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八百万の神々と千年王国の竜  作者: 涼城 鈴那
鉱山都市と管狐の三姉妹

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最後の借用書

俺が宿屋のベッドで目覚めたのは午前中が終わる頃だった。


夜明けとともに宿屋へ帰りそのままベッドに倒れこんで寝てしまった。

それでも6時間くらいは寝れたのだが、酒が少々残って頭が重い。


『ようやくお目覚めじゃな?』

「貴様、暁様の御前で鼾を掻いて寝るとは何事だ。」

暁様とアキラから目覚めの挨拶をされた。


「あ、すいません、一晩中騒ぎ過ぎた様です。」

「全く貴様は暁様の御前という事がどれほどの物か自覚が足りん。」

アキラは相当ご立腹の様だが、暁様は全く気にも留めていない。


『マサキが皆から賞賛される行動をとる事はもっと積極的にしてくれて良い。』

暁様から昨夜の行動は神々の復活の力になる為、もっとやれとお墨付きが出た。

「・・・・。」

アキラはそれ以上何も言えずに押し黙る。そして暁様に促され肩から下げていたバッグから中身を取り出した、当然魔石だ、結構大きなものもある。

俺は今まで魔石を売り払ってきた経験から、この魔石が大体金貨1000枚位だと値踏みした。昨夜はこの16倍の金額を使ってしまったのだ。金銭感覚が変になりそう。


『それと邪神の手の者の気配は今は感じられんが十分に気を付けよ。』

暁様はそう言い残し、アキラを連れて部屋を出て行ってしまった。


さて、俺もこの魔石を換金に行かなければならない、出かける準備をしよう。


────────────────────


部屋を出て宿屋のロビーに降りるとそこにフリッツとアレックスが居た。

2人の座るテーブルに着くと、早速昨日の一件を尋ねられた。


「マサキ、昨日はまた派手にやらかしたみたいだね。」

「二人で夕飯食おうとしたら、酒場が全部貸し切りって何だそれってなったぞ。」

2人に面白そうに揶揄われた、あの時二人は俺の姿を見つけて驚いたらしい。

とても近づける雰囲気ではなかった為、適当に夕飯代わりに飲み食いしてその場を立ち去ったと言う。声位かけてくれたら良かったのに。


「まぁ声を掛けようにも面白いイベントの最中だったしねぇ。」

「でもそのお陰で、復旧作業が10日位で終わるそうだ。」

昨日の宴に参加したドワーフ達が今日の朝から張り切り勇んで作業に向かった様だ。

坑道が開通しさえすれば、早々にこの街での仕事が終わる事になるな。

あ、『ヴィルトカッツェ』のお土産どうしよう、まだなにも決めてないな。


「それと昨日の件で君、酒場の女の子達に狙われてるみたいだから気を付けてね。」

「結婚してるのかとか、彼女居るのかとか彼女らの話題になってるぞ。」

フリッツからこれ以上面倒事は起こさないでくれよ、と忠告された。


ただ、今回の騒動で俺はこの国での強力なコネクションを手にする事になった。

その為、今までは行動に制限があった様な事も、『マサキの為なら何でもするぞ。』と協力を申し出る者が後を絶たず、今後の行動が容易になった事は大きい。


この街でやるべきことがあるなら早めに片付けて置くようにも言われ、やり残した事を考えてたら昨日の債務者に返還した借用書が一枚残ってたのを思い出した。


取り敢えず借用書はジアップが預かり、債務者が何所の誰かを調べると言ってたな。

最後の一枚が気にかかる、今日はそれを確認しにジアップと連絡を取ろう。



────────────────────


ジアップの姿を求めて街に出ると、行きかう人々が皆俺に挨拶をしてくる。


「昨日はお疲れ様。」

「アンタのお陰で身軽になったよ、ありがとうな。」

「マサキ、今日はお店寄って行かないの?」

一夜明けて俺はこの街では知らない人は居ない有名人になってしまった様だ。

まぁそれはそれで情報収集がしやすくなるのはありがたい、道行く人にジアップの事を聞くと大体いつも鍛冶ギルドで武器の制作に関わっているとの事だった。


早速鍛冶ギルドを訪ねてみた。

鍛冶ギルドに入るとロビーに何人か集まって何やら相談しているようだった。

その中にジアップを見つけた俺は彼に声を掛けた。


「おお、マサキ、丁度いい所に来たな。」

「おう、マサキ昨日は世話になったな。」

「昨日は久しぶりに楽しかったぜ、マサキ。」


ここでも皆から感謝の言葉を掛けられる、ジアップはテーブルの上に置かれていた借用書を掲げてその債務者が解ったと報告してくれた。


「へぇ、一体何処の人なんだ?昨日は姿を見せなかったみたいだけど?」

「それがな、この名前を見た時は『まさか』と思ってたんだが・・・」

ジアップは困惑した表情で債務者を氏素性を明かしてくれた。


「この方は・・・この国の第一王子なんだ・・・」


────────────────────


この国の王と王妃の間には、王位継承第一位の姫様が一人と、第二位の王子様が居られるらしい。で、この借用書に書かれた名前がその王位継承第二位の名だと言う。


『王子様がなんでカジノの借用書なんかに関わってるんだ?』

不思議に思っていると、それを察したのかジアップは


「姫様は負けん気の強いお転婆姫様だが、王子様は気の優しい方でな。」

力強さが賞賛されるこの国において、長男でありながら王位継承第二位に位置しているのも其の辺りが関わっているのだと言う。


武張った事より、内向的な心持の王子さまはカジノに興味をもち、お忍びで通い詰めるうちに借金をこさえてしまったのではないかとジアップは言う。

王子様か、借用書を返すにも面会が難しそうだなと思わずつぶやくと


「いや、お会いするにはそんな難しくないぞ?」

「え?そうなの?」

何でもこの「ツヴェルグ同盟国」は元々幾つもの部族に分かれていたのを、邪神との戦いや、他国との交渉において不利にならない様に各部族が協力して建国したドワーフの国家であるらしかった。


なので王国や帝国の様に王家が絶対的な力を持つ国と違って、あくまで部族が同盟したという形で運営されている為、手続きさえ踏めば直接会って話をすることも可能だとの事だ。


ただ、借用書の存在が明らかになるのは立場的に拙いだろうから、何か別の理由で面会を依頼して実際に面会できた時に借用書が無効になった事を伝えるべきだろう。


ジアップに面会の手続きのやり方を訪ねると、昨日の借用書を返還した者の中に、行政官や司法官の立場の者が幾人か居り、それらの伝手を頼れば問題ないと言う。

早速、その伝手を当たってもらう様依頼した。


その結果が出るまで、俺は借金を無くしてくれた礼にと様々な立場、職業の人々から歓待され同盟国中を転々として、各方面と交流を深めて行った。


その中には完成間近の新型飛行艇の試運転に立ち会ったり、借金のカタにカジノで働かされていた美女達から飲み会に誘われたり、街を歩けばあるとあらゆるサービスや手続きが最優先かつ無償で提供されたりと、様々な出来事があった。


そしてそれから三日後にジアップから連絡が来た。

多くの人の協力を経て、二日後の午後から王子様の私邸で面会が可能となった。




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