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八百万の神々と千年王国の竜  作者: 涼城 鈴那
暁の邂逅

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暁の邂逅

マスクメロンが収穫の時を迎える、明日の朝には収穫しその足で街まで荷車を曳いて売りに行かなければならないだろう。


売り物になりそうなのは現在のところ、俺がハンナさんのメロンの蔓を挿し木で増やして育てた30個だ。

子供たちが育てたメロンも順調に育ってはいるが、売り物になるにはあと10日以上はかかるだろう、俺は明日の収穫の為に早目に床に就くことにした。



夜中、何か物音がした気がして目が覚めた。

時間を確認するとまだ3:30頃、村人の誰もが寝ている時間だ。


なにやら胸騒ぎがする、俺は極力音を立てない様に起きて耳を澄まして周囲を探る。とりたてて妙な気配や物音はしないようだが、警戒は怠らない。

俺はそっと物置小屋の戸を開け、周りを確認する。

紅い月明かりの下、裏の畑を見た、収穫前のメロンが一つ残らず無くなっている!


『しまった!外部の人間に盗まれた!?』


思い当たる節はある、先日街にメロンを売りに行った時に多くの人の前で

『あと10日程後でまた売りに来る』と言ってしまっていた。

それを聞いていた良からぬ事を考えた奴が収穫時期を見当付けて盗りに来たのだろう、俺の失態だ。


まだ遠くには行っていないはずだ、街へ行ったかそれとも山の方か?

ふと暗い山の方を見ると何か光って見えた気がした、気がしただけなのだが妙に『こっちだ』と確信し、山の方へと小走りで向かった。


しばらく進むと山の麓の平地にある道の先の方で明らかに人の気配がする、3人の男が荷車を押している様だ。間違いないメロン盗難の犯人一味だ。見つけたは良いが相手の方が多い上に何か武器でも持っていたらとても勝ち目はない。しかし、何故か不安は感じない。

そのうちに荷車の動きが止まった、何かトラブルの様だ。


『おい!よそ見してんじゃねぇ!ぬかるみにハマっちまったじゃねえか!』

『よそ見じゃねえよ!揺れが酷いからお宝が割れない様抑えてたんだよ!』


どうやら車輪がぬかるみに入って動けなくなった様だ、そのまま諦めて・・・は呉れないだろうなぁ、距離を取って様子を伺っていると


『おい!そこに小屋があるぞ、板切れ剥いで車輪の下に突っ込め!』

『おぉ、丁度良い具合に古びてて簡単に壊れそうだ、』


小屋?良く見ると小屋と言うよりは「祠」の様な・・・?

盗人共が3人がかりで「祠」を壊しにかかる、

『なんてバチ当たりな・・。』とその行為に俺は戦慄した、不思議な事に盗人を追いかけると云う危険な行動の中で初めて感じた「不安」や「不穏」の感情だ。


『うわぁ!』

『!?なんだ!?どうした!?』

『小屋の中に何か居る!』


祠の中から青白い腕の様なものが伸び、1人の男を捕まえようとしている。

男は腰から剣を抜き襲い掛かる腕に切り付ける。


『うわっ!何だこりゃ!?手ごたえがねぇ!?』

『レイスか何かの類か!?剣じゃ勝ち目がねぇ!逃げるぞ!』

『おい!お宝は!?』

『諦めろ!命が大事だ!』


3人は山の方へと必死に逃げる、それを追う正体不明の「何か」、ギリギリ逃げる方が勝っている様だ。奴らもなんとか逃げおおせるかも知れない。

しかし荷車ごと荷物を放って逃げてくれたのは助かった。マスクメロン30個が無くなれば被害は甚大だった、持って帰って予定通り売りに行かなくては・・・。


荷車を確認すると確かに右の車輪がぬかるみに取られている様だ、スマホのライトで良く見てみる。あれ?これ後退すれば楽に抜けられそうだ、荷車の右側後ろを思い切り引っ張るとあっけなくぬかるみから脱出に成功した。


『あいつら月明かりだけで行動してたから気付かなかったんだな。』


荷車の向きを変え、村に戻ろうとした時、半壊した祠の方から異様な気配がした。

振り返ると先程の「正体不明の何か」が2体祠から出てくる所だった。


『やばい!1体だけじゃなかったのか!?』


奴らは俺に気付くといきなり襲い掛かって来た、もう荷車どころではない!


この時、何故か奴らから遠ざかるのではなく奴らに対峙して右手の方向にある小高い丘に行かなければならない思いにとらわれ体が勝手に走り出した。

奴らの目の前を横切る事になり、距離も詰められてしまったが「そこへ行かなければ」、と云う思いの方が強く不思議と危険は感じなかった。


『・・・この感じは?』元の世界で地震から逃れるために思わず稲荷神社の境内に駆け込んだ時と全く同じ状況だった。


『何かに呼ばれているのか?』


あの時も今も偶然ではない、そう思いつくともう後ろの『奴ら』はどうでもよくなり一刻でも早く丘の上へと気持ちが逸る。

すぐに丘の上へと続く石段が見えた、あれを上がるのか。

雑草が茂り古びてはいるが結構立派な石段だ、この上には一体何があるんだ?

