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八百万の神々と千年王国の竜  作者: 涼城 鈴那
鉱山都市と管狐の三姉妹

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王女エヴァルトラウティ

同盟国の城内、王女エヴァルトラウティの私室にて、王女の座るソファの対面で小柄な体を更に縮こまらせてうなだれているのは、弟のウァーレン王子だった。


無言で弟を見つめる王女の視線を、体を小さくすることで避けられるのではないか、または時間が経てば視線が無くなるのではないかと、微かな期待をしている様だ。


「・・・ウァーレン。」

「はい!姉上。」

姉の一言に、思わず姿勢を正しその視線を真面に受けてしまった弟王子。


「何故、あのような者を傍に置いていたのか?」

「な、なにかと使い勝手の良い者で、おまけに無償で尽くしてくれておりまして。」


こっそりカジノに入り浸っていた頃、すっかり負けが込んで少なくない金額の借金を作ってしまった時に声を掛けてきたヘルムートに、賭けのコツを教わって借金を幾らか減らせた事がその切っ掛けとなったようだ。


「普通に考えて、カジノとグルだと思わんのかお前は?」

「・・・あ、あとから考えたらそう思えてきましたが、と、当時は・・。」


『・・・全くこの弟は王位継承権第二位の自覚がなっておらん…。』

王女はため息交じりにそう思う、性格が穏やかなだけが取り柄の弟。

この弟が王位を継げば、たちまち民意は離れその結果、他家に王位を奪われる事に成り兼ねん。


『・・・やはり、わっしがしっかりせねばならんのか。』


このまま女王を継いだ場合に迎える婿は、15歳も上の冴えない見た目のオッサンだ。それだけは避けたい、王女の身では恋愛もまともに出来なかったが、一生を共にするのはもっとマシな相手が良い。


結婚相手を自分で選べるように誰もが認める強い女王にならねばならない。

その為に今まで体を鍛え屈強な兵を選別した近衛騎士団を率い、国内の荒事にも自ら首を突っ込んで強い王女の名を欲しいままにしてきた。


本心はまともな恋愛がしたかっただけなのだが、それは口が裂けても言えん。


「姉上、ヘルムート達はどうなったのでしょう?」

「ああ、奴らか。奴らは王国の女神教団へと引き渡した。」

なんでも教団幹部の子女まで手を出していた疑いがあり、手配書が回っておった。

その様な大それた事を仕出かすような者には見えなかったが、事実だとしたら子女の行方次第では極刑は免れまい。


「今回は運よく借金が帳消しになったが、このような事は二度とするなよ?」

「はい!それはもちろんです、姉上。」

返事だけは良いが・・・『もう良い、下がれ。』そう言うと、嬉しそうに戻っていく。

全く持って頼りない。


・・・やはりまだまだ力が必要だ。あのスーという女、戦力になるな・・・。



────────────────────



スーフェイは新たな自分の力の感触を確かめるように刀を振る。

見た目は以前の『アレス-シュナイデン』と全く同じ拵になっているが、感触は全く違う。自らスーフェイの愛刀に志願して来ただけあって、一振り毎に手に馴染む。


ドワーフに頼んで自分に矢を射かけさせたが、竜の加護と相まって面白いように矢を弾くことが出来る。自分で矢の軌道を読んで薙ぐのではなく、刀が自分から主を守る為に積極的に動いている気さえする。


『マサキが言っていたな、全ての物には神が宿る、と。』

この場合の神は、唯一神の様な大きな力ではなく精霊のようなモノらしいが、今この刀を振ってみてこういう事を言っていたんだなと理解できた。


一通り刀の感触を試し終わったスーフェイは刀を鞘に納め、マサキ達が居るであろう酒場に向かう。



────────────────────


「お前、本当によく喰うな?」

「腹が減ってたら、いざと云うときにお役に立てませんので。」

大皿を手に肉料理を頬張るメイ、追加でフライドポテトを山盛りに注文した。


フライドポテトは『ヴィルトカッツェ』にしか作り方を教えていなかったのだが、メイがここの酒場では作ってないと知ってショックを受けて大変だったため、ミアが女将さんに作り方を伝授した結果、ここの名物料理となってしまった。


「よくそんなに食べて太らないな?」

何の気なしにそう聞いたが、アキラとメイは狼が本体でヒトの姿が仮の姿なので、本体が幾ら太ろうとも、ヒトの体形は全く変わらないしある程度は融通が利くそうだ。


「メイって体の大きさとか変えれるの?」ミアが尋ねる。

肉を頬張りながら頷くメイ、現状は178㎝の俺と大差ない身長だが、160㎝のミアより少し小さい位まで変えられるそうだ。それだけでなくスリーサイズも手足の長さも思い通りらしいが、今のこの姿が一番楽な体型だという。


ミアがそれを聞いてしきりに羨ましがっていた所へスーフェイが帰って来た。


「お帰り、スー・・・。」

思わず「スーフェイ」と言いそうになって、慌てて誤魔化した。

スーからこの街では「スーフェイ」と呼ばないで欲しいと言われているからだ。

なんでも俺以外からスーフェイと呼ばれたくないらしい。ただ、これが続くと共和国に戻っても「スー」と言ってしまって怒られそうではある。


「あれ?マサキとミアとメイだけ?」

そうなのだ、フリッツとアレックスは盗賊の一件で情報を集めるためにあちこちに出向いている。暁様はアキラを連れて街の外へと魔石を収集に行っており、常に傍らに居られるアキラはご満悦だ。実際は荷物持ちなのだが本人が良いならそれで良い。


「マサキ、午後から何か用が有るって言ってなかった?」

スーからそう聞かれ、それに答えた。


「あ、うん。服買いに行かないか?ミアとメイも含めて。お金は出す。」

「え?あたしも良いんですか?兄さん?」

何と言っても、いきなり押しかけて同盟国まで連れてきてしまった為、この二人着替えの用意がない。おまけにメイは今着てるローブの下はほぼ裸である

動き回る度に中身がちらちらして目のやり場に非常に困る。


メイは、『ヴィルトカッツェ』前で狼化したときに服はそのまま置いて来てしまっていたのだ。飛行艇の甲板の上でヒト化した時は、いきなり素っ裸になったので危うくこの世界初の航空事故になりそうになった。


カジノでの勝ち分は全部使い切ったが、暁様が毎日魔石を拾ってくるので、所持金は金貨で1000枚以上ある。いくら大食いのメイでもその食費位は何ともないし、服程度何着買っても問題ない、というか日夜増え続けるから使わなければならない。


そういう訳でまだ食い足りないというメイを宥めて服を買いに街へ出た。



────────────────────



街の服屋へ向かう途中の大通り、俺を先頭に4人で歩いているとスーとメイの二人は通行人からの視線を集めまくっている。二人とも系統は違うは美女と呼んでも誰も否定する者は居ないないであろうレベルだ。

俺とミアは引き立て役どころか、皆の視界にすら入っていないのだろう、多分。

『美女が見えない、邪魔だ、どけ。』と皆の視線が言っている。


やがて前方からプレートメイルを着込んだ屈強なドワーフの集団が現れた。

どこかで見た覚えがあるその姿は、ウァーレン王子殿下の館で盗賊達を取り押さえた近衛騎士団一行のものだった。


他の通行人に習い道の脇に寄り、一行の進行の邪魔にならないようにしたのだが、一行は俺達の目前で停止した。そして聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「スーよ、少々わっしに付き合って貰えんか?」


王女エヴァルトラウティ殿下がスーに同行する様に要請してきたのだった。




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