの「虎獣人」でさえ歯が立つまい。』

『・・・・』


────────────────────


王女はスーと睨みあう近衛騎士団員100人が動こうに動けない状況を歯がゆく思う。


『剣も抜かずにあれ程の重圧を周りに与えるとは、なんという女じゃ。』

近衛騎士団が動けない状況を見守っていた王国の使者が不安そうに言う。


「なんとも凄まじい気迫を感じますな、近衛騎士団が手も足も出ないとは。」

「何を仰られるか使者殿!近衛騎士団は同盟国最高の矛、強さは折り紙付きじゃ!」

「そうなのですな、失礼いたしました。しかし白い犬も居ります、ご用心を。」

使者は失言だったことを素直に詫びた。


「しかし、向こうに見える飛行艇?ですか?空を飛べるとは素晴らしいですな。」

「現在11隻が稼働中です。邪神戦の戦力としても有効な船です。」

いや、全くもって素晴らしい、王国にもこれが在れば。使者は賞賛する。


「マサキの為にこれ程の人々が集まるとは、人を誑かす術に長けて居りますな。」

「全く、詐欺師にすっかり騙されおって・・・。」

王女は苦々しく思う、これ程の人の心に容易く入り込もうとは・・・。


「今この場所が壊滅すれば同盟国の被害は甚大、いや崩壊とも言えますま。。」

「・・・使者殿、いくら何でもこの地が壊滅するような事態は起きませんぞ?」

いやいや、世の中は一寸先は闇、何が起こるか解りませんよ、と一人使者は言う。


王女は『癇に障る事を言う使者だ。』と思う、この男バルテルと言ったか?

先ほどより態度が不遜になっているように感じる、ブラームスの方は気弱な小心者と言った風であったが・・・。


・・・・ブラームスの姿が無い?先程わっしとバルテルと一緒にマサキ達から距離を取ったはずだが・・・?どこへ行った?


「あちらの山は中腹に巨大な岩が数多くあって危険ではありませんかな?」

バルテルはマサキと関係ない山の岩を気にし始めた。何が言いたいのだこいつ?


「使者殿、先ほどからもうお一方の姿が見えないようですが?」

「いやいや、もしあの岩が落ちてきたらこの辺りの被害は甚大ですな?」


「・・・使者殿!今はそんな事はどうでも良い、もう一人はどちらか!?」

「近衛騎士団と民衆、飛行艇5隻に王女殿下まで犠牲に成り兼ねません。」

さっきから人を無視して一体何を言っておるのだコイツは!?


「使者殿!?質問に答えられよ!」

「ああ・・・もう一人ですか?あれはあそこですよ。ほら、あの山の上に。」

そう言い山を指さすバルテル、その山の中腹に何か動くものがあり光が弾けた。


その途端、山の中腹から数十個はあろう巨大な岩が凄まじい音を立てて。此方目掛けて大きく跳ねながら落下してきた。



────────────────────


土煙を上げながら山から巨大な岩が転がってくる光景に人々は恐怖した。


「落石だ!!」

「こっち目掛けてくるぞ!?」

「おい!後ろは湖だ逃げ場がない!」

人々は勿論、近衛騎士団も岩が転がる恐怖の光景にパニックに陥る。


『アキラ!メイ!行くぞ!』

『はい!暁様!』

『ハイ!』

白狐がアキラとメイを引き連れてこちらに転がってくる岩目掛けて駆けだした。

矢のような速さで中腹まで一気に駈ける白狐と人狼二人は、手分けして不規則に跳ねる巨大岩石の群れの中を駆けまわる。


巨大な岩石は白狐の魔法で砕かれ、大きな岩石はアキラとメイに蹴り飛ばされ軌道を変えられ無効化する、徐々に危険性が減っていくが数が多すぎる為気が抜けない。


「おお!あの巨大な岩を無効化してくれてるぞ!」

「おい!今のうちに街まで走るぞ!」

「彼らが時間を稼いでいるうちに逃げるぞ!」

人々は巨大な岩の落下地点となっているこの地を避ける為、街の方へと走り出す。

走る人々の前方にはバルテルと王女の姿があった。



「おっと、そのまま動かないで頂こう。」


バルテルが手に持った杖を大地に突き立てると、杖の宝玉が赤く光り始め、その光が強くなるにしたがって大地が大きく揺れ始めた。



人々は初めて経験する大規模な地揺れに恐怖し、その場に崩れ落ちる。

世界の根源とも言える母なる大地が揺れるなどあってはならない現象は、この世の終焉が始まった事を人々に知らしめるに十分な恐怖だった。


屈強な近衛騎士団はおろかS級冒険者として数多くの修羅場を潜り抜けて来たアレックスでさえ、立ち上がる事が出来ないでいた。街の方では家屋が倒壊する音が聞こえ、鉱山で落盤事故で起きた土煙が幾つも発生し、多くの人々の悲鳴が響く。


王女は地揺れで街が、この国が、崩れ落ちて行くのを見ている事しか出来なかった。


普段から勇ましい姿で街を警邏し、剣の稽古に明け暮れていても所詮はこの程度の力しかなかったのだ。大地に突っ伏したまま街が崩壊していくのをただ見ているだけ。


なんと人とはか弱い存在であろうか。自慢の近衛騎士団もこの揺れに耐えられず大地に伏して神に祈るだけであり、いずれは落ちてくる岩に潰される死を待つのみとは。


・・・ああ、王女と生まれたばかりに人並みの恋も知らず、意に添わぬ結婚などしたくないが為に強い女王となる為の力を欲し、男と変わらぬ生き方をしてきた自分に女としての幸せは遂に来なかったな・・・。


こんなにあっけなく自分の人生が終わろうとは・・・王女の双眸から涙が溢れた。



────────────────────


こんな所で死ぬかも知れないとは・・・、スーも突然の死の恐怖に囚われていた。


この大地の揺れでは「竜の加護」も新たな刀も何の力にもならない、自分が立てなければこれらの力を生かす事は出来ないのだ。立ち上がりたいが足が震えて適わない。

自分どころか歴戦の猛者であるアレックスですら、大地に伏している。


この揺れで立てるものなど居まい、このまま落ちて来た岩に潰されて死ぬのだ。

大地に伏してただ死を待つ者がこれ程多く居ようとは、一人で死なないだけマシか。

・・・そうだ、お兄ちゃんは一人で先に死んでしまったが、今は少なくともマサキは私の傍にいる。一人でなくマサキと一緒なら死すら怖くないと思える。


スーは傍らのマサキを探して右手を探る、ついさっきまでこの辺りにいたハズだ。

死ぬなら彼を抱きしめて、それが叶わぬならせめて手を握る事が出来れば・・・。


しかし、スーの右手は大地を探るだけだった。

『マサキ?どこ?私を一人にしないで・・・。』

スーが最後の願いを込めてマサキの姿を求め泣き顔をそちらに向けて見たのは。


大地に己の両足を踏みしめて、只一人悠然と立ち上がるマサキの姿だった。





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