一気に駆け上がる、頂上に着いた。そこは幾つもの倒れた石柱があり石の平板に覆われた床からなる崩壊した古い神殿のような場所だった。


『中央へ・・・・。』


頭の中で声が響く、やはりここへはこの声の主に導かれてきたのか?

気が付くと「奴ら」はすぐ後ろまで迫っていた。声に導かれるまま中央を目指す。

中央は一段高く作られ台座の様なものがありその上には破損した元は「神像」だったらしいモノが鎮座している。

俺はそれを目指すが倒れた石柱や散乱した石塊に阻まれすぐにはたどり着けない。

奴らは空に浮いて迫ってきているので、追い付かれる方がどう見ても、早い。

「奴ら」が俺に追いつきその手が肩に触れようとした瞬間、中央の「神像」から光が放たれ「奴ら」が2体とも跡形もなく消し飛ばされた。


俺は息を切らしながら中央に辿り着き、改めて「神像」を確認する。

それは頭部と尾、左脚を欠損した胴体と3本の脚からなっており、元の姿かたちが判別のつかないモノだったがかつての信仰の対象だった事は間違いない。


『よく来た、異界の人間よ。』頭の中に声が響く。

「あの、あなたは一体?」


『我は古よりこの世界に存在する神の一柱なり・・・』その声の主は語る。


古くからこの世界には多くの神々が存在していたが、ある時から「一神教」の信仰が始まりその他の神々への信仰が無くなっていき、多くの神々がその存在を忘れ去られてきた。一口に神と言っても小さな現象しか起こせない「精霊」のような存在から一挙手一投足で「天変地異」を引き起こす大いなる存在迄様々な力の主まで居た。


信仰が無くなっていく段階で「精霊」クラスの神は己が神であった事すら忘れ去り、そこいらの魔物と変わらない存在に変わり果て、大いなる存在もその当時の記憶も薄れ去り半分眠りについたような状態で長い年月を無為に過ごしていたという。


そんなところに八百万の神々の存在を疑わない「俺」という存在が現れ、神々への感謝を表す事を繰り返していくうちに幾柱かの神々がその記憶と力を取り戻しつつあり、この地域に徐々に影響が出始めているらしい。


今日の出来事も村で目覚めつつあった大地の神が、メロンを盗みにやって来た犯人たちを無意識にこちらへ来させるよう誘導する事で、この地域で最大の力を持つここの「神」の元へと「俺」と導いたと言う事の様だ。


『我が無意識にお前をこちらの世界に呼んだのかもしれんし、違うのかも知れない』

『しかし我が元の力と記憶を取り戻すためにはお前の協力が必要不可欠となる。』

『これ以降はお前と行動を共にする故、我に名前と依り代たる体を与えよ。』


どうやら俺はこの「神様」が復活するためにこの世界に呼ばれたと云う事らしい。

この世界での俺の役割がそうだというなら、元の世界に戻る為にもやらなきゃならない事だ。先ずはこの「神様」に名前と身体を用意しなくてはいけないのか。


名前も依り代たる身体も頭の中で強く思い浮かべればそれでいいらしいが、名前は兎も角、「身体」の方には条件があるという。

一つは『この世界を俺と一緒に行動しても不自然ではない形状。」

もう一つは『魔法適正が高いと思われる形状。』


例えば「ドラゴン」なんかだと魔法適正は問題ないだろうが、一緒に行動するには問題大ありだろう。かと言って「犬」「猫」とかなら一緒に居るには問題ないが、魔法適正を考えると魔力も低そうだし、魔法が使えるイメージもない。


結構難しい問題だ、何と言っても俺自身がゲームとかやる時にキャラメイクとか名前を決めるのに散々悩む性質なのが問題の難しさに拍車をかけている。


「白虎」、「朱雀」、「玄武」、「青龍」、「麒麟」とか霊獣とかでもいいんだろうか?

一緒に行動すると大騒ぎになりそうだし無理か、でも「朱雀」は大きな鳥って事で誤魔化せ・・・ないよな。

こっちの世界の動物とかも全然知らないんだよなぁ、元の世界で見た目がおとなしそうで「神獣」「霊獣」の類とかから選べば良いのか?


それと名前か・・・、気付くと自分が置かれた状況と周りの景色を取り留めなく頭の中で単語にしていた。

「神様」・・・『遺跡』・・・『丘の上』・・・『石柱』・・・『石畳』・・・『夜』・・・『丑三つ時』・・っていやもう明け方か、『暁』の方が近い、ん?「紅月」?ふと頭上の紅い月に目をやる、今まで幾度となく見てきた「紅い月」。

その瞬間、脳裏に強烈に再生されたのは、あの「風景」

『紅い月明かりに照らされ浮かび上がる丹い鳥居』が鮮明に脳裏に描かれた。


この世界に誘われる直前に見た、何故か心奪われた幻想的な風景、


『紅月・・・白い獣か、面白い。』


頭の中で満足そうな声がしたと思った瞬間、目の前に白く輝く光が現れた。

その光は徐々に何らかの形に変化をし始め、丁度その頃山の端に静かに昇り始めた朝日の白い光を浴びながらも、自ら白く輝く美しい狐の姿が現れた。


──── 九つの尾を持った姿で。



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