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八百万の神々と千年王国の竜  作者: 涼城 鈴那
鉱山都市と管狐の三姉妹

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THE GAMBLER

翌日、俺はこの街のカジノに一人で向かった。


鉱山都市の繁華街の中心付近にこの街のカジノはあった。

表の通りは活気が少なく見えるが、カジノの内外は別世界の様に活気に満ちていた。


カジノ内部には様々なゲームを楽しめるようになっており、カードゲームやルーレット、ダイスの目を当てる短時間で勝負が決まる物もあれば、スゴロクの様なある程度の時間が必要なものもある。


その中から俺はカードゲームをプレイしている一団に興味を引かれていた。

トランプとほぼ同じA、2~10、までと絵札3枚が4色揃った合計52枚のカードを使ったゲームで、手持ちのカードの数字を合計した大きさを競ってるらしい。

ディーラー1人とプレイヤーが4人で対戦しており、カードの数字に一喜一憂が繰り返されていた。どうやらブラックジャックに近いルールらしいことが解った。


プレイヤーの後ろからゲームを見ている集団の中で、ゲームに詳しそうなドワーフを見つけ、金貨1枚を握らせてゲームの実況を頼んだ。眼前で繰り広げられるゲームに

『この後5以下を引けばコイツの勝ち』『ここはレイズすべき』『これで胴元の勝ち』

等々説明を受けて段々とルールが理解出来て来た。


最初に参加料としてチップを払い、配られた二枚のカードとディーラーのカード二枚を見て、チップを増額するか、降りるか、カードを追加するかを決定する。


カードの合計が21に近い方が勝ちで、数字はそのまま、絵札は全て「10」扱い、Aだけは「1」か「11」のどちらでも選択できるという決まり。

ディーラーの二枚のうち一枚は伏せられ、もう一枚はオープンになっているのがミソでその情報をどう捉え、どう扱うかが重要となるのだ。


細かいルールは違うが、数字の扱いはブラックジャックと同じ、これはいけそうだ.

カジノの実態がどんなものなのかは実際にプレイしてみるのが一番だろうと思い、俺は持ってきた金貨をチップに変えて、次のゲームに参加する事にした。


プレイヤーの一人がチップをすべて失いゲームを降りたところで、もう一人も一緒に降りた後そこに俺が新たに加わり、プレイヤー3人でのゲームとなった。

俺は真ん中の席に座り、ディーラーと真正面に相対した。


まずゲーム開始時に参加料を払う、俺以外の二人は銀貨一枚と同額の赤いチップを出した。これが相場らしいが実際は幾ら出しても良いそうなので俺は場にオレンジ色のチップを出した。


「おい!ちょっとアンタ!それ金貨10枚分・・・!」

「何か勘違いしてんじゃないのか!?」

「オレンジと赤を見間違ってんじゃないよな!?」


その途端に場が騒めきだした、なにしろこのチップは金貨10枚と同額なのだ。

日本円で言うと20~30万円位か、参加料にこんな金額を出す奴はそうは居ない。


続いてそれぞれにカードが配られた。この数字次第で掛ける金額が当然変わってくるのだが、俺以外のプレイヤーは銀貨5枚と同額のグリーンのチップを出した。

カードを確認した俺は再びオレンジのチップを出し、場も再び騒然となった。


「おい!それまたオレンジ!?」

「大丈夫か!?兄さん間違ってないか!?」


各々のカードがオープンにされ、ディーラーのカードが「19」、俺のカードが「17」、他二人も19に届かずこのゲームがディーラの勝利となり、場に出されたチップは全てディーラーの横へかき集められた。


次のゲームが始まると俺は再び無造作にオレンジのチップを出す、こうなると場は逆に静まり返る『この男ルール解ってるのか?』『金銭感覚おかしいんじゃねーの?』等、内心で思われていろのだろうがそんな事は気にしない。



そうして何度かゲームが進むにつれ、最初に俺が用意したオレンジチップ30枚も残り10枚となってしまった。後ろに控えていた露出高めの服を着たカジノ店員の女の子にチップを用意する様頼んで、金貨の入った革袋を手渡した。


女店員が革袋の中身をカートの上のトレイに出した途端、その表情が強張った。

革袋の中身は金貨1000枚、その場に居た者の中でこんな額をチップに変えるなど見た事すら無い者がほとんどだろう、これを全てオレンジチップに変えてもらう。


新たにオレンジチップを100枚追加した俺は再びゲームを開始する、カジノ側にとっては無造作にオレンジチップを出しまくる俺が『ネギを背負ったカモ』に見えた事だろう。だが俺の背負ったネギは食材ではなく、彼らを打ち負かす武器なのだ。


眼前に飛び込んできたカモをどう料理しようかと考えて薄く笑うディーラーに対し


「右手に3枚、左手に2枚、テーブルに右から2枚、3枚、3枚」


彼に聞こえるように俺がそう呟くと、ディーラーの顔が見る見る青ざめた。

場の他の人間には俺が何を言っているのか意味が解らないだろうが、ディーラーにだけ伝われば十分だ。


俺は今までのゲームの間、桜達にディーラーの周囲を監視させて、ディーラーがイカサマ用のカードを隠し持っている場所と、枚数をしっかりチェックしていたのだ。

俺は気付かない振りをしつつ相手に好きにイカサマをさせていたと言う訳だ。


「ディーラー、カードの山は手に持たずに場に置いてくれないか?」

カードを手に持ったままだとカードを配る際に一番上を配ると見せかけて、下のカードを配るという事もやろうと思えば出来る為、それを防ぐ為にそう提案した。


「提案」とは言ったが実際は恫喝である。『お前のイカサマはバレてるんだぞ』と暗に伝えているのと同じだ。カードの隠し場所と枚数までバレていれば言い逃れは出来ない、物的証拠は確実にあるのだから。


ディーラーは俺の提案を飲むしか無くなり、シャッフルした後のカードの山をテーブルの上に置きゲーム再開の準備は整った。


他プレイヤーはまたレッドチップを一枚出した、その後に続けて俺がオレンジチップ10枚を場に出すとその場の空気が一変した。絶句する者、声にならない声を上げる者、歓声を上げる者、反応は様々だ。


「一度も勝ってないのに10倍かよ・・・」

「なんでそんなに強気なんだ?」


ディーラーの表情が苦悶の様相を呈し、観客からはため息に似た声が漏れる。

ディーラーにとってはイカサマの介在しない純粋な運の勝負になってしまった事実と、俺がどこまで勝負を望んでいるのかの見極められない事に苦悩する。


そして運命のカードが配られる、ディーラーのカードは「A」と残り一枚、圧倒的にディーラーに有利なカードだが、俺は構わずオレンジチップを100枚掛けた。


『おおぉ!』

『マジか!?』

『ここで勝負とかあり得ん!』


周囲のギャラリーからは口々に驚愕の声が上がる、そして彼らの興味は俺に一体どんな強い手が入ったのかと言う事だったが、ここである事実に気付く事になる。

俺が配られたカードに一切触れておらず、二枚とも伏せられたままだという事に。


「おい!兄さん!あんた自分のカード見てないのか!?」

「あ!マジか!?カード伏せたまま勝負するなんて正気か!?」

「チップ100枚だぞ!あんた自分で何やってるか解ってんのか!?」


職業柄ポーカーフェイスが基本であるディーラーは、この状況に動揺どころか無関心に場を見つめる俺を困惑した目で見、互いの札と俺にと視線が泳ぎまくっている。

ポーカーフェイスはどうしたんだ?立場が逆じゃないか?


「・・・お客様・・・カードを見なくてよろしいのですか?」

「ああ、後ろに見られたくない奴がいるんでね。」


その途端に青かった顔色が蒼白になるディーラー、ギャラリーに紛れ込ませたカードの内容を盗み見る役割の存在までバレてるとは思わなかったのだろう。

俺の後ろにはディーラーの手下が3人いた。桜たちをディーラーの肩に乗せ、その視線が動く方向を観察して怪しい手の動きをする者達を判別していたのだ。


「それと、俺は勝利の女神と俺自身の運の良さを信じてるんでね。」


やがてディーラーは己の手札を確認し、山から一枚の札を取った。

ディーラーは肩を落として3枚の札を台に置く、21を超えて負けが確定した。

俺はカードを表にする、その瞬間に場は歓声と悲鳴で包まれた。

「2」と「6」の「8」だ、普通ならお世辞にも強い手などとは言えない手だ。


「うおぉぉぉぉ!やりやがったぞ兄ちゃん!」

「そんな手で勝負に行くか!?普通!?」

「つーかこの兄さん自分の手札見てないんだよ!?」

派手に沸くギャラリー、いつの間にか周囲はやじ馬でごった返していた。


勝利の女神たる3匹の「管狐」、彼女らはどんな狭い場所でも入って行くことが出来るのだが、まさかカードの山の一枚一枚の間にまで入り込んで札の数字を確認出来る程だったとは・・・、俺に負ける要素は微塵も無い。


「俺には勝利の女神さまが憑いてるんだ、それも3人もな。」


俺はディーラーにそう宣言して次のゲームを開始する事を促した。



